このところ、不正会計、粉飾的な会計について話題が多く、民間企業はけしからん、監督官庁は厳しく取り締まれ、ということだろうが、官公庁、政府は大丈夫なのだろうか。
長期の不正という意味では、最近は話題にあがることも少なくなってきたが、年金問題がある。原発のゴミの問題も長期でのリスクである。いずれも、長期を楽観的に考え過ぎて生じた問題である。さらに、最近では、日本の国家財政、日銀のバランスシートの問題がある。どうも日本人は長期での発想も弱い。
そもそも日本国全体でみた場合、話題になるのがP/Lと、B/Sの負債だが、B/Sの有形固定資産等が不明である。これを長期で精査して減損リスクはないのか、あるいは、時価評価して将来をやや慎重に見ても、負債を大きく上回り、その結果、D/Eレシオでみれば、全然問題がないのか、あるいは、債務超過状態なのか、エコノミスト等いろいろ専門家の意見が極端に分れ、よくわからない。国民の権利として、国家の借金だけでなく、日本国のD/Eレシオが、今どういう状態にあり、その前提がどうか、解りやすく開示してほしいものである。
そこで、ややこしいのが、減損がどうかを判定する際に、将来のキャッシュフローを計算しないといけないが、その場合の期間と割引率をどうするかが問題であろう。
適切な株価を計算する際ににも、DFCFV(ディスカウント・フリーキャッシュフロー・バリエーション)は有効だとされるが、同様の問題がある。
期間については、通常は、10年だか20年だかを予測し、その後は、最終年度の金額が永久に続くという過程で計算する。しかし、企業は100年、200年くらいはいいとしても、1000年、それ以上は不明である。そこで、永久という前提と、200年くらい、100年くらいの前提とどう違うかを計算する必要がある。セルサイド時代、担当の電機メーカーについて全部、検証したが、大半が、株主価値は半減した。それゆえ、自身のモデルでは、10年間は景気サイクルの影響を加味し、真面目に予想、10年後から数十年あたりまでは、向こう10年のFCFの平均として、その後は、徐々にFCFをゼロにしていくような計算をしていた。しかし、私がバイサイドで10年、セルサイドアナリストのレポートでそういう工夫あるいは悩みを匂わせるものは無かったように思う。
もう一つが割引率である。これにはWACCを求める必要があるが、そこで問題なのが、資本と負債のウェイトであり、特に資本が簿価でなく、時価であることから、現在の時価総額を使わなければならない。そこでは、あるべき株価を求めるのに、現在の株価をinputするのである。そこで計算された株価を使い、またそこで、株価を求めるというとどうなるか、ということである。
通常 y=f(x) という式から、yを求める場合、yは、xから独立であるべきだが、DFCVFでは、x=f(x、r、g…)となり、rやgなど色々な変数を所与として、株価xから独立だと仮定すると、x=f(x)であり、これは、上記のように、漸化式となる。いわば、トートロジーである。そこで、NRI当時、この式を解析的にといて、分析すると、当然だが、条件で異なり、収束したり、発散したりする。これは数値計算でも同様である。常に、収束するなら、あるべき株価に向かっているといえるが、そうばかりではない。NRI当時、この矛盾あるいは問題をMBA帰りに先輩に聞いたが、満足な回答を得られず、適当に資本と負債のあるべき将来の姿を想定せよ、ということであった。しかし、それ自体が、トートロジーである。そして、よく考えると、所与で独立と考えたrやgなども株価に影響される。究極には、全てが、独立ではなく、それゆえ、多くの金融の式が、いわば単位で見れば、¥=f(¥)になっているように感じる。
かつては、そういう、いろいろな\単位の変数が、かっては、近似すると、独立だと扱える場合は多かったが、最近は、変数同士が密接に絡み合い、結合度合いが密になって、きているのではないか。それゆえの、金融政策の問題であり、金融のボラの大きさではないか。
価格というものは、少なくとも短期では、運用の実感においても、DRAMにおいても、需給で決まり、実態を伴わない場合は多い。為替変動やバブル変動で、日本の価値や国力が大きく変動するのはおかしい。
それゆえ、経営重心では、縦軸も横軸も、変動が大き過ぎる\単位の価格を使わず、ボリュームとサイクルを取った。もし価格あるいは売上高などを取っていれば、重心も領域の広さもおかしなものになってしまっただろう。
日本国のP/L、B/Sを精査し、DCFVを計算する時の適切な期間と割引率はどうあるべきだろうか。国家、君が代は、「千代に八千代に」というが、2000年がいいのか、1万年がいいのか、その場合、人口、インフレ、年金、廃炉、などなどが、どういう前提であれば、現在価値がどう変わり、現在の有形固定資産がどうなるのであろうか。