恒例の経営説明会が、3月31日 18時50分~19時40分まで開催、マスコミと投資家・アナリストは別。説明は津賀社長、質疑は津賀氏がメインで河合CFOが補足。
プレゼンは簡明。2015年の反省で、環境対応力、増販が課題、他方、経営体質はつき、M&Aの布石も打てたとの自己評価。
特に、M&Aでは、アンカー社で効果が出てきており、また、12月に買収した冷蔵メーカーのハスマン、電子ミラーのフィコサ社、などもシナジーを期待。今後も、M&Aや、それが難しい場合には人材投資をする。逆に、鉛電池のように、GSユアサに譲渡するなど外部資本も入れることも考えるようだ。
売上10兆円の旗は降ろしたが今は先行投資で2020年に期待
業績は、2016年は売上7.5兆円、OP3750億円と減益見通しだが、車載など先行投資で敢えて減益であることを強調。2018年はすでに報道されているように、売上10兆円の旗を降ろし、8.8兆円、OP5000億円、NP2500億円とした。
これまではOPM5%以上とだけの目標が、より明確になり、NPも示されたことは、もう膿を出し切り、通常状態になった面と、もしIFRS移行であれば特損もなくなる面もあるだろうが、いずれにせよ評価できよう。社内に対しても、より明確な目標設定が重要だと認識したようだ。
2018年の為替前提は$115円、€125円、人民元17.6円。
また、家電・住宅・車載の売上5.9兆円からOP3000億円、B2BからOP2000億円、前者がOpm5%、後者が10%と示されたが、B2Bでは他社と違いサービス化により、採算を改善させるようだ。
車載では、現在の先行投資が、2017年以降に効いてくるが、インフォマティクスでの収益改善策は、①カーメーカも巻き込んだソフトの開発やプラットフォーム活用、②コックピット、電子ミラー等の強いハードで収益を上げる、とした。
バッテリーでは、テスラ向けでも韓国勢はあるが、独占するつもりはなく、適切なシェアを維持、自社技術が強い分野を活用する。
ポートフォリオ管理
今回の最も重要な鍵は、これまで、ポートフォリオを5事業×3地域というマトリックスで考えていたが、4×3とり、B2Bとデバイスが一体化された。特に、B2Bでは、クロス事業が鍵である。デバイスは横串という位置づけだが外販が中心のようだ。
前回は、開示されていた地域別の売上目標が今回は非開示だが、地域によってあまりに経営環境も戦略が異なるからであろう。それぞれの事業で、地域のメリハリはつけるようであり、時間軸もかなり違うだろう。穿った見方をすれば、まだ組織や体制、戦略も中で議論があるのだろうし、そこが最大の評価ポイントになる。もはや、中国と東南アジア中南米など一つに新興国として見るのはあまりに大雑把であろう。今後、より戦略や目標が明らかになった時点で再評価したい。やや気になったのは、デバイス戦略であり、いろいろなレイヤーで作戦があり、外販中心に、専業メーカーに勝つとしたが、やや位置づけが不明確。
各事業については、成長、安定成長、改善と3パターンでメリハリをつけた施策、また、家電、住宅、車載の合計で、Opm5%となったが、あまり細かい管理をせず、多様性を認めつつ長期視点を入れるようであり、津賀政権の最初に3年の切迫した感じと異なった。組織も巨大化、ドメインも多様化し、家電だけと異なり、住宅やクルマ、B2Bなど長期視点の事業が増える中で、焦って10兆円を目指すよりはジックリ行くという産エレ志向になった印象が強い。
経営重心®分析
現在のポートフォリオ管理は事業×地域のマトリックスだが、定量的でもなく、時期や環境で区分を変える必要があることから、経営重心®によるポートフォリオ管理が望ましいだろう。