2021年4~6月はこちら


三菱電機の不正検査問題

三菱電機で製品検査不祥事がまた発覚した。鉄道車両向け空調装置について30年以上も架空の検査データを顧客に報告していたようだ。取材に応じた日経記事にもあるように、歴史的に、トップと事業部門のパワーバランスに於いて、事業部門が強い上(下図)、殆どの事業がジャパンストライクゾーンにあることもあって堅調なポートフォリオであり、総合電機の中では、リストラも、M&Aもなく成長を続けてきた。更に誇り高き三菱グループの中でのガバナンスが効いていた。これらが、縦割り志向と内向き志向を生み、不祥事を生んだ可能がある。

「殿様」三菱電機、内向き志向が生む不祥事の連鎖: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 もちろん、同社だけでなく、多くの製造業に共通の問題もあろう。不正が30年以上も続いていたことも驚くが、それで何も問題が起きていなかったことは更に、驚きで、正に机上の空論ならぬ「机上の空検査」だったわけだ。

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日本電子(JEOL)の決算説明会(5月28日開催)

去る528日に決算説明会が開催、オンラインで視聴した。プレゼンに先立ち、挨拶が栗原会長、プレゼンが大井社長。70年目の転進の中で、業績好調、武蔵村山の新工場建設、リガクとの提携、IDESM&A等、攻めの布石も。

業績は今期最高益更新

 2020年度は受注1226億円、受注残606億円と過去最高の中で、売上1104億円、OP52億円、NP37億円と減収減益ながら上ブレ。一部、理化学で期ズレ。特損は2社の新連結でノレン償却等。

 2021年度は受注1300億円、受注残643億円、売上1265億円、OP83億円、RP85億円、NP64億円と最高益更新、全セグメントで増収増益、理化学は売上801億円、OP32億円、産機は売上288億円、OP90億円、医用は売上176億円、OP9億円、全社消去費用48億円であり、産機は全OP7割近く、OP31%である。為替前提が105/$であり、為替感応度が1円円高で3億円なので、110/$であれば、RP100億円となり、中計通りとなる。

 

セグメント別

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アクテビティトは、東芝の価値は技術者にあることを再認識せよ

注目された25日の東芝の株主総会は、永山議長再任など会社側提案が否決された形で終わった。綱川CEOが暫定議長、戦略委員会も、ファンド外国人が中心となった。

マスコミや、資本主義関係者やアカデミックの識者の多くは、これが、日本のガバナンス改革になる、と前向きに捉える一方で、政府などは、国家安全保証の観点から懸念を呈している。また、永山氏不在の中で、先行きを不安視、混迷が深まり、事業のばら売り、解体、非上場化などの憶測も出ている。

 マスコミ、アカデミック、ファンド、政府等も含め、関係者で、ほぼ一致しているのは、東芝の問題は、文化やガバナンスであるが、その価値は技術力である。それでは、技術力とは何か、それには、知財や、設備などもあろうが、突き詰めれば、技術者であろう。それが、ハイテク企業の東芝の主人公であり、そのポテンシャルを最大限引き出し、収益に結びつけることが経営であり、ガバナンス体制でもある。

 多くの関係者の議論で欠けているのは、主人公である技術者のモラルである。ガバナンス強化もいいが、混迷が深まり、事業のばら売り、解体、非上場化などの場合、技術者たちの行動である。数年前から、既に、優秀な技術者は去り、また、ヘッドハンティングも増えている。その中には、政府や同盟国が懸念する他国への転職もあるだろう。

せっかく、少し落ち着き、これから成長シフトという中で、技術者のモラルダウンどころか、転職が増えれば、東芝の価値は棄損する。車谷氏の退任も、CVCによる非上場化が原因だが、真因は、社内幹部の不支持だ。リストラだけでは、技術者のモラルが下がるからだ。

 今回の株主総会を、ポツダム宣言受託、新しい経営陣の到来をGHQによる統治を連想する方も多いだろうし、アクテビティトの一部は、マッカーサーのつもりだろう。しかし、GHQの偉かったことは、日本人の文化を理解し、天皇を重視、利用したことだ。もし、GHQが天皇を廃し、文化や制度も含め、100%米国流を押し付ければ、反発もあり、日本人の良さも喪失しただろう。

 アクテビティトは、この歴史を理解し、東芝の技術者が、安心し(多少は微温湯を熱くし)研究開発に打ち込めるような経営陣を招聘し、そういう経営体制をするように変革をとるべきだ。そして、これからは、経産省はじめ政府とも対立でなく、同じベクトルを持ったステークホルダとして、会話し、共に、東芝の価値を最大化するように努力すべきだろう。

 世界中で、この20年程の株主資本主義から、国家安全保証やカーボンニュートラルなど公益を重視するマルチステークホルダ主義に移る中で、今回の「勝利」で調子に乗っていると、日本政府だけでなく、多くのステークホルダや世論から、反発をくらうだろう。

それどころか、日米も含め、規制強化の流れも起きるかもしれない。その場合は、逆に、私利アクテビティトの絶滅になるかもしれない。考えすぎかもしれないが、株主総会後の経産省の人事異動等も、そうしたメッセージではないか。米のリナカーン氏のFTC就任も、利益だけを追求し、公益を忘れたプラットフォーマは、時代遅れとなることを象徴している。

 

技術者あっての技術力、東芝、ガバナンスであり、ステークホルダを満足させられ、国家安全保証など公益に貢献できるのである。

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東芝を巡る論争

 25日の東芝の株主総会を前に、623日から625日にかけ、「東芝混迷~論点を聞く」として、小生も含め、米投資家のトビー氏、一橋大の江川雅子特任教授、ギブンズ弁護士、英投資家のソルター氏、早大の山本武彦名誉教授の計6名の関係者の意見が紹介された。

若林東京理科大学教授「東芝は株主と公明正大に対話を」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

米機関投資家「株取得、1%以上の外為法発動に違和感」 : 日本経済新聞 (nikkei.com)

ギブンズ弁護士「『アクティビストは悪』の終わり」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「株主と向き合わなかった日本の象徴」 議決権集計問題: 日本経済新聞 (nikkei.com)

英機関投資家「東芝、再生に向けて取締役会の一新を」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

山本早大名誉教授「日本版輸出管理法の立法で合理性を」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 これらを集約し、他のマスコミの意見なども含めて、纏めると以下のようだろう。外国人の識者は、それぞれの利害関係も背後にありそうで、極めて厳しい意見もあり、マスコミの論調に近い。

 

東芝を巡る世論は、アクテビティトの是非と、東芝と経産省の関係の是非の二軸で捉えると分かり易いい。マスコミの多くは右下、日経新聞など専門紙は左下もあるだろう。理想は、左上であり、中長期では、アクテビティトも東芝のインフラ技術、国家安全保証に関わる技術を評価している。そして、国も重要なステークホルダであり、国家安全保証も含めた長期視点と、アクテビティトの視点の時間軸の折り合いが鍵となり、それを、株主、ステークホルダ全体がどちらを支持するかである。アクテビティトが短期の私利を追求し、そこで公益や国家安全保証とフリクションを起こすのであれば、規制もありうるだろう。

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東芝テックの経営説明会(5月28日)

去る528日に、東芝テックの説明会がオンラインで開催され、視聴した。錦織氏は、昨年6月に、社長就任、テックのIR説明会は、初登場だが、いつも通り、IT屋らしいプレゼン、他に、リテールソリューション(以下、RS)担当の内山専務、ワークプレイスソリューション(以下、WS)担当の江口常務、CFOの井上常務。質疑は、マスコミも合同で数名から多数だが、マイクが敏感で、声が反響、紙を触る音が大きく、聞き取り辛かった。

 

流通業界のグローバルトップのソリューションパートナー

 錦織社長のメッセージは、①2020年度上期赤字から構造改革の、下期は成果も出た、②ハードと保守から流通業界のグローバルトップのソリューションパートナー、具体的に30程度のPOCもあり、リテール業界のためのプラットフォーマを目指す、③プラットフォーマ「ELERA」構築、パートナーと連携し成長のため資金投入、を行う。

 

業績と中計

 2020年度は売上4057億円、OP83億円、NP71億円。

2021年度は、売上4200億円、OP2100億円、NP110億円、ROIC10%以上、約1100人の削減による固定費90億円削減も奏功。

中計の2023年度は、売上4400億円、OP290億円(6.6%)NP170億円、ROIC13%以上。

 

取り組みでは、ショールームが先進ソリューションラボで実績

 

RSの戦略

 

 

WSの戦略

 

 

東芝グループでのテックは、ソニーにおけるSCEの位置づけ、DX会社として変貌し、東芝も変える

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競争と共創リスペクト~日経夕刊「あすへの話題」より

日経夕刊に「あすへの話題」というコラムがあり、多方面の方によるエッセーだが、自分のことは棚に上げて言うと、玉石混交、読者を馬鹿にしたような蘊蓄話もある。過去で、毎回、素晴らしいと思ったのは、日立の元社長だった川村氏くらいだ。それでも、参考になる話も多い。たまたま、先週は、「競争」に関して、前公正取引委員長の杉本氏、前法政大総長の田中氏が触れており、面白かった。

 

杉本氏は、「競争を否定する教育を受けた人は、他利性が低く、協力に否定的、互恵的でない、etc」という話を、引用元は不明だが、紹介しており、そこから、競争(コンペティション)が能力(コンピテンス)に繋がると結論づけており、共感した。

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GAFAの黄昏~反Amazon論文のリナ・カーン氏がFTC委員長へ

バイデン米大統領は15日、米連邦取引委員会(FTC)の委員長に、米コロンビア大学准教授のリナ・カーン氏(Lina Khan)を指名した。委員の任期は20249月まで。32歳であり、米メディアによると、FTC委員、同委員長のいずれのポストでも最年少の就任。

氏は、イェール・ロー・ジャーナル誌の2017年1月号「アマゾンの競争政策におけるパラドックス(Amazons Antitrust Paradox)」という論文で注目された。

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エレコムの決算説明会(5月20日)

去る520日にエレコムの決算説明会がオンラインで開催された。316日に、創業者の葉田社長が、代表取締役会長へ、柴田常務が代表取締役社長となる人事が発表されており、葉田氏のメッセージも含め、注目され、関連する質問も多かった。今後もIRへコミットはするが、説明会の関与は不明。プレゼンは、これまで同様、経営については葉田氏、決算は田中氏。

業績

 2020年度は売上1081億円、OP159億円、NP108億円、増収増益、ほぼ想定線で上ブレ。

 2021年度は1131億円、OP159億円、NP111億円、なお、若干、会計基準を変更、OP外の売上割引をやめ、売上減り、その分、OPも減ることになる。

 

経営状況

 コロナ禍で外出できなかったので、社内を徹底的に見直し、開発体制を大改革、品質基準を見直し、開発期間を短くしたという。

 

今後の経営

 

 トップ交替に関しては、今後、葉田氏は、ルーティンから外れ、新規事業やM&A、海外EC、そして人脈形成に注力するようだ。

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GSユアサ決算説明会(5月18日)

去る518日にGSユアサの決算説明会がオンラインで開催、村尾社長がプレゼン。この会社も、2004年の合併以前のGS、ユアサ夫々について、電池レポート執筆などを通じ、セルサイド時代から細々とフォロー、2005年のファンド時代からは、継続フォロー、工場見学なども参加してきたが、リチウムイオン電池など心配をよそに立派に成長してきたし、IR体制も、過去も良かったが、一層レベルアップした。

 

対等合併成功の要因は

 多くの対等合併が失敗する中で、このGSユアサとコニカミノルタは、数少ない健闘例であり、どこかで、研究対象としてケーススタディが必要であろう。多くの合併会社が旧社名を残しながら、内部では、過去を引きずるが、この両社は、歴史もあり、旧社名を残しつつ、役員級であれ、一般社員であれ、旧所属が意識しにくい印象である点も面白い。

 

業績

 2020年度は売上3865億円、OP248億円、NP115億円は上振れ、OPは過去最高更新。全セグメントで改善傾向。

 2021年度は売上4300億円、OP250億円、NP130億円、と増収減益だが、前期はコロナ禍で出張など経費減の反動。

 

 

中長期とR&Dトピックス

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ソニーのイメージセンサ説明会(5月28日)

去る528日に、ソニーのIRデーにて、イメージング&センシングソリューション(以下、I&SS)分野のオンライン説明会があり、視聴した。プレゼンは、清水氏、質疑は高野CFOも参加。

中長期戦略

 長期の事業戦略について、20192021年はコロナ禍や米中摩擦を織り込み、アップデート、デバイスのみと認識しがちだが、HWSWに分け、ハードとソフト両輪で考えられているところが興味深い。

 

KPSROIC

I&SSROICは現状の11%からFY2025は、20-25%へ。

 

 

市況動向とファウンドリ

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サンケン電気の決算説明会(5月12日)

去る512日に、サンケン電気の決算及び中計の説明会、テレコンで参加しようとしたが、原因不明のトラブルで一部が参加できなかったので、テレコン再生を視聴。説明は和田社長、決算集中日だったせいか、テレコンのトラブルのせいか、質疑は、少なかった。

業績は上ブレ

 2020年度業績は上ブレ、売上1568億円、OP赤字12億円、NP赤字、アレグロIPO関係等一時費用を除く、NON-GAPPでのOP78億円、NP10億円。4Qにクルマ、白物家電が急増。

 2021年度は、売上1560億円、OP115億円、NP25億円、減収だが、システム部門‥譲渡のためで、デバイスだけなら、11.5%増収。上期は好調、ユーザーがサプライチェーンの各段階で、在庫を積み増し、ウェハーやチップがタイトだが、下期は調整前提、工場閉鎖に向け設備移管や稼働停止の影響を織り込む。

中計2021

 2023年度連結目標は、売上1700億円以上、OP13%以上、ROE12%以上、今回の21中計と前回の18中計は継続一体とのこと。

 

新製品15%、GP22%

 売上新製品比率は15%、開発着手条件はGP22%以上、一見低いが、SGA7%OP15%

 

開発改革と組織変革

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ガバナンスには指名委員会設置会社が有効なのか

ガバナンスが重要なのは論を待たないが、それには、指名委員会等設置会社が適しているというのが、役所もアカデミアでも、共通認識、暗黙の前提だろうが果たしてそうだうか。

 

電機大手の指名委員会等設置会社体制とIFRS移行とガバナンス

 

器と中身、文化の問題

 

 

 

トップを腐らす構造

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東芝のガバナンス(6月14日説明会)

61413時からガバナンス問題に関し、マスコミ・投資家アナリスト向け説明会が開催され、視聴した。取締役会議長の永山氏によるプレゼン15分、質疑応答60分。

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今の日本に足りないものは、リスクテイクとスピードとフレキシビリティ

大学に籍をおいて5年、大学全体のマネジメントを通じて、科研費や予算の仕組みに慣れ、また、最近の社会人学生にも触れ、修了ペーパー指導を通じて、確信したことは、今の日本に足りないものは、リスクテイクとスピードとフレキシビリティである。

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会計基準が国際競争力に及ぼす影響~GAFA育成になった戦略的会計基準

日本が国際競争力を失った背景には、金融関係のインフラ、具体的には、会計基準等の差もあると考えてきた。

ハイテク産業と会計基準の両方に関心と知見がないと分かりにくいテーマであるが、もっと多くの関係者が認識すべきだ。日本の連結会計基準は、保守的であり、株主保護という意味では、良かったが、IFRS導入に至り、厳格化、米のGAAPに比べ、負担が多く、日本企業にとっては、ハンディが大きい。

 

GAPPは今や緩くM&A促進に有利

 

 

IFRSに移らない米の真意と競争力背景~ハイテクと金融の両輪

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経産省の半導体デジタル産業戦略とNEDOのポスト5G基金

「半導体・デジタル産業戦略」が公表された。「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめましたMETI/経済産業省)    半導体が中心に注目されているが、半導体だけでなく、デジタルインフラ、デジタル産業まで含んでいる。マスコミでも、注目され、自民党の「半導体戦略推進議員連盟」も発足するなど、喜ばしいことだ。この戦略について検討するため、3月に設置された「半導体・デジタル産業戦略検討会議」の有識者メンバーとしても参画、多少なりとも関わった者として、感慨深い。

各個別戦略も詳細で、今後の対応策として、半導体産業では、先端半導体製造技術の共同開発と生産能力確保、デジタル投資の加速と先端ロジック半導体の設計・開発の強化、グリーンイノベーション促進、国内半導体産業のポートフォリオとレジリエンス強靭化、デジタルインフラ産業では、データセンターの国内立地、新規拠点整備(最適配置)の促進、グリーンなデータセンターの構築、5GBeyond5Gなどの通信インフラ整備の推進等、次世代技術開発、デジタル産業では、クオリティクラウドの推進と市場創出、日本に根ざしてサービスを提供するデジタル産業の育成、クオリティクラウドの実現に向けた次世代技術開発、横断的取組して、省庁横断的、産学官連携の体制構築、産業政策への反映、グリーン政策やエネルギー政策との連携が掲げられている。

また、これにも関連して、NEDOは、マスコミでも注目された、TSMCが参画する後工程パッケージのR&Dなどについて、531日に公表している。「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(助成)」の採択事業者を決定しましたMETI/経済産業省)

この「半導体・デジタル産業戦略」は、本編32ページ、関連するプレゼン資料が豊富であり、HPに公表されているが、力作であり、かつ、過去の反省も踏まえ、冷静に現状を分析把握しつつも、大胆な提言も含め、未来志向のある実があるものだ。

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能美防災の決算説明会(5月25日)

去る525日に能美防災のオンライン決算説明会があり参加。

 

業績は受注好調、OP10%を確保

 2020年度は受注1133億円、売上1079億円、OP111億円、NP76億円、ROE7.7%。コロナ禍で営業活動が制限あるが、受注は過去最高、消火設備セグメントが好調。

 2021年度は受注1220億円、売上1208億円、OP135億円、NP93億円、ROE9.1%。なお、全社でもOP10%以上だが、火災報知器、保守点検では20%前後、消火設備も20%弱と高く、その他の駐車場などが低く、あとセグメント消去がある。

 

 

中計、2028年度に売上1700億円を目指す

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フォスター電機の決算説明会(5月20日)

去る520日にフォスター電機のオンライン決算説明会に参加した。参加は2018年以来、3年ぶり、吉澤氏は社長から会長CEOとなり、成川氏が社長COO。サプライチェーン混乱の影響をもろに受け、売上が半減、赤字と厳しい。フォスター決算説明会(514)参加 - 若林秀樹アナリスト (circle-cross.com)

業績は売上半減赤字

 2020年度は売上852億円、OP1億円、NP赤字34億円、2割減収では、人件費削減37億円も追いつかず、なお、運送費高騰が海上コンテナと航空便で10億円影響。セグメント別では、スピーカー事業(以下、SP)は、クルマ向け下期回復も、コンテナ海上運賃高騰、コロナ禍やミャンマー生産休止などサプライチェーン寸断が打撃、モバイルオーディオ(以下MA)も、北米スマホ向けヘッドセットが減、その他事業はクルマ向け小型音響が堅調で増収増益、黒字化。

 2021年度は、売上900億円、OP10億円、NP3億円、前提として、半導体不足やコンテナ運賃高騰など、これ以上の悪化は無いとのこと。クルマは8500万台想定。アクチュエータの新事業は赤字。補聴器欧州向け小型スピーカー期待。R&D2530億円、CAPEX2140億円と大幅増、Dep3130億円。R&Dは新製品対応。これ以上の売上減はなく、減損想定せず。

 

中計は音と振動に拘り、生産体制が鍵

 2024年度の目標は、売上1200億円、OP50億円、ビジョンを「未来社会に音で貢献する」とし、音、振動に関わる分野での車載用製品・サービス(音場チューニング、プライベート音響空間実現、車載コックピット等の触覚、3Dサラウンドのエンタメ性向上、ドライバーへ安全のための疑似エンジン音など豊富な警報音、環境対応のため軽量小型スピーカー)をワンストップ営業で届ける戦略を掲げた。

 

 

 

ビジネスモデル転換

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三菱電機の経営説明会(6月3日)

6316時からオンラインで経営戦略説明会が開催、コメントしたい。プレゼンは社長及び、注力領域の各本部長。今回、直近の労務問題や不正アクセス等を意識、また、ESG重視や国のカーボンニュートラル政策も反映、サステナビリティに関する件が多かった。経営理念を一部変更などはサプライズ感あり。経営戦略では、統合ソリューションが紹介され、事業ポートフォリオの考え方でも変化があった。

新中計目標

 新しい中計の数値目標は、2025年度に売上5兆円、OP10%ROE10%、キャッシュ・ジェネレーション3.4兆円/5年。前回は、2020年度の売上高5兆円以上、OP8%以上、ROE10%以上、借入金比率15%以下などであり、OP率が異なる。

 

PF志向への兆し

 

 

R&Dは少なくM&A

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ソニー経営方針説明会(5月26日)とIRデー(5月27~28日)参加

ソニー経営方針説明会が526日、IRデーが52728日にオンラインで開催され、できる範囲で参加、参加できなかったパートは視聴した。経営方針説明会は、吉田CEOがプレゼン、過去の実績とパーパスで経営を語った。質疑は勝本CTOも加わったが、ややかみ合ってない面もあった。IRデーでは、EP&Sを中心に記し、イメージング&センシングソリューションはやや異質ゆえ、別の機会に記す。

 

経営方針説明会~パーパスはクリエーターとテクノロジーの力で世界を感動で満たす

 吉田CEOは十時CFOと共に、ソネットから2014年に最悪の状態であったソニーに経営陣として参画、この間の実績は客観的にも主観でも高く評価されていいだろう。それは、本体でなく、ソネットという、新しいビジネスモデルに挑戦していた異質の「出島」から来ただけに、また、最悪というタイミングからこそ可能であった。

 

本質は、感動のプラットフォーマであり、それでこそスケールする

 

 

プラットフォーマのCTOとしての自覚

 

レガシーソニーの行方

 

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島津の決算説明会(5月12日)

去る512日に、決算および中計の説明会がオンラインで開催、参加した。プレゼンは、上田社長、資料はいつも通り、詳細。質疑は業績もさることながら、中計に関しても、長年フォローしているアナリスト(全セクターで、精密と製造装置、化学のレベルが高い)から、レベルの高い専門的な議論が多かった。

業績は過去最高

 2020年度は売上3935億円、OP497億円(12.6%)NP361億円、いずれも過去最高を達成。セグメント別には、主力の計測がコロナ検査関連も好調、アフターメンテも着実に伸び、増収増益、売上2486億円、OP425億円(17.1%)、半導体好況もありTMP貢献で産業も増収増益、他方、医用や航空は減収減益。

 2021年度は売上4000億円、OP500億円、NP370億円、と増収増益ながら慎重か。セグメント別には、医用以外は増益。計測はカーボンニュートラルなど政策関連の新規需要を取り込み。

 

中計は2022年度をアップデート

 

 

経営議論

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ヒロセ電機の決算説明会(5月7日)

ヒロセ電機の決算説明会が去る57日にオンラインで開催され、参加した。プレゼンは。IR須崎氏のあと、資本政策など福本氏、その後、石井社長が中計。なお、2007年以降、14年間IRをリードしてきた福本氏が取締役を退任、今回が最後であった。

業績

 2020年度は売上13001335億円、OP260279億円、NP180199億円と上振れ、受注と売上は過去最高、OP率は20%へ。

 2021年度は売上1380億円、OP265億円、NP190億円と減益計画と慎重か。R&Dは前期102億円から120億円、CAPEX120から170億円、Dep152から165億円と固定費も増える。

 

中期

 

 

社長の中計

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Vテクの決算説明会(5月13日)

Vテクの決算説明会が去る513日にオンラインで開催、プレゼンは杉本社長、今回はリアルでの開催が期待されたが、残念そうだった。農業分野への参入表明。

 

業績

 2020年度は売上540552億円、OP6066億円、NP3035億円、受注370億円とy/y64%増。FPDの検査、製造が増え、メンテや新規が微減、地域別には中国が増加。

 2021年度は売上600億円、OP72億円、NP43億円、セグメント別では、FPD製造は減るが、FPD検査やメンテ、半導体など新規が大幅増へ。半導体などへのシフトが進む。

 

 

経営理念サステナビリティ

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AC(アフターコロナ)の備え~年末在庫と金利

既に欧米ではコロナ禍対策としてワクチン接種が進み、急速に感染者が減り、日常が取り戻されつつあるようだ。ワクチン接種が発展途上国以下の日本でも、今後、接種が進めば、秋以降、日常が戻るだろう。

 そこで、容易に、3つのことが予想される。

 

 

 

 ウィズコロナからアフターコロナへの転換点は、10月頃だろう。それは、神無月、嫌なデジャヴである。エコノミストや評論家が騒ぐ前に、準備を進めなければならない。

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パナソニック楠見CEO会見(5月27日)

パナソニックの新CEOである楠見氏による説明会がオンラインで開催された。当初は、リアル会見が予定されていたが、緊急事態宣言中でもあり、オンラインとなった。

 プレゼン資料などは、従来に比べ、洗練されたが、就任したばかりでもあり、内容は理念が中心で、業績目標などはなく、具体性が薄かった。また、質疑は、車載やエナジー、Blue Yonder等、対応は上手いが明確ではなかった。

 まず、中期戦略の成果としては、経営体質の強化、事業ポートフォリオ改革(成長投資、共創、収益性改善)、車載事業の収益改善を掲げ、課題として、それぞれの事業領域での専鋭化とした。今後の方策に際して、松下幸之助の「水道哲学」「物心一如」を紹介したことは、印象的だが、モノだけでなく、コトを重視する中で、地球環境などSDGs対応にコメント。そして、直近の話題のエナジー(車載電池など)Blue Yonderについて紹介。戦略というよりは、オペレーションを強調、現場に強い氏らしい。

 

組織体制は90年代からやり直しか~ソニーに似る

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沖電気の決算と中計説明会(5月10日)

去る510日に決算と経営について説明会があり、テレコンで参加、質問もした。決算は、鎌上CEOと星CFO、中計の中での成長戦略は、ソリューションシステム(以下、S&S)事業本部長の坪井正志専務、コンポーネント&プラットフォーム(以下、C&P)事業本部長の齋藤政利専務。質疑は、やや業績動向が多く、成長戦略については、少なかった。

 

業績は最高益更新

 2020年度業績は、売上40503929億円、OP8595億円、NP10→赤字2億円、S&Sはネットワーク中心に想定線ながら改善、C&Pは海外コロナ禍影響で下振れだ、ただほぼトントンへ。

 2021年度は、売上4000億円、OP120億円、NP35億円、S&Sは横ばい圏だが、C&Pがプリンタ等のリストラ効果もあり、黒字化で大幅改善。

 

中計2022年度へのメッセージは「社会の大丈夫をつくっていく」

 

 

ポートフォリオと共通基盤

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太陽誘電の決算と経営方針説明会(5月13日)

去る513日に決算と経営について説明会があり、テレコンで参加。決算は佐瀬氏、経営は登坂社長がプレゼン。決算では売上3000億円を突破、またセグメントがフェライト及び応用製品からインダクタへ変更、経営では2025年までの新中計が紹介。

業績は最高益更新

 2020年度業績は、売上3009億円、OP408億円、NP286億円、は、何れも過去最高。コロナ禍影響はほぼ解消。セグメント別には、コンデンサではクルマも含め好調、フェライト関連もスマホ向け積層メタルインダクタが伸びたが、複合デバイスは通信向け65%だが、やや減。4Q末の受注、受注残は1000億円を突破、例年の1.5倍の水準。

 2021年度は、売上3280億円、OP470億円、NP300億円、とピーク更新。為替は105円と若干円高想定、R&D130億円(売上比4%)CAPEX500億円は横ばい、Dep315億円は増。

 

中計のミッションは「おもしろ科学でより大きくより社会的に」、2025年度売上4800億円

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JDIの決算説明会(5月14日)

去る514日にオンライン説明会。キャロンCEO挨拶の後、ガバナンス強化(指名委員会等設置会社移行、経理統制など)、財務基盤の再構築(白山工場譲渡、いちごトラストによる資金調達など)、新技術開発などにつき説明。大河内CFOが業績、その後、キャロン氏が戦略について、プレゼン、その後、質疑。業績動向に関するIR開示は更に改善されたが、経営戦略については引き続き、「唯一無二」など、曖昧で抽象的。質問は少なく早めに終了。Web決算説明会「2020年度通期決算」 - YouTube

業績は赤字続く

 2020年度は売上3417億円、GP51億円は黒字化、OP赤字262億円、EBITDA赤字125億円、NP赤字427億円、欧米向けモバイルが半減。固定費280億円減、変動費率3p改善。

 2021年度計画は、売上2540億円、欧米向けモバイルが71%減。1Qは売上640億円、q/qでは、欧米向けモバイルは横ばい。OP赤字88億円。4QではEBITDA黒字目指す。半導体不足は織りこみ済み。

 CapexDepは不明。OLED売上は非開示。

 

戦略は哲学的

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東陽テクニカ2Q説明会(5月11日)

去る511日にオンライン説明会に参加、質問もした。高野新社長が登場、プレゼン後、全固体電池とEV急速充電に関するトピックス説明があった。

業績はEV関係好調で上方修正

 20219月期2Qは、売上131億円、OP15億円、NP14億円、全固体電池、EV急速充電が受注好調、5G関連やゲーム向けソフト開発支援、が堅調、無線通信が車両OTA試験ソリューション受注。セグメント別OPでは、物性エネルギーが、EV/急速充電が増え、倍増。全固体電池は高周波インピーダンス測定が国内だけでなく中国も増加。EV向け急速充電は異なる計測に互換性が評価。なお、粗利率は為替安定で45%弱を維持。

 20219月通期を上方修正、売上250250億円、OP2121億円、NP1517億円。セグメント別では、IT系は5Gに加えセキュリティが伸長、機械制御振動騒音は低調ながらセンサは回復、物性エネルギーは全固体やEV関連が強くリソース確保が鍵、EMC/大型アンテナはOTA向け強いがコロナ禍影響懸念、海洋/特機は防衛関連復調だが納期が長い、ソフト開発支援はゲーム向けが強い、ライフサイエンス/マテリアルズは客先予算減もあり低迷。

全社取り組み~東証1部からプライム市場へ

 この4月より、シニアマイスター制度(65歳以上を対象、再雇用上限70)が始まり、佐藤氏が適用。柔軟な働き方を促進。また、東証再編で、プライム市場へ移行。改訂CGコードに沿い、ガバナンス強化。

 

全固体電池/EV急速充電関連

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芝浦メカトロニクス決算説明会(5月13日)

去る513日に決算と新中計説明会がテレコンで開催、参加し質問もした。プレゼンは藤田社長、質疑は、市況関係が多かった。なお、藤田氏は、社長を退き、相談役、新社長は今村氏。

業績は堅調、今期はシリコンサイクルに乗り増益

 決算2020年度は受注420億円、売上460448億円、OP3029.6億円、NP19.519.7億円と想定線、FCF74億円へ。SPEは順調だが、FPDは計画順延もあり低調。売上、受注で初めてSPEFPD

 2021年度は売上480億円、OP40億円、NP21億円、特損が建物解体の減損。売上では更にSPE比率が上昇、地域別は中国減り台湾増える。

 

中計は、よりSPEシフトか

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CKD決算説明会(5月13日)

去る513日に決算と新中計説明会がテレコンで開催、参加し質問もした。プレゼンは、梶本社長が中心。質疑は、市況関係の他、トップ人事。なお、リーマンショック後に就任、この13年間、SPE向けシフトで業績拡大や経営基盤強化貢献の梶本社長は会長へ、新社長は奥岡専務。梶本氏は、今後、海外強化や提携を担い、DXやサステナビリティも重要だろう。

業績はシリコンサイクルに乗り増益

 決算2020年度は売上1067億円、OP77億円、NP53億円と増収増益、セグメント別では、自動機械が減収減益、機器がSPE向け好調で、増収増益、OP10%回復。

 2021年度は売上1180億円、OP110億円、NP75億円、セグメント別は、自動機械が増収微増益、機器は増収増益。

 

中計VISION GO CKD

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イノテックの決算説明会(5月12日)

去る512日にオンライン説明会が開催され参加、質問もした。今回より、新体制となり、これまでの、澄田会長、小野社長、棚橋CFOから、小野会長、大塚新社長、棚橋CFOを中心としたプレゼンとなった。なお、大塚氏、棚橋氏は、代表取締役、また、棚橋氏は専務に昇格。セグメント変更もあり、テストソリューションは大塚社長、半導体設計関連事業は鏑木氏、システム・サービス事業は高橋氏が統括、併せて紹介された。この新セグメントは分かり易く、新体制のスタートとして、良い出だしだろう。

業績好調

 2020年度は売上325億円、GP99.5億円(31%)、SGA80億円(25%)OP19.5億円(6%)NP15億円、本体はテスター好調、子会社は、三栄ハイテックス、アイティアクセスが増益だが、海外系が減益、レグラスが赤字。

 2021年度は、売上340億円、GP107億円(31.5%)SGA84億円(25%)OP23億円(6.8%)NP15億円、テスターは好調持続だが、本体、三栄などが減益と慎重見通し、海外系が回復、レグラスも黒字へ。

 セグメント変更だが、旧セグメントは、プロダクトソリューションがテスターとSTArなど、他は設計開発ソリューションだったが、プロダクトソリューションはテスターソリューション、半導体設計関連が、本体のEDA、三栄、モーデック、システム・サービスが本体の組込、アイティアクセス、ガイオ、レグラスとなり、把握しやすくなった。

 

中期戦略

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SUMCOの決算1Q説明会(5月11日)~半導体需給

去る511日のSUMCO決算説明会テレコン参加。いつも通り、橋本CEO会長から総括と市場環境について、今回も、注目の半導体市況について、独自分析紹介。質疑は市況動向に加え、契約動向など。

決算と市況

 業績は1Qなのでまだこれからだが、好調。市況は強い。12φは、ロジックは好調で供給不足、メモリはDRAM回復で適正在庫。8φは車載や民生がタイト。長契は維持、スポットも横ばい。2Qに向けては、12φはロジックが更に逼迫、DRAMに続き、NANDも回復、8φは車載、民生に続き、産機も回復。価格は12φロジック値上げへ。中長期は、今5060%の値上げで、グリーンフィールド対応しかない。

 生産動向だが、8φはキャパの570万枚/月超え続く。在庫消化や中国の動向は不明。12φは、キャパ720730万枚だが、フル。ロジック向けが増えるとまだ余裕のあるプライムを食いエピになるので、タイト感が増すだろう。PCやゲームも強い。12φの顧客在庫は3か月切り、メモリはまだ余裕あり。

 

ロジックは微細化を性能アップ、DRAMは微細化限界

 

 

応用別は、クラウドで、ロジックとDRAM

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リカーリング・サブスクリプションで、経営重心がどう変化するか

経営重心分析は、もともと、電機や機械など製造業のポートフォリオに関して、事業ドメインの広さやバランス、経営スピードなど定量的に評価するために、考えたものである。それゆえ、横軸の固有周期を表すサイクル軸は、1年から数十年、縦軸の固有桁数は、1から10数桁であった。その後、対象を、素材産業やソフト、さらに、流通や金融など非製造業に広げた。その中で、固有周期は、1年未満の月、週、日、時、分秒まで対象とし、概念を時間的な流動性と考え、他方、固有桁数は、㎡やtなどの単位は、通常使う分量で自然数化(ビールならℓでなく、本数)SIなどは顧客数や工程数、金融なら取引量とし、数量の流動性と考え、経営重心分析を可能にした。これにより、製造業と流通や金融を同じ土俵でポートフォリオを分析でき、製造業の非製造領域への多角化も評価可能になる。

 他方、ここ数年で、リカーリングやサブスクリプションを取り入れる動きがあり、その場合、固有周期や固有桁数をどう扱うか、また、そこで、経営重心がどう動くかは、興味深いところである。

 今回、パナソニックのブルーヨンダ(以下、BY)M&Aの事例で考察してみる。

これらが統合、融合、ビジネスモデルもリカーリングになれば、CNC社の経営重心は右上に動き、パナソニック全体でも右上に動くことになる。

もっとも、リカーリングやサブスクリプションでも、PFの更新や大規模な技術変化もあり、また、ユーザー自身の業界構造変化もあるため、サイクルは無くならないし、1年以下、あるいは、ソフトの入替が数週間毎にはあり、それらが、融合したサイクルになる。

 つまり、サブスクリプションモデルは、経営重心において、周期が長く桁数が少ない領域の事業を、安定化させるため、1年以下で頻度が多い事業を増やすことで、固有周期は短く、固有桁数は増えることになり、経営重心を右上に移動することが可能となる。

 これは、ジャパンストライクゾーンで、左下に外れた事業では、ジャパンストライクゾーンに引き込む効果がある。

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ロームの決算説明会(5月11日)

去る511日にロームの決算および中計オンライン説明会が実施され参加した。プレゼンは松本社長、IR資料が更に改善され、創業来の業績推移グラフは圧巻。セルサイド時代は、IR資料がスライドのみであり、重要箇所メモのため、最前列に陣取り、相当な集中力で理解とメモを取りながら、質問を考えたものだが隔世の感がある。

業績は過去最高売上へ

 

中計は2030年にグローバルメジャー

 

 

PMEFAE育成が鍵か

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イノベーションを起こす組織のパラメータ

研究開発組織の規模に関しては、昔から関心もあり、昨年、「LOON SHOTS」に関連して、記している。

 LOONSHOTSイノベーション方程式~イノベーションの最適サイズは150人!? - 若林秀樹アナリスト (circle-cross.com)

その後、MOTの当ゼミでも、TDK海老沢さんが、ネットワーク分析から、組織規模に関し、150人程度が最適だという、同様の結論を得ている。

 

組織のイノベーション度合を決めるパラメータとは

 

組織の状態方程式

 

 

総コストとプロジェクト成功確率とリスク報酬を考慮

 

 

パラメータからイノベーション度合が出るが、研究フェーズで最適度が変わる

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業界構造を形成する業界団体と官界と学会

業界構造について、明確な定義は不明だが、アカデミック的には、ポーターの5Fで議論される場合が多いようだ。業界構造を特徴づけるキーワードは、垂直統合vs水平分業、集中度合としての寡占、独占、など、ケーレツ的かエコシステムか、オープン性とクローズ性の度合、プラットフォーマーの存在の有無、等があるだろう。

 

業界は、業界団体(工業会)、監督官庁、学会が3点セット

 日本では、業界構造は、業界団体(工業会)、監督官庁としての官界、そして関係する学会が3点セットになっている場合が多い。

 

JASA創設の思い出

 

 

縦割り横串

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ニコン決算に垣間見えたイノベーション~コンポーネント事業

ニコン決算及び中計進捗報告のオンライン説明会が13日に開催、また21日にCEO/CFOとのスモールテレコンがあり、共に参加、質問もした。質問では、新たなセグメントとなったコンポーネント事業関連が多く、実際に注目される。

業績は上振れ

 業績は売上45004512億円、OP赤字650562億円、NP420344億円と、いずれも上振れ、映像が改善、精機は研修ずれ下振れ。FCF229億円の黒字。リストラ一時費用556億円除けば、実態赤字は100億円程度。

 今期は売上5100億円、OP200億円、NP160億円、全セグメントで増収増益。精機では、北米向けが期待、FPDは底打ち、映像も損益1500億円を達成。

今回から、産業機器その他セグメントから、デジタルソリューション事業部、カスタムプロダクツ事業部、ガラス事業室が新セグメントであるコンポーネント事業に移管、売上350億円、OP80億円と増収増益。産業機器その他も、売上350億円、OP30億円で増収増益。

 

新セグメントのコンポーネント

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MBAでは5W1HのHだけか

ビジネスだけでなく、人生全てが、運やタイミングの要素が大きく、志や精神力や体力であり、これも運かもしれないが、人間関係などで決まる。何度か失敗しても、そこから学び再挑戦すれば、成功することもあるだろうし、優秀であっても、一瞬の油断で失敗する。

 もちろん、経営も、同様であり、殆どが運であり、タイミングであり、人間力である。しかし、日経新聞の名コラムである「私の履歴書」はじめ、自伝などでは、主人公が、実力やリーダーシップで成功したように思われる場合も多く、それを、事実として引用して、論文等が執筆される場合もある。もちろん、御自身が、運や縁に恵まれたと認識され書かれている場合も多いが、運や縁であることを、認識しながら触れないのか、認識すらしていないのかは不明である。

成功には運と縁の要素~要は人脈であることは、ネットワーク科学の大家バラバシが『ザ・フォーミュラ科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』で著している。ベンチャーの成功要因は、ビル・グロス氏によれば、アイデア、チーム、ビジネスモデル、資金調達、タイミングの5つの中で、タイミングという。ビル・グロス: 新規事業を成功させる一番の原因 | TED Talk また、ツキを呼ぶには、質より量であることは、科学者、芸術家、発明などの実例、起業論、『「加速力」で成功をつかめ!(斉藤孝)などで指摘されている。故に、アジャイルで回数を増やすことが重要になる。そのうち、学習を通じて、自身が成長し、あるいは、タイミングも合ってくる。

 多少なりとも、ビジネス経験、起業経験がある場合は、当然であり、投資でも、ビジネスモデルや戦略でなく、経営者の人間力等やタイミングが重要なのだが、多くのビジネススクールでは、人物やタイミングについては、多くは語らない。

 

・・・・・

 

 人間力や志などの3W、タイミングや状況の2Wを理解した上で、1Hとの関係で、理論と実践、一般解と特別解を、ダイナミックに、行ったり来たりすることが重要だが、1Hの丸暗記で、良しとするのは、悪しき受験勉強制度のためだろうか。

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東芝決算と問題再考

車谷氏退任など揺れる東芝だが、514日に決算および経営方針説明会がマスコミと投資家アナリスト向けにオンラインで開催され参加した。プレゼンは、再登板の綱川CEOが経営方針、決算は加茂氏。質疑は、マスコミ中心に、アクテビティトとの対話問題や車谷氏退任、CVC等ファンドとの関係、綱川CEOの抱負など、おきまりのもの。一部、アクテビティト等の投資家からは、信任率が車谷氏について低かった太田氏の人事、戦略委員会の位置づけなど緊張したやりとりもあった。アナリストからは、新成長分野や業績の詳細。

注目される機能別セグメント開示

 

経営方針

 

業績は無難

 

東洋経済が特集

 

 

MOTシンポジウム

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ユーザーを呼び込みには、カネや需要なのか

長年、世界の最前線で戦う、グローバルスタンダードな金融業界、外資系(英米独)に所属して、大学という組織に属し、また、最近、色々な機会でドメスティックな組織に浸かった方々に接すると、驚くことが多い。そして、特に大学の仕事の仕方に慣れれば慣れるほど、これでは、勝てる訳がないと実感する。

海外経験、国際経験が豊富でも、外資で禄を食むのとは訳が違うような気がする。有識者と言われる方も、違和感がある。

彼らは、TSMCなど含め、海外の有力企業が日本に来るには、ユーザーがいること、さらに、カネではないかと言うが、そうだろうか。

 

 むしろ、日本独特の規制や面倒くさい手続き文化、本音が不明、言語で伝わらない、また、スピード感の欠如だろう。これは、シリコンバレーで、日本企業が相手にされない理由と同じではないか。

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フロント型とバック型

リーダー、あるいは、リーダーシップ、その分類には、過去、膨大な先行研究がある。代表的なものは、下記であろう。

 まず、PM理論であり、心理学者の三隅二不二氏らが提唱した、リーダーとリーダーシップは「P機能」と「M機能」の2つで構成されているという考え方だ。また、EQの提唱者ダニエル・ゴールマン氏は、リーダーシップを、ビジョン型、コーチ型、関係重視型、民主型、ペースセッター型、強制型、の6種類に分類した。さらに、アメリカの心理学者、クルト・レヴィンの研究によるとリーダーシップのスタイルは、専制型、民主型、放任型の3種類に分類できるとしている。

 ここでは、これらと異なる、行動様式による分類として、フロント型とバック型を提唱したい。フロント型は、自ら、単独行動も厭わず、動くタイプであり、歴史上の人物のイメージでは、秀吉、前半の信長、黒田官兵衛、坂本龍馬、などのイメージだ。バック型は、どんと構えて、大局を見るタイプであり、源頼朝、武田信玄、徳川家康、大山巌、といったところか。軍でも陸海空で異なろう。

 会社のトップというと、昔はフロント型のイメージが強かったが、実際は、トップ自ら、営業し交渉する例も極めて多いことを知った。

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日立の新社長に小島氏(説明会は12日)~ポートフォリオに関する質疑で経営重心に触れる

日立の新社長に小島氏が決まった。512日に、マスコミと投資家アナリスト向け説明会が開催され、東原社長と小島氏が出席、視聴した。質疑は、マスコミが中心で、同時に発表された中西会長の退任も含め、抱負や東原氏と小島氏の役割分担、選出理由や経緯、タイミング等。 中西氏の功績は、グローバル人材登用とガバナンス体制強化だとした。アナリストからは、ポートフォリオやM&Aについての質疑が多かった。執行役会長および執行役社長の異動に関する説明会:株主・投資家向け情報:日立 (hitachi.co.jp)

中研でR&D体制大改革、LUMADA推進、経営重心によるポートフォリオ運営

 小島氏は、もともと、中央研究所出身、中研所長時代に、中研を廃止など、R&Dを大改革、その後、顧客との協創を、営業の最前線で実施、LUMADAを推進した。質疑の回答で、経営重心について、触れていただき、そのような考えで経営していくとコメントしている(下記で50分頃)執行役会長および執行役社長の異動に関する説明会 - 日立 - YouTube

 

 

M&AからR&Dへ、ITからプロダクト強化へ

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パナソニックのBYと日立のGLのM&A比較

パナソニックと日立のM&Aは、ほぼ同じタイミングで1兆円弱という同程度の買収金額、対象もIT企業であり、売上もほぼ1000億円やEBITDA20%強も同様であるが、よく見ると、ITと言っても、位置づけや目的は異なり、PMI体制も異なり、成否に関して、興味深い比較ができる。

 

日立に軍配か

 

PMIは企業文化

 

 

M&Aの狙い~日立はLUMADAのピース、パナソニックはLUMADA相当のPF

 

 

M&Aの評価スキーム

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ソニーの決算説明会(4月28日)~IFRSシフトとR&D急増

ソニーの決算説明会が428日にオンラインで開催、プレゼンは十時CFO、質疑はゲームや半導体、第四次中計の目標に関するものが多い。なお、2021年度から、これまでのUS-GAAPからIFRSへ移行。

業績は過去最高、利益1兆円クラブ入り

 

R&D大幅増だが

 

 

セグメント別ROIC

 

 

中期の評価は調整後EBITDA

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ウイルス時代のPC

二つのウイルスがPCを変える。コロナ禍の巣篭り需要やテレワークでPC需要は大きく伸びた。他方、テレワークとなると、コンピュータウイルスの脅威も増える。

 

世界は2020年コロナ禍で好調、国内2019年急増はWindows7サポート修了とGIGAスクール特需

 

GIGAスクール構想とChromeシェアアップ

 

 

ウイルス対応もあり、よりレジリエンスなPC

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ランキングとレーティング、計測における主観と客観

人生はランキングやレーティングとは無縁でいられない。物心ついたころから、学校での成績、スポーツ、友人関係の評判、入試ランキング、入試合否レーティング、仕事でも、アナリストランキング、株式のレーティング、人事評価でもランキング、アカデミックでも大学ランキング、ゼミ人気ランキング、ネット社会では、日々、フォロワーランキング、「いいね!」数ランキングと無間地獄だ。これらが精神的なものなら気にしなければいいが、実際には、収入や地位にも影響する。また、日々の検索でも、ランキングは重要になってきており、生物の性としてのマウンティング志向もあり、人間はランキングの奴隷だ。

 

計測工学

 

「ランキング」ペーテル著

 

指数の虜になるな

 

ランキングをアップさせる戦略

 

 

ダニング-クルーガ―効果

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日立の決算説明会 GlobalLogic買収

日立の決算説明会および2021中計進捗発表会が428日にオンラインで、マスコミと投資家アナリスト合同で開催された。なお、去る41日には、GlobalLogic買収の説明会もあり、併せて記したい。決算説明会は、河村CFOなど、中計発表会は東原CEOがプレゼン。質疑は、決算に絡んでIT動向とLUMADAについて、また、M&Aに絡んで、日立金属売却、残る日立建機をどうするか、更に、GlobalLogic買収とシナジーや今後のあるべき姿に関するものが多かった。東原CEOは、業績結果に自信もあり、明確に断言も多かった。国際経営水準という意味では、海外の社外役員も多く、他の総合電機と大きく水をあけた印象だ。

 

業績~ITが好調、子会社は不振

 

あるべき姿とポートフォリオ

 

 

LUMADA

 

 

 

 

M&Aの評価

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オムロン決算説明会(4月27日)

オムロンの決算説明会がオンラインで開催、山田社長より、決算と長期ビジョンVG2020振り返りと次期長期ビジョンの方向性などプレゼン後、質疑は大上氏、竹田氏など。今回、長期ビジョンに関連して、2011年度と2020年度の経営比較が分かり易く、進化が明らかだった。

業績

2020年度業績は売上6555億円、OP625億円、NP433億円、全セグメントで上ブレ、鉄道向けが苦戦のSSB以外は増益。IAB4Q中華圏回復大、GP率も過去最高の45.5%

2021年度は売上7000億円、OP700億円、NP480億円、ROIC8%強。全セグメントで増収増益へ。IABは、自動車はEV、デジタルでは半導体、食品等では脱プラスチック、HCBでは血圧計と遠隔診療を強化。半導体不足はある程度織り込み、慎重なようだ。

 

長期ビジョンの方向性

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パナソニックのブルーヨンダー社M&A説明会(4月23日)

パナソニックによるブルーヨンダー(以下、BY)M&A説明会が423日オンラインで開催、楠見CEOCNS社の樋口氏、原田氏、梅田CFOがプレゼンと質疑。マスコミ中心でアナリスト投資家は無し。不思議だったのは、BY側のインセンティブや、Amazonも含めGAFA、更にSAPやオラクルとの競合についての質問や議論が無かった。

BY社概要

 BY社は1985年創業のJDA社だが、その後、SCM関連のプロバイダをM&Aにより拡大、リテールの店舗POS、商品計画、カテゴリーマネジメント、店舗補充、消費財や食品、2010年以降は、ハイテクや倉庫管理、また2018年には旧BYを買収、AI技術を導入。2020年の売上10億$、調整後EBITDA246mil$、従業員5545名、小売り中心に3000社の顧客を持つ。

 

Luminate コントロールタワー

 

M&Aの意義とシナジー

 

M&A経緯

 

M&Aの評価

 

 

経営重心分析

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NTTがIOWNで富士通と提携(4月26日)~6G電電ファミリー再興、昨6月のNECに続き

NTTIOWN構想で富士通との提携を426日に発表、オンラインで視聴した。今回はマスコミのみで、投資家アナリストからの質疑は無し。

 具体的には、以下の3点である。

 

 

6G時代に不可欠な国内ファウンドリ

 

電電公社とDD(デジタルデータ)公社?

 

 

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富士通の決算および経営方針説明会(28日オンライン)

富士通の決算および経営方針発表会オンライン視聴した。冒頭に、時田社長が黒シャツ姿で、パーパス、エコ、DX、データドリブン、非財務指標、お客様NPS、エンゲージメント、トラストを連発、それも、経産省や東証と同じベクトルで時代の流れに乗って、好調な決算、OP20年ぶり最高益であれば、文句はない。続いて、CFOが手堅く詳細な説明、質疑は業績が中心。

 

時代の流れと国策にのる模範生

 

業績の実態は横ばい

 

 

 

真価が問われる2021年度は5GDX

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村田製作所の決算オンライン説明会

村田の通期決算説明会が28日オンラインで開催、参加した。プレゼンは、IR担当、質疑応答は、中島社長、竹村常務、市況や業績の細部に関するものが多い。プレゼン資料は同様だが、決算短信で、よりROICを強調した開示となった。また、長年、IRや財務のトップであった竹村氏が退任。この12年で経営層は一変した。

 

業績は上ブレ、2021年度は慎重

 業績は2020年度の売上1.571.63兆円、OP29003132億円、NP21602371億円、ROIC18.5%、計画比で売上4%弱、OP8%と大きく上ブレ。なお、前期の貴金属売却益反動減、コンポーネントの減損反動増、みなとみらいのコストアップが特殊要因である。

4Qに懸念されたスマホ調整なく、クルマ市場部品取り込みの動きあったため。受注4Q5162億円とMLCCが強く、モジュールは減を打ち消し、高水準、受注残4343億円は過去最高であった。CAPEX1967億円は建屋もあり多め、Dep1431億円、R&D1017億円。

計画2021年度は、売上1.66兆円、OP3200億円、NP2400億円、ROIC17.9%、CAPEX1600億円、Dep1480億円、R&D1040億円。CAPEXが建屋等は無く実態は横ばい、内容はMLCCのキャパ10%、高周波、インダクタと電地など。

 

アプリケーション別、結果スマホはプラスだった

 

モジュール苦戦

 

 

MLCCバブルか

 

 

課題の電池は赤字継続、メトロサークは

 

 

さすが村田だが、課題事業は続く

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アンリツ決算と新中計

アンリツ決算および中計GLP2023の説明会にテレコン参加、久しぶりに質問もした。決算は窪田CFOGLP2023は濱田社長、T&M事業は島氏、PQA事業は新美氏、今回は5Gの最新動向の説明はなかった。質疑は決算およびGLP2023の業績数字関係が多かった。

業績

 業績2020年度は、受注1076億円、売上11001059億円、OP190197億円、NP145161億円、T&M4Q売上未達だが、コロナ禍影響で国内投資が慎重になったため。受注大幅増は、5G開発需要とデータセンタ投資活発化。

 2021年度計画は、売上1140億円、OP205億円、NP162億円、引き続き、T&M5Gインフラ投資とデータセンタが牽引。

中計GLP2023

 中計GLP2023では、5Gピークの2023年度の売上1400億円、OP270億円、NP200億円、ROE15%。さらに、2030年度には売上2000億円を目指す。

 

過去のように、xG一巡後に業績が急減するようなボラティリティが高い企業ではなく、M&Aやビジネスモデル変革で、ボラティリティが小さく安定成長を目指す。

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NIDEC説明会とCEO交替

422日にオンラインで決算説明会が開催され、また前後してCEO交替が発表された。プレゼンは永守会長と関社長から簡潔に数分、大半は質疑応答、殆どがEV関連とトップ交替についてであった。

決算は、2020年度は、売上1.6兆円、OP1600億円、NP1220億円、FCF1186億円は過去最高。CAPEX889億円、Dep968億円、R&D673億円。セグメント別年間では、精密小型、家電商業産業が牽引、車載は微減、2021年度見込みは、売上1.7兆円、OP1800億円、NP1400億円、CAPEX1300億円、Dep950億円、R&D850億円は高水準。

2022年度売上2兆円、さらに10兆円企業に向け、車載などポートフォリオ転換と人事制度改革。EVトラクションモータは2025250万台、2030年度1000万台へ。新中計は見直し発表するようだ。

 

トップ体制

 

 

足元の景況感

 

車載、EV戦略~オープンプラットフォーム

 

M&Aについて

 

 

見落とされた議論

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想定外を考慮せずユーザー目線がないDX

世の中は、常に想定外であり、マニュアルや教科書通りではない、社会実装をタイミングよく行うことが不可欠だ。しかし、少なくとも、日本で接したITサービスは、想定内、マニュアル通りでしかなく、タイミングを考慮していない。これは、銀行などのサイトも同様である。あまりに宣伝が多すぎ、必要な情報の部分が画面で少なすぎる。

 これまでの経験で、優れているのは、金融でよく使うブルンバーグである。金融なので当然だが、24時間対応であり、対応が早く、UIに優れて、どんどん、ユーザーニーズを取り込み、進化するし、顧客対応力も優れている。さすが、世界でデファクトスタンダードになっただけのことはある。

 

 日本でも、シニア向けも含め、DXを進めるためには、24時間対応、想定外対応、ユーザー目線だろう。

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黒船の前に天災と民衆暴動

コロナ禍は、変異型で第4派を迎え、大阪中心に厳しさを増しており、医療崩壊に入ったと言わざるを得ない。識者の発言では、医療崩壊どころか社会崩壊だ。インドでは暴動が起きている。日本でも、後進国並みに、ワクチン接種は大幅に遅れているのに、オリンピックは強行しそうであり、素人ながら大丈夫かと思う。

企業倒産も増え、中小店舗などは廃業、リストラ、若者の就職難、ワクチン接種もできず、色々な病気や救急患者入院もできない、過大な犠牲と負担が現場の医療関係者に押し付けられる、その中で、政治家や役所ではルールを破っている、という状況がこれ以上続けば、日本でも、暴動が起きかねない。若者やサラリーマンの公園での宴会騒ぎは、その前兆かもしれない。

日本は、これまで、「黒船」でしか変わらないというが、歴史的には、その前に、天災が続き、一揆など暴動が起きている。明治維新の前の「えじゃないか」騒動もそうだろう。その意味では、「黒船」は、トリガーであり、その前に、改革のマグマは溜まっているとみなすべきだろう。

 

海外では、死者数では大戦なみであり、出生数も減れば、人口ピラミッドにも影響を与える規模になる。そうした歪みは、社会に時間差で影響する。婚姻数や家族関係、出世、進学もそうだ。しばしば、大戦の結果、世界の構図や枠組みは変わるが、それは、多数の犠牲の結果でもあり、人口ピラミッドの歪みの影響とも絡む。

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東芝を巡る騒動と車谷氏退任、そして米中台湾

東芝を巡り、CVCだけなく、ベインや、KKRなども登場、CVCはベインと組み、JICや、DBJにも参加呼びかけなどのリーク報道が相次ぎ、数年前の東芝メディカルや、シャープを巡る買収合戦を彷彿とさせる。

 その後、車谷氏が辞任、再び、綱川氏が復帰するという決着になり、事実は不明だが、これまでの経緯を見ると、車谷氏が、アクティビスト封じのために、CVCと連携した動き(あるいは、もとから、こうしたシナリオで、CVCから送りこまれた、との見方さえできる)ということなのだろう。

やはりキオクシアではないか

 

訪米に絡んで

 

 

株主は本来「もの言う」のが権利で義務

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MBOを巡る議論~経営文化重心の適合性を

ここ数年、親子上場の問題もあり、MBOによる上場廃止が増えている。東芝に対する唐突なCVC社の提案も、そうだ。

MBOのメリットとデメリットと実態

 

若林ゼミの三上論文「再成長型MBOのメタモルフォーゼ戦略について」

 

経営文化重心が企業とファンドで適合性があるか

 

新生東芝のMBO是非

 そうした観点で、現在の東芝のMBOを考えると、事業ポートフォリオは、リスクが低く、固有周期が長い重電などが主であり、常識的に考えれば、CVC等のファンドと経営文化重心において、適合性があるとは思えない。また、MBOでは有効なポートフォリオ入替やリストラも、既に実行済であり、更なる企業価値向上の妙案があるとも思えない。

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実装力の欠如

 大学に来ると、大学教授という人種、特に文系がそうなのかもしれないが、実装力あるいは、実装に向けての想像力、妄想力の域ではないが、欠如している方が多いように思う。逆に、当然といえば、当然だが、技術系、製造業が多いMOT学生や事務方、あと理系教授は、実装力がある。

 イノベーションも、社会実装できてこそ、である。政府が出すソサイエティナントカ、コロナ対策もそうだが、実装力が問題になる。実装力は行動力や、具体的に誰がやるか、リーダーシップもある。日経でも重要性を書いている。

[社説]社会に実装してこそイノベーションだ :日本経済新聞 (nikkei.com)

 理科大の総合研究院に、自分が研究部門長となった新部門の名を「技術経営金融工学社会実装研究部門(略称FESI)」としたのは、実装の重要性を強調したかったからである。

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コモン話題がない令和

学生は、ファーウェイの話題、M&Aの話題、企業業績動向は、ニュースとしてではなく、仕事の延長線上や仲間うちのSNSで認識するのだろう。スマホでチェックするのはYahooニュースや、NewsPicksが多いというが、そうであれば、ニュースの上位に来るには、自身が検索、関心があるのが上位に来るため、全体的コモンの話題が無いのだ。

昭和の時代は、TVの視聴率も高く、スポーツはプロ野球か相撲位だった。まず朝起きて、あるいは電車で、日経新聞を読んで、共通の話題があり、挨拶替わりが、日経1面の記事や、私の履歴書、ややインテリは経済教室や朝日新聞の天声人語、あるいは昨夜のプロ野球や大河ドラマと言ったところで、そこから商談が進んだりしたものだ。おそらく、金融系と銀座クラブと経営者層は、未だに、日経新聞かもしれないが、40代以下は、ごく仲間うちのローカルな話題か、たまたま、会社の上司や社長が啓蒙された知的な話題が共通の話題のようだ。

新聞やTVニュースでは、閲覧や視聴順位が決まっており、電子版でも、PC画面なら、俯瞰性があり、その日のニュースを全体的に把握できる。しかし、スマホ系では、ニュースが入れ替わり立ち替わり変わる上、ニュースか広告か読み物か娯楽動画か、不明な場合も多く、ユーザーにより、類似傾向のものが多くなり、ますます、ニュースが個人毎に個別になる。

 

つまり、今日ほど、国民に、共通のニュースや話題(コモン話題)が無い時代はないだろう。それでも、コロナ禍以前は、リアルな場での会話などで、重要ニュースが判別できたが、テレワークでオンラインになると、ますます、コモン話題が無くなる。別の言い方をすれば、サイロ化と縦割り化が進んでいる。

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中国の民主的企業へのアドバイス~NY上場を

 米中摩擦の中で、さすがに、ファーウェイ等、中国企業も困惑しているようだ。こうした状況を打破するには、中国の政策転換、特に、人権問題を改め、台湾海峡の緊張緩和が必須だろうが、それは、民間企業のできることではない。その中で、もし、状況打破の機会があるとすれば、アドバイスはNY上場だろう。昨日、滴滴(なお、上記の企業ではない)NY上場を検討していると報道され、いささか驚いた。

中国・滴滴出行、米国上場へ 企業価値7兆円超か  :日本経済新聞 (nikkei.com)

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東芝とキオクシアを巡る争奪戦

先週あたりから、東芝関連の買収提案報道が相次いでいる。CVCによる東芝買収だけでなく、東芝の持分法対象であるキオクシアに対し、WD、マイクロン、それぞれが、3兆円の買収提案である。

 

 キオクシアに関しては、長年、連携しているWDとの関係を絶つことは難しく、数年前の再燃になり、サムスンとの差が拡大してしまう。マイクロンは、DRAMがあり、NAND一本足打法のキオクシアにとっては、プラスだが、このWDとの関係が難しい。他方、WD3兆円で買収できるかというと、B/Sが弱く、大きな課題である。キオクシアの企業価値は、NANDの市況に応じ、概ね、1~3兆円だが、成長プレミアムがつくと、それ以上だろう。現在のタイト感や、ベインが手放すには、3兆円というのは妥当なところだ。成長プレミアムだけでなく、一部の先端ラインを、准最先端のファウンドリに改造できれば、NAND市況悪化の場合の稼働率低下を回避でき、企業価値レンジは切りあがるだろう。一番いいのは、キオクシア、WD、マイクロンの3社統合であり、この日米連合なら、シェアで、サムスンを超え、韓国を上回り、地政学リスクにも対応できる。もっとも、3社統合は、ガバナンスが難しく、みずほ、や、ジャパンディスプレイなど、悪いケースが多い。これに近いのが、マイクロンがWDを買収するという案であり、これなら、事実上、3社統合になる。マイクロンCEOSanjayは、元サンディスク(WD)でもあり、キオクシアやNAND事業への理解力もある。

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東芝がCVC傘下で上場廃止か

日経報道によると、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズによる買収提案による非公開化を検討するようだ。

東芝に買収提案、英投資ファンドなど 2兆円超で非公開化  :日本経済新聞 (nikkei.com)

CVC3割程度のプレミアムを提示、他の投資ファンドなどに参加呼びかけ検討し、経産省などとの調整も始める。6日時点の東芝の時価総額は1.7兆円で、3割のプレミアムを付けてTOBが成立すると買収総額は2.3兆円程度。

車谷社長がCVCにいただけに、株主対策かと思うが、あれほど銀行や役所に、お世話になって上場維持しただけに、難しい印象。改正外為法もあり、中国などに再売却されないか不安もある。

また、MBOとなっても、上場と非上場で、どちらが、ガバナンスが効いて、改革が進むかは、企業文化次第だが、東芝の場合は、疑問である。解体されて、バラバラに売られるだけの気もする。

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人間は環境変化で60歳を超えても変わる

60歳は還暦というし、理工系の能力は30過ぎがピークというから、人間の能力は、徐々に退化し、60歳以上は、衰えるものだと思っていた。流石に進化はしていないが、劣化もしていないというのは、自身の劣化による自己認識不足かもしれないが、それでも環境変化に変化対応はしているようだ。

かつては、パラレルに仕事を進めるのが苦手だったし、そう自覚していた。

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備あれば憂いなし~半導体サプライチェーンの別からの視点

 米中ハイテク摩擦は、20192020年前半は、5G分野を中心に、急速に力をつけてきた、ファーウェイを巡り、その締め付け、いわば「ファーウェイなど中国ハイテク企業への攻め」が中心だったが、2020年後半からは、地政学リスクに備えたサプライチェーン改革という「万が一の事態に備えた守り」の段階に入ってきたように、感じる。

 

連日の米中摩擦に関する半導体に関するニュースも、これまではファーウェイと傘下のハイシリコンなどに関するものが多かったが、最近は、ファウンドリのTSMCばかりだ。

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連日の半導体のニュース~事故や火事も多い

 1980年代から、半導体業界をフォローしているが、日米摩擦の時も含め、これほど、連日、半導体がマスコミに取り上げられたことはないだろう。政府なども、米中摩擦やサプライチェーンで強調しているのだろうが、国民に半導体の重要性が周知されるのは喜ばしい。

 

他方、その中で、目立つのが、火事であり、これは、半導体の注目もあるが、実際に多発しているのだろう。世界では、報道されただけで、昨年3月のサムスンから、10月のAKM宮崎、3月のルネサス那珂、この4月のTSMC4件あり、被害が大きな印象だ。

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