2022年10月~12月

GX推進機構が、債務、最大全額保証へ~筒井理事長

半導体政策で、マスコミは、ラピダスに関連して、債務保証の件を批判しているが、日経新聞が830日のGX推進機構の筒井理事長のインタビュー記事を掲載、注目すべき発言である。

「脱炭素に貢献する先端技術を開発する企業向けの銀行融資を巡り、最大で全額の債務保証を付ける方針を示し、2025年中にも初案件の実現を目指す」とのことである。「GX推進機構は民間の投資の呼び水となるための債務保証や出資を手がける。民間金融機関は預金者や株主がいるなかでリスクをとりきれない分野が出てくると言及、機構はリスクを補完し後押、保証の形態は100%もありうると話した。具体的な支援分野としては水素関連やアンモニア、化学コンビナート施設、再生航空燃料、再生可能エネルギーの事業と述べた。政府GX実行会議が重点とする16分野と重なり、次世代型原発の革新軽水炉の支援もあり得る、石炭の代わりに水素を使う製鉄方法などを念頭に技術的な問題について日本はクリアしていけると指摘、GX機構の役割を、『脱炭素や産業競争力だけではなく、地方創生や経済安全保障にも関わる。地域経済や地政学への影響が大きいと判断した事業には全額の債務保証を付ける可能性がある』」という。

 

GX機構の筒井義信理事長「債務を全額保証も」 25年に初案件へ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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岩﨑通信機が上場廃止へ

 岩崎通信機が上場廃止となる。同社は、電電ファミリーの一角で、交換機を担う「Aメーカー」の日立、NEC、富士通、沖電気に対し、端末が中心の「Bメーカー」として、黒電話器、公衆電話をはじめ、計測機が有名であった。あいホールディングスが買収した。あいホールディングスは、ドッドウエル ビー・エム・エスが中心で、商社系からM&Aで拡大中である。ありとあらゆるハイテク系を傘下に収め、日本電計も持分法適用としている。

 

あいホールディングスの株価、63カ月ぶり高値 好決算で買い優勢 銘柄診断 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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有事や将来に備え、日台の姉妹都市構築、デジタル引っ越しを急げ

8月に入り、中国空軍が長崎五島列島沖で領空侵犯、中国海軍の測量艦は鹿児島沖で領海侵入、また、台湾周辺に中国軍が威嚇展開など不穏な動きが増えている。台湾側も軍事演習、日台の研究会も増えている。さらに、朝鮮半島でも米韓が軍事演習を行っている。海上自衛隊は組織編成を変えた。

中国海軍の測量艦、鹿児島沖で領海侵入 防衛省発表 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

中国軍機が領空侵犯、中国側の狙いは 識者に聞く - 日本経済新聞 (nikkei.com)

頼総統「台湾守る決意必要」、離島・金門島で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

台湾、中国の「封鎖」に焦り OB研究会で日米に次々要望 台北支局 羽田野主 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

台湾が東部で「持久戦」も 中国侵攻を念頭、軍事演習 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

台湾周辺に中国軍、ペロシ米下院議長訪台以来の水準 頼清徳政権を威嚇 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 台湾有事には多くの書籍、先行研究もあるが、経済や金融への影響を分析した事例は少なかったが、研究にアドバイザーとして参画した実業之日本社総研、実業之日本フォーラムでは報告書を出している。研究報告書「米中の対立構造と台湾有事シナリオ・プランニング」を公表 | 実業之日本フォーラム (j-n.co.jp)

 

 しかし、更に長期の台湾の香港化なども想定して、急ぐべきは、台湾の友人や台湾にいる日本人や日本企業の安全確保である。日本と台湾は多くの深い交流があり、近年は半導体で密接な関係がある。しかし。台湾の主要都市と日本の自治体との姉妹都市、あるいは大学や小中校との連携は少ない。

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パワー半導体~SiCを強化、気になるシェアの記述

日経新聞がスクープとして、パワー半導体強化を報じている。重要な記事ではあるが、スクープというよりは、従来から、経産省やNEDOのプロジェクトで頑張っている話である。

レゾナックやローム、パワー半導体の次世代素材を国内量産 【イブニングスクープ】 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 気になったのはシェアの記述だ。パワー半導体もキャプティブ市場をどうカウントするか?

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装置と材料の垣根がなくなる~デバイス支援産業へ~SEMIの通り

 半導体関連業界の中で、製造装置と材料はSEMIという業界団体には属しているが、分けて捉えられ、統計数字も別であった。しかし、その垣根は崩れつつある。背景にあるのは、チップレット技術などMore than Mooreのトレンド、各社の多角化やシナジー創出など経営戦略であろう。そして、意外と米中摩擦の中で輸出規制なども微妙に関係があるかもしれない。

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キオクシア上場との報道

キオクシアが、10月上場に向け上場申請、時価総額1.5兆円めざす等と日経新聞などが823日に報じている。キオクシアHD10月上場へ 時価総額1.5兆円目指す - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ブルンバーグは、株主のベインがIPO計画復活、数週間以内にIPOプロセスを開始の可能性、5億ドル規模と関係者が明らかにしている。キオクシアが東証上場に向け準備、5億ドル規模か関係者 - Bloomberg

ロイターは626日報道で「8月末に本申請、10月末上場を目指す。通常のIPOより急ピッチで準備を進めるが、12月にずれ込む可能性も。三菱UFJモルガン・スタンレー証券と野村証券が東証への上場を支援」としている。キオクシア、近く東証へ予備申請 10月末上場の方針固める=関係者 | ロイター (reuters.com)

 このため、サプライズではないが、NAND市況、株式市場などを見極めていたのだろう。なお、JPXHP、キオクシアHPには記載はない。

新規上場会社情報 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

 

ニュース | キオクシアホールディングス株式会社 (kioxia-holdings.com)

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新たなメモリ構造~SCM、HDM、CXL、PiM/CiMも登場

88年頃に、フラッシュメモリの存在を知ってから、メモリのピラミッド階層構造に関心をもってきたが、DRAMSSDの間に、SCMが登場したが本格離陸は難しい。ここ数年弱は、メモリセントリックの流れ、GPUTPUの登場や、HDMさらにCXLも出てきて、そもそも、かつてのアクセススピードとコスト、揮発か不揮発という階層でいいのか、不揮発といっても、QLC1000回程度で劣化すれば、そもそも不揮発といえるか、アクセス単位も、単純なbit単位から、様々な単位が増え、RAMROMかの区別も意味が薄れ、更に、広いバンド幅の価値をどう表現するか等も難しい。最近は、PiMや、CiMとも登場してきた。

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チップレット時代の後工程

ここのところ、チップレット時代の後工程がどうなるかリサーチしている。チップレットの構造がどうなるかについては、数多くの文献や図があるが、詳細な工程フローチャートは、意外とない。もちろん、2.5D/3Dパッケージだけ、あるいはチップレットの試作ラインはあるが、本格量産ラインにどうなるかはわからない。そういう中で、招待講演をする機会があった第88回半導体・集積回路技術シンポジウムに参加、多くのヒントを得た。88回半導体・集積回路シンポジウム | 電子材料委員会 - 電気化学会 (electrochem.jp)

 現在の後工程と、チップレット時代の「後工程」の差異は下図のようである。

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チップレットの7つのメリット

 チップレットには多くのメリットがあるが、それを少し整理してみた。チップレットでは、これまでの、「平面での微細化が2年で2倍」から「体積接続密度が年率2倍」という新法則やロードマップが登場するだろう。体積密度だけでなく、関連して期待されるKPIは、①消費電力、②レイテンシ、③帯域幅、④コスト、⑤チップサイズやコア数、に加え、これまでのMoore則のロードマップと異なり、カーボンニュートラルの中、消費電力を含めた他のKPIとの組み合わせ等があるだろう。チップレットのメリットは何だろうか。もともと、先端ロジックに特性、特に、CPUGPUでのコア数の増大、ダイサイズの大型化があった。生成系AIでは加えて広帯域バンド幅、多くのメモリも必要となってきた。

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パーティー・スピーチでの俯瞰力の陸海空

 始めて会う人が多い会合やパーティー等で気の利いた話や自己紹介をするのは、意外と難しい。1人の持ち時間は、せいぜい3分以内、全体の人間関係を短い時間に俯瞰して、その雰囲気に合わせ、硬からず、柔らかすぎず、主催者ホストや他のゲストのためになり、かつ、自分を覚えてもらうような話でなければならない。

人数は、5人なら、簡単だろうが、スパン数を超える10人でも、数人はいるだろう知己は大体、理解してくれるだろう。しかし、未知の人間が10人を超え、参加者の中で半数が知らない同士となり、20人、30人、40人となると難しい。

そこで注目され聞いてもらえるかは、肩書と声や表情と話の中身である。新入社員や新入生のクラスでの自己紹介なら趣味や近況もいいが。参加者の中で大多数が、一期一会なら、余程、興味深い趣味でないと聞いてくれないだろう。話す順番もある。

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基準を決める基準

 技術力であれ、国際競争力であれ、客観的な基準が必要であり、それは、複数の単位系からなるKPIの函数である。その基準が、業界や各国でバラバラであれば、評価が異なる。どの国、基準が正しいか、その「絶対基準」がいる。

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アンケートか脳の直接観察~憎悪の科学

これまで、社会科学を中心に、人間の行動に関し、アンケートという手法を使って、色々な事実を分析、解明してきた。この前提は、①アンケートに答える方と答えなない方に差異がない、②アンケート回答者が本人である、③アンケートの聞き方が適切であり、「正直」に答えている、④アンケートの回答数nが一定以上で、適切な統計分析が成されている、⑤その他、色々なバイアスを補正できる等であろう。

このうち、特に、①は問題であり、声なき声をどう聞き出すかは重要であるし、②は社長アンケート等の場合、大半がウソであり、社長室や企画室の若者が適当に答えたりしている(経験もある)。長年、上記の③~⑤は工夫され、改善されているが、①や②が解決されない以上、限界があるだろう。さらに、人間の行動は合理的でなく、単純な因果関係で決まらず、複雑系であり、その時の気分や体調もある。これは自然科学でも複雑系はそうであり、再現性が高くない現象も多い。それゆえ、nを多く取るには難しいし、信頼関係と適切な聞き方を前提だが、適切なインタビューや議論を、1-2時間、何度も繰り返し行う方が真実を解明するには適切ではないかと思っている。

 

さて、他方、f-MRIなど、脳の活動を可視化する科学と脳科学の進展で、アンケートでなく、いわば、脳を直接観察して、心理状態が分かるようになってきた。ヘイトクライムの世界的権威であるマシュー・ウィリアムズ(白人男性でゲイだという)による「憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき」(2023年河出書房)は、世界を揺るがすヘイトクライム(憎悪犯罪)はなぜ起きるのかについて、神経科学やデータサイエンスなどを駆使、先史時代からAI時代にいたるまでの「憎悪」の構造を解明している。著者の脳のカラー画像もあり、興味深い。憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき | マシュー・ウィリアムズ, 中里 京子 | | 通販 | Amazon

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MOTやMBAに欠けている政治との付き合い

 最近、MOTのテーマに政策提言タイプが増えている。原子力産業、防衛産業だけでなく、半導体でも、企業の「自由」な活動というより政策と連動することが重要になっている。経営学あるいは経営戦略では、政治にあまり触れてこなかった。ポーターは、国の競争優位、環境対応、都市問題、医療システムなどについて多数の研究をしている。

しかし、個別企業の経営において、いかに政治とうまく連携していくか、どういうやり方があり、効果はどうかについての研究論文は少ない。政策そのものの研究は公共政策分野で多いが、企業との絡みの話は少ないようだ。RIETI - 政治的なつながりのある企業は輸出しやすいのか?

これは、米では、ロビー活動であり、日本では業界団体、MOF担や談合など企業では秘中の常識だが、アカデミアでは、あまり取り上げず、ビジネススクールでも、そういう授業はない。

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岸田退陣と内閣の成果と財源難4兄弟

 岸田総理が次期、総裁選立候補をせず、退陣が決まった。内閣支持率から、退任は時間の問題であり、そのタイミングも、オリンピック後は想定範囲だろう。また、植田日銀総裁発言後の株価暴落なども時期と決断を早めたかもしれない。

日経新聞は、岸田内閣の遺産を財源難4兄弟というそうだ。もともと、岸田政権の目玉政策である防衛・少子化・GXは霞が関の通称で「財源難3兄弟」であり共通するのは相当規模の財源が必要なのに、どう調達するのかという問題を抱えているという認識で、これに半導体を加えて、4兄弟ということだ。

岸田文雄首相が残した「4兄弟」 歳出先行で財源あいまい - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ハト的であり、かつ宏池会系ゆえに財務省的財政規律派のようで、実際は、それ故に実行可能だったのかもしれないが、この財源4兄弟は、岸田総理の功績でもある。

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SBIレオスひふみ投信の説明会

久しぶりにレオスキャピタル(202441日に持株会社とSBIレオスひふみ株式会社)の説明会にオンラインで参加した。藤野さんは永らく知己であり、理科大MOTでもゲストスピーカーで登場して頂き上席特任教授としても多大な貢献をしてもらっている。決算説明会だが、藤野さんの金融や投資運用から見た世界観が有益だ。同社は「目利きのチカラ」を活かして新たな事業領域に展開し「世界をカラフル」にすることを目指しますがモットーだ。今回注目すべき内容は、まず、株価暴落時、ひふみ投信が 5 超の下落時の顧客の行動であり、スポット買付1は平常時より増加している。

もう一つは「ひふみクロスオーバーPro」だ。未上場企業へ投資を行い、上場後もその株式を継続的に保有、企業成長を支援するものだ。日本のスタートアップが上場後に成長が伸び悩む「死の谷」の解消を目指し、未上場企業への投資機会を広げる、すなわち、未上場投資の民主化という画期的なものである。

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メモリ回復と復権~キオクシア黒字化とCXLメモリ

 メモリ市況は、DRAMに続き、NANDにも及んできた。キオクシアの1Q決算は、売上4285億円は過去最高、OP1259億円(Opm29%)Dep785億円、Q/Q1064億円増収、820億円増益、Dep31億円減だがPPA絵影響も少なくなってきた。需給バランス改善で単価増(Q/Q20%増、ドル10%台半ば)、出荷も10%台前半増、円安も効く。ユーザー在庫は適正、需給は均衡、PC回復弱含み、スマホは緩やか。DC向けは伸長、AI用途期待。トピックスとして、AI向け第8世代BiCSフラッシュ2TbQLCをサンプル出荷、CBA(CMOS directly Bonded to Array)技術採用の1TbTLC量産、北上K2建屋完成、25年秋稼働も期待できる。IPO時期は不明だが、今なら最適だ。Financial-Results-FY2024-1Q-ja.pdf (kioxia-holdings.com)

 その場合の鍵は、SKとの関係、WDとの関係やMUとの提携で、NAND一本足打法から脱することだが、NANDもこれまで通りでは、価格弾力性が低下し、コスト低下余地も飽和、いずれ長江など中国勢との泥沼価格低下競争では、これまで通り、激しい業績変動の繰り返しだ。そこで、重要なのは、新たな市場であり、DRAMHBMに相当する広帯域のCXL向けNANDに期待である。メモリ市場構造ではSSDDRAMの間、これまでもSCMと言われてきた領域であるが、過去との違いは広帯域ニーズである。

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非上場の中での東芝の決算

非上場になったので、アナリストレポートもなく、マスコミもあまり取り上げないが、日経だけは1Q決算を記載している。【決算】東芝、46月最終黒字383億円 キオクシア回復で転換 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 重電や防衛が好調で、営業利益も増だが、最終損益はキオクシア回復が持分法寄与で大きい。送変電・配電等、公共インフラの業績が2023年度に引き続いて好調に推移していることに加え、鉄道・産業システムやHDD他、ビルソリューションの改善、為替影響等により、全体で増収増益。ただ、半導体は1Qにおいては市況回復の途上であるため対前同では悪化。引当金も計上。受注高はエネルギーシステムの大型案件受注に伴い対前同で増加、受注残もエネルギーシステムの大型案件、インフラシステムの受注規模の増加に伴い対前同で増加し、堅調に推移のようだ。財務・業績 | 投資家情報(IR) | 東芝 (global.toshiba)

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NEDOの真面目な審査

東洋経済がラピダス中心に政府の半導体やデータセンタなどの政策を批判している。6月に編集委員の大野氏から依頼があり、7月上旬に1時間半丁寧に、こちらから、なるべく、中立に客観的に対応した。しかし、少し質問はあったが、殆ど、触れなかった、後工程だかチップレットの件だけ、東工大の教授が批判的にコメントしているのに、前向きなコメントとして、引用された。一部、図表を使いだいと言っていたのも使われず、彼らの事前ストーリーに沿わない話や事実は無視である。いつもながら、マスコミのお得意の「抜き取り検証」である。ポスト5Gプロジェクトで、チップレット関連の多くの審査員はしているが、このラピダス関連の後工程については関与していないので、詳細な目標KPIは知らない。チップレットに期待はあくまで一般論である。他方、この東工大の教授はラピダス関連の後工程の審査員なのだろうか、目標数字は知っていて達成は難しいとコメントしているようだ。その点も明確に伝えたのだが、一般論としてのチップレットの期待とラピダス関連後工程の話が一緒にされ、いかにも政策に甘口のような印象操作になっているのは不愉快である。

 さらに、NEDOプロジェクトの審査の中身を請求し、黒塗りだったと批判しているが、ポスト5Gに関する審査委員の多くは公開されておらず、当然だろう。NEDOの名誉にために言うが、極めて真面目に、時間とコストをかけて審査している。

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人事制度~日経NEO-COMPANY特集より

 日経新聞が7月にNEO-COMPANY特集で興味深いデータを提供していた。ポイントは中年が「幸せ」であり、給与をケチらない企業は業績が良く、給与伸びと業績伸び、から高循環型企業を目指すべきだとしている。具体的には、キーエンスである。中年が幸せな企業ランキングでは、楽天やアクセンチュア、LINEヤフー、トヨタ、ソフトバンク等であり、これらは全年齢層でも幸せだという。高循環型企業ランキングでは、霞が関キャピタルの他、メルカリ、ディスコが上位である。

中年が幸せな企業、楽天グループやアクセンチュアがランキング上位 40歳超でも主役 NEO-COMPANY 私たちの逆襲 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

解剖キーエンス流 20代年収2500万円、でもスタバ禁止 NEO-COMPANY 私たちの逆襲 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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なぜ、日本のスポーツ国際競争力は強いのか

 パリ五輪で日本の活躍が素晴らしいようだ。大学時代に属したレスリングは、もともと、日本の御家芸である上、女子などは、富山氏ら指導者の戦略性だが、それだけでなく多くの競技で実績を出した。また、プロ野球では、大谷翔平はじめ多くの日本人が大リーグで活躍している。40年前には考えられなかったことだ。

 他方、40年前と異なり、日本企業の競争力は低下、マクロ経済でのGDPや生産性、さらにアカデミアや教育分野でも厳しい。特に、理工系は低下に歯止めがかからない。理系では、比較的、検討しているのが、医学、特に、臨床系だろう。寿命ランキングも含め日本の医療はトップだろう。あと、政治や哲学、アートなどはよくわからない。社会科学はそもそも、過去も含めトップではないだろう。

 スポーツ分野は、発展途上国や低所得では難しいこともあるが、日本の競争力が上がったことは事実だろう。企業や産業、理工系アカデミアなどは、この40年で低下したのに、真逆となったのは何故だろうか。政策の効果か、ハイテク産業やアカデミアに行くより、スポーツはコスパがいいと考え、教育投資や選択をする国民の行動結果なのか。こういう視点でスポーツ分野を他と比較した分析の先行研究はあまり見当たらないようだ。

 これを組織人事文化論の視点から考えると、スポーツと臨床は、類似の点が多い。

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あと半年やり残し、四半世紀やり残し

 秋入学生のゼミ生7名のグラデュエーションペーパーを無事提出して、いよいよ、MOTもあと半年を切った。

 

 もとから、65歳定年は分かっていたことではあるが、途中で定年延長の話もあり、また、当初、大学教授はノンビリジックリ研究に打ち込めると勘違いしていたので、やり残したことが多すぎる。

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日清紡HDの上期説明会~日立国際電気がグループ入り

 日清紡HD上期説明会にWEB参加した。特に今回は日立国際電気がグループ参加入り後の初の説明会であり、佐久間社長は2018年上場廃止以来、久方ぶりの株式市場との対話になる。

 日清紡HDは、グループ会社である、JRC、日清紡マイクロデバイス(旧 新日本無線)、日立国際電気そのものも、統合する前の国際電気や日立電子は、アナリスト時代カバー、ヘッジファンド時代も、カバーしており、長年のお付き合いである。

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フルヤ金属のリアル決算説明会に参加

コロナ禍以降、決算説明会を対面で開催する企業はめっきり減り、大半がWEB開催であり、説明会が質疑も含めHPに掲載され、資料も充実している。また、こちらも、大学の教授会やNEDO審査会などと重なる場合が多く、WEB参加よりも、あとで掲載録画を倍速で視聴することが多くなった。

 その中でフルヤ金属はリアル説明会を継続している。フルヤ金属は2006年にジャスダック上場したが、ヘッジファンド時代には即座に株主となり、自身が退任するまで長きにわたってファンドで保有していた。その技術力とユニークなビジネスモデルに着目していた。

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理科大MOT総仕上げ前の発表会

 今年も理科大MOTのグラデュエーションペーパー発表会が開催された。今回は、秋入学生9名の最終発表会と春入学生60名弱の中間発表会であった。2017年に赴任、旧MOT時代の1回分も含め、春入学は20251月の発表会で8回、秋は今回で3回目である。学年60名程度であるから、累計500名近い社会人大学院生が会社での勤務をしながら、イノベーションや技術経営を中心テーマとして2年間かけて書き上げた多様な内容の5万字、50-100頁のペーパーの成果を審査してきたことになる。その中で若林ゼミは累計85名であり、ほぼ全員の主査として指導させて頂いた。そうした内容自体が日本企業の課題や可能性を凝縮している。また、2019年からは発表会には、教員だけではなく、上席特任教授はじめ外部有識者など30名程度に参加頂き、また、企業派遣学生については派遣元の経営トップも参加するため、10分程度の質疑での濃厚なやりとりやコメントは珠玉の内容である。

NHK視点論点に登場~9月2日Eテレ12:50~13:00放送予定

 これまで、NHKでは色々な番組に出てきたが、今回、Eテレの視点論点に登場する。たまに、視聴したことはあるが、改めて、チェックして、そのカバー範囲の広さと切り口に感心した。その時々の重要な話題について、所属経歴は様々だが素晴らしい有識者が9分で分かり易く語るものである。だいたい、御名前を聞いたことがある方が多く、橘川先生や森川先生など知己も登場していた。ハイテクの話題はAIから5Gまであったが、半導体業界等の話題はあまりなかった。直近のテーマは下記だが、まさに、多様で興味がない視点である。エピソード - 視点・論点 - NHK

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研究所クリーンルーム見学の記憶~数十年ぶり

この78月に、各地の半導体工場見学させていただいた。クリーンルームにも入り、嬉しい限りである。場所も、愛知県、兵庫県、福岡県、神奈川県と様々だ。

各社、クリーンルームの中身は違うが、今回、白いスーツも異なり、エアシャワーもあったり無かったり、ゴム手袋もつけない場合もあり、驚いた。いずれも、過去に見学はしたが記憶は曖昧なものもある。

その中で、先週の訪問は、工場でなく、研究所だったが、その中のクリーンルームである。入る過程で、少しずつ記憶が蘇り、何度か行ったと思いだしたが、果たしてそうだった。

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後出しじゃんけんと評価意見一致が経営アカデミアの常識なのか

 最近、一部の経営アカデミアには驚くことが多い。大学でもオリンピックでも選挙などでも、評価基準を試合後に変えることはあり得ないだろう。

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乱高下する株価と為替

82日ブログで「金融緩和時代の終わりとリーマン1年前の8月相場」と題して、コメントしたが、85日にブラックマンデーを超える下げ幅4451(率は12.4%とブラックマンデー14.9%以下)となった。TOPIX先物が8%安で、サーキットブレーカー発動、長期国債先物にもサーキットブレーカー発動、日経平均先物も午後に2度もサーキットブレーカー発動という異常事態だった。円は141円に急伸した。

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金融緩和時代の終わりとリーマン1年前の8月相場

 8月に入り、急速な円高と株価大幅安が起こった。円高の背景は、「もしトラ」のドル安政策の懸念、160円を超えた水準での政府の巨額な介入が効き、日銀の利上げ幅は想定線だが、植田総裁の更なる利上げの可能性のタカ派発言、米の景気後退リスクでのFRB利下げ前倒し観測などである。植田総裁のタカ派発言とFRB利下げ前倒しは想定外だった。このため、「ミス渡辺」と言われるような個人の為替トレーダーも含めた投機筋が円売りショートポジションの手じまいをしたのだろう。

 株価大幅安は、日経平均の大きな構成要素であるハイテク株が、円高メリットが大きいと認識され、かつ米国景気依存度が高いことに加え、植田総裁がタカ派である場合のリスクもあるだろう。政治が空白の場合は財務省や日銀が強くなりがちであり、アベノミクスの終わりどころか、金融引き締めに転換する可能性も否定できず、かつ財政規律ならば、「半導体祭り」も終わる懸念もある。米でも、トランプなら台湾やTSMCには厳しそうで(ただ、その場合は、日本のデバイスメーカーにはプラスも多いのだが)、世界の「半導体祭り」が終焉するかもしれない。

 今回、やや驚いたのは、僅かな金利で、為替水準と日経平均の乱高下が大きいことである。もしかしたら、想定以上に日本企業の体力は衰えており、金利の弾性値が大きいのかもしれない。

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時間管理の目標と実績~意外と目標がない

 コンサルやSIerはコストの大半が「人月」であり、時間管理は重要だ。実際、野村総研時代に細かい時間管理勤務簿のようなものがあり、驚いた覚えがある。細かい管理はしないが、大学では、時間管理について、研究、教育、マネジメントを1/3ずつだという了解がある。アナリスト時代は、実績を細かくつけることは無かったが、自身として、INPUTOUTPUTのバランスを自身で把握するため、ある程度、定量的に把握していた。

 社員以上に、経営トップの時間管理は重要であり、この視点から研究したのが、HBSのニティン・ノーリア学長とマイケル・ポーター教授による12年に及ぶ大企業のCEOの時間の使い方に関する研究結果である。HBSの最新研究が明かす、成功したCEOたちのタイムマネジメント術 (newspicks.com)

 どういう事にトップが時間を割いているかは、リーダーシップや社長の再定義にも関係する。社長の再定義を、象徴型、調整型など6分類したが、これはまさに社長が何に時間を割いているかで分類される(冠婚葬祭や朝礼など儀式が多ければ象徴型、社内調整で会議が多ければ調整型、自らトップセールスが多ければ事業型、など)【スライド解説・若林秀樹】日本の社長はこうしてつくられる (newspicks.com)

しかし、トップがタイムマネジメントに関して、実績だけでなく、あるべき姿を認識し、歴代の社長や他の役員との差異を意識している例は少ないようだ。

これは、社員でも同様であり、MOTでも聞いてみると、意外にも、タイムマネジメントのあるべき姿についての認識が少なく驚いた。

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中国との付き合い~R&Dをどうする

今年は内外で選挙が多く、政治的な不確定要素が高まると指摘されていたが、日米では、予想以上だ。これが来年以降の対中政策にどう影響を及ぼすか難しい。

 

 対中との関係では、輸出規制や中国生産、セキュリティクリアランス等の議論はあるが、R&Dが最も悩ましいだろう。中国生産に関しては、サプライチェーン変革もあり、地産地消で、各国の国内生産回帰でいいだろう。しかしR&Dは難しい。日本も含め多くの大学で大学院はほぼ中国人が多く、アカデミアの運営は、中国人なしには難しい。米でも多くの共同研究は中国人が中心である。さらに、悩ましいことには、実は、中国には、既に欧米が多くの拠点があるという。

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教育の輸出と輸入(大学・教員は輸入、学生は輸出)

日本の産業界の競争力や輸出入、貿易赤字の議論はあるが、教育についてはどうだろうか。グローバルに世界は広がってきたが、この視点から少し愚考を試みる。

歴史的には、隋や唐の時代に、学問は仏教と共に輸入された。遣隋使などの「留学生」はいたが「輸出」ではなく、現地で学んで導入するだけだった。さらに、戦国時代にも、最先端の科学技術知識がキリスト教と共に入り、そして、明治期には多くの「お雇い」教師が、教育システムと共に輸入された。

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NEDOでMOT研修

ここ数年、NEDOには大変お世話になっている。2021年から技術委員に就任、ポスト5G基金やGI基金の半導体関連のかなりの案件の審査をさせて頂いたが大変勉強になる。各社の最新の取組みもそうだが、多数の案件で、真剣勝負の質問票や審査評価を作成、審査委員会では一流の専門家のコメントや意見交換は参考になり、ステージゲートの実態も確認できる。MOTの授業でもお世話になっている。

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電力網と情報通信網の最適ミックスは

カーボンニュートラルに向け電力政策の議論は多く、電力網についても、再生可能エネルギーとの関係やスマートグリッドなどの研究、エネ庁はじめ極めて多い。045_04_02.pdf (meti.go.jp)

送電網増強、再エネ普及左右 電力システム改革の課題 伊藤公一朗・シカゴ大学准教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

脱炭素時代へ蓄エネが鍵 電力安定供給の課題 古山通久・信州大学教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

系統運用、公的機関へ移行を 発送電分離の課題 伊藤公一朗 シカゴ大学准教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

大規模な事業再編の契機に 発送電分離の課題 橘川武郎 東京理科大学教授 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 他方、近年、DCが、webやメール閲覧のインターネットDCから、クラウド向けハイパースケーラーDC、更に、AI-DCに移る中で、学習はクラウドでGW級、推論はMW級、エッジDCという棲み分けが議論されている。その場合に、電力網と情報通信網が、それぞれのあるべき姿、また、電力会社のあり方と通信キャリアのあり方についての議論はこれからである。

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オンプレの復権、セキュリティソフトトラブルで推論はオンプレ、学習はクラウドでは

 先日719日に世界中で起きたシステム障害は、インターネットやクラウドのリスクを再認識した。

大規模IT障害、クラウド型の最新セキュリティーに死角 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

原因は、ウィンドウズ搭載のコンピューターにあるセキュリティー大手米クラウドストライク社のソフト「ファルコン」のアップデートが原因であり、「ファルコン」がクラウドを通じ企業等の端末やシステムを常時監視するソフトであり、クラウドを通じてあらゆる端末とつながっているため不具合が拡散したようだ。大規模システム障害 1社の綻び、バグ拡大で世界がまひ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 これが、手術や戦争中であれば、悲劇である。再度、インターネットやDCのあり方を考え直すべきだろう。幸い、生成AIでは、学習はクラウドで行い、推論は、レイテンシの観点や、再生可能エネルギーを利用する利点もあり、エッジDCでユーザーに近いところに置く傾向となっている。

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企業の競争力を殺すスマート志向~サムスンも労働スト

あのサムスンがストライキに揺れている。全従業員12万人のうち約3万員が属する、サムスン電子の最大労働組合「全国サムスン電子労組」で大半が半導体部門に属する。半導体業績不振で成果給に不満、賃金交渉を巡り78日に始めたストライキを無期限で続けると発表。6000人超が引き続きストに加わる見通しという。

サムスンのストライキ延長へ、労組「無期限で続ける」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

サムスン電子最大の労働組合、初のストライキ宣言 成果給要求 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

「最強サムスン」にストライキの波、エリート成果主義曲がり角 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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研究でも政策でもAIでも問こそが鍵

 幼少期から好奇心が強く質問をしてきたが、リサーチャ、アナリストでは、まさに質問力が重要であり、決算説明会でも鋭い質問をするので、会社側、同業のアナリスト、顧客であるファンドマネージャーや投資家など有名であり、質問は「得意」だと自認していた。ただ正直、質問が得意などというのは、自身の価値観や美意識からは否定的に考えていたし、むしろ解決能力、提案能力こそ、重要であり、そこを切磋琢磨しなければならないと自問自答してきた。

そういう中で、大学で教員をし、研究をし、修士論文指導をする中で改めて、問の重要性を再認識した。研究においては、良い問を発見すれば、かなり、研究の質は決まったようなものである。更に、生成AI時代を迎え、一層、問(チャットGPTでは、プロンプトという)が、問が重要になっている。

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心理的安全性と生命的安全性そして多様性

東京に出てきて、予備校や大学に入り、一番、嬉しかったことは、心理的安全性と生命的安全性である。70年代の地方都市においては、日々、暴力があり、生命的安全性が無かった。

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重心論の発展

おおよそ、10年前に、経営重心論を発表して、それなりに、普及し評価を頂いている。機関投資家やアナリスト、コンサル、経営者、学者、マスコミに、累計1000以上のプレゼンを行い。議論やフィードバックを頂いた。Newspicksでも5回連続の特集記事で1000pikcsを獲得した。MOTでは2017年以降で累計500名近い履修生がおり、ゼミでも好評である。

日立の小島社長は、就任記者会見で経営重心につきコメント、東芝の綱川元社長もやはり記者会見で、コメントされた。執行役会長および執行役社長の異動に関する説明会 - 日立 - YouTube

マスコミでは、日経新聞では中山淳史氏や西條編集委員はじめ、10回以上のジャパンストライクゾーン等の考えが引用されている他、日経ビジネスやTVでも取り上げられ、BCNの千人回峰でも紹介された。

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価値の配分を定量化(テックからマネジメント、ビジョナリーへ)

製品、サービス、あるいは企業全体であれ、その価値のモノとコトと言った中身の構成比の定量化を試みる。過去、2021年と2023年に、研究イノベーション学会での2つの発表をベースにする。

1GAFAM/BATと日本企業を分けたもの~DAAE構想とQCD思想の比較kouen36_195.pdf (jaist.ac.jp)

 

2)モノからコトへの転換は単位系による価値創造kouen38_208.pdf (jaist.ac.jp)

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KOKUSAIと日立国際電気の決断

 KOKUSAI ELECTRIC(コクサイエレ6525)が話題をよんでいる。半導体相場の中で、時価総額は既に1兆円を超えた。202310月上場時の時価総額は約4800億円で2023年最大IPOだったが、そこから、2倍以上である。同社を抱えていた日立国際電気の上場廃止時の時価総額は3200億円であり、IPO時点でそれを上回っていたが、当時と比べると4倍近い。

業績も好調で、2023年度の売上1808億円、OP378億円から2024年度は2175億円、OP510億円を見込む。20182019年度は決算期がイレギュラーであり比較が難しいが、2020年度では売上1780億円、OP600億円である。

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ファウンドリと製造装置の両立

日本は半導体デバイスではシェア10%を割り込んだが、製造装置では30%以上、材料では50%以上のシェアを維持している。半デジ会議では、政府の目標は1兆㌦時代にデバイスを15兆円、シャア1015%である。この可能性を、デバイスのシェア回復、更に突っ込むと、日本でのファウンドリでの存在感と、製造装置と材料のシェア維持の両立という視点から論じたい。

地域別にみると、米は、デバイスでもほぼファブレスであり、ファウンドリはGFくらいで、OSATも小さい。製造装置は前工程中心に強いが材料は小さい。

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半導体における政策と戦略の階層

政府の半導体政策やラピダス戦略について、批判する人が多いが、議論に際し、階層で整理すべきだと思う。そこで、中国の古典、六韜三略に倣って、また、太平洋戦争の真珠湾攻撃と比較しながら分析した。

 まず最上位階層は政治であり、真珠湾攻撃では戦争決意であり、今回の半導体政策では、復活挑戦決断である。次の階層は大戦略であり、開戦劈頭に真珠湾奇襲、半導体では、議連活動や予算の大枠、米との関係構築等である。ここまでは最近は概ね評価する声が大きい。その下が具体的な活動になり、空母機動部隊編成や、先端ロジックに傾注、ラピダスやLSTC設立である。ここは、批判もあり、議論が分かれるところである。

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政治と選挙区の不条理

 79日に、甘利明先生の勉強会が東京プリンスホテルで開催された。半導体をテーマに、甘利先生とSEMIジャパントップ浜島氏と私で10分ずつポジショントーク、その後、私がファシリテーターを務め、30分のパネル討論である。

ここ数年、半導体政策に関連して、甘利先生にプレゼンを行い、御相談する機会が増え、また、甘利先生が本部長を務められる国家安全保障の会議でもプレゼンをした。また、理科大MOTの御講義に来ていただいた。このような中で、甘利先生の半導体はじめイノベーションに関わる政策での御実績には、改めて感銘を受けている。最初にプレゼンをさせて頂いた時、EDAというキーワードに反応され、その勘の鋭さに感心した。およそ政治家らしくなく、知的レベルが高い上、世界の今後の行方やイノベーションについても洞察力が深い。数少ない世界に通用する政治家だと考える。

 しかし、自民党のゴタゴタやドタバタの逆風や選挙区変更もあり、次の選挙は油断できないようだ。もし、選挙区が半導体・イノベーション区があったら圧勝だろうが、実際の選挙区はそうはいかない。世界的あるいは日本的な貢献が、地元の票とは関係が無い。これは、まさに不条理である。

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最近の私の履歴書に見る階層社会

日経新聞「私の履歴書」が最近、あまり面白くない。退任直後のタイミングで登場した黒田前日銀総裁以外は、有名人は多いものの躍動感が少ない。その理由を考えると、戦後生まれが増えてきて、波乱万丈の人生でなくなってきたからかもしれない。さらに、芸術家や科学者などは、親などが、それなりのハイソであり、周囲に学者や芸術家も多く、もちろん、本人に才能も努力があったにせよ、幼少期から家庭教師をつけられる等、エリート教育をされており、一般庶民からは、人生の学びが少なくなっている。また、一時、多かった欧米人の登場が少ない。経営者においても、2000年以降、いわば、日本企業の凋落が顕著になってからであり、グローバルな感じがしない。出世もワンパターンだ。

 戦後、80年近くなり、平和はいいことだが、「革命」混乱もなく、社会構造が階層化してきた。

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演習や論文の必要性

あと1年を切った、理科大MOTでの教員生活を振り返りつつ、ゼミでのグラデュエーションペーパー指導を味わい楽しんでいる。

 そこで、改めて認識したことは、ビジネススクールに、もはや座学は不要、時間の無駄ではないか、ということだ。

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トラブル処理と現場力

企業であれ、アカデミアであれ、役所であれ、トラブル処理時での現場力が低下しているように思う。トラブルにも、組織側に原因があるもの、外部環境に起因するもの、そのうち、一定の頻度で起こり、その対策がある程度可能なもの、全く予想できないもの、起きても、影響を防げるもの、ダメージが避けられないものと色々である。日々の飲食店、駅の窓口などでは、以前なら、臨機応変な対応があったのに、トラブル時の対応が拙く、イライラすることが増えている。

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日本に欠けている教育

MOTで社会人教育に携わり、最近は、経産省の半導体デジタル会議で、人材教育問題にも関与して、日本に欠けている教育は下記ではないかと確信しつつある。

 日本はタテ割りの専門分野では幾つか強い分野があるが、金融、IT、英語は極めて弱い。金融教育は、そもそも無く、英語は昔から注力されているが散々だ。ITは工夫次第だろう。

 むしろ意識さえ無いのが横グシ的なものであり、俯瞰力抽象化、問を立てる能力、統合力などである。

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正義のビジネスモデルは無いのか

最近、正義のビジネスモデルに関心がある。大きく時代が変る中で、正義についても、多少は、認識が変る場合もあり、特に経済的正義はなおさらだ。

独禁法など公正取引、さらに、証券取引は、数十年単位では、法が変ることもある。1980年代以前は、株価操縦もインサイダー取引も無かった。独禁法は米国でも大きく変遷している。プラットフォーマモデルは2015年までは、画期的なビジネスモデルとして、アカデミアでも評価されていたが、最近は異なってきた。国家安全保障を巡っては、対中貿易などは、既に要注意である。

 

そうした正義を超えた絶対的な、善悪はあり、経世済民の視点から、石田梅岩の商売道や、三方良しやフリーミアム等は、善であり、かつ、ビジネスモデルとしても黒字を維持し継続可能な良いものである。

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円安の背景と有事

再び、為替が160円を突破、日米金利差仮説だけでは説明できず、そもそも国内の利上げは債券や弱い金融機関にマイナスだ。農中の巨額損失はその象徴だ。為替介入もそうそうできず、神田財務官も退任、さすがに、これまで「理論的には円安はおかしい」といった日経新聞の論調も変わり、長期、円安問題を捉えようというスタンスに変ったように思える。狭い金融論でなく俯瞰的に円安を論ずるべきだ。

 

同意するのは、渡辺博史元財務官の「経済体力に市場が疑問符」622日付けのインタビュー記事だ。デジタル赤字もある。「円=安全通貨」は誤解だった 渡辺博史元財務官が説く復権策 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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データセンター動向~付加価値とビジネスモデル

 COMNEXT特別講演セッションで「環太平洋と日本列島のデジタルインフラを担うデータセンター(DC)の最新動向とビジネスモデル」と題して2024628() 1230分~14時東京ビッグサイトでパネル討論のファシリテーターを務めた。これからの日本のデータセンターのゆくえ (cbw-expo.jp)

 

パネラーはデジタルインフラ会議の有識者を中心に、総務省データ通信課長西潟氏、METIソフト室長渡辺氏、IBM森本CTO、さくらインターネット田中社長、総務省OBでもある読谷山延岡市長である。

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リーダーシップ組織人事は、状況(有事と平事)、階層による

 リーダーシップや組織人事は、幼少期から軍記物その他で関心があり、武将などのリーダーシップに心躍らせ、また組織図を描いて遊んでいたが、大学時代に野中先生の「失敗の本質」を読み感動、また当時人気雑誌だったプレジデントの経営者話も愛読していた。MOTに来てからは、技術系リーダーシップ論を担当、アドバンストリーダーシップ、R&Dマネジメント、実践CXOケーススタディなどでも、技術系やイノベーションとの関係で研究教育に関与した。また、昨年からは、組織人事やイノベーション人事も専門外ながら担当する中で、講義を通じ、社会人学生との議論から、改めて、現場では当たり前の事実がアカデミアの研究では当たり前ではない事に気がついた。

 まず、組織人事で、組織か人事かについては、階層で全く異なり、リーダーシップも平時と有事、更に、階層で異なる。組織全体をマクロに見ると、個々の人事よりも、組織構造が重要であり、西洋的な組織論が当て嵌まるが、ミクロな現場では組織構造より、個別の人事、ヒトの要素が大きく東洋的な教えが当て嵌まる。これが、多くの教科書や理論では同一に議論されている。

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バランスの良いチーム~役員会、審査会

イノベーションを起こし、支援でき、あるいは、正しい判断ができる目利き力があるチームとは、どういう構成メンバーがいいのだろうか。多様性は重要だが、人種や性別、年齢など人口統計学的多様性といった表層的多様性でなく、専門分野や考え方の違いも含めた、認知的多様性すなわち深層的多様性である。開発チーム、役員会、審査委員会、有識者メンバー、パネル討論会、さらには、MOTでのゼミや授業でのグループ討議のメンバーでも、多様性はある。多くの場合は、その分野の権威で、主流派と反主流派、別の分野の専門家、専門家ではないが、有名人で鋭い切り口を持っている方であれば、有益な示唆が得られる。しかし、意外に、構成員に含めていないのが、横グシあるいは、π型人材である。複数の分野について、専門家と十分な議論ができ、全体を俯瞰できる人材である。本来は、ファシリテーターが適しているが、この人材がいると、議論が発散せず、個々の専門家や全くの素人を繋ぐことができる。

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半導体市況~メモリ回復だがアナログ等は厳しい

WSTSが、64日に最新の市場見通しを公表した。2023 年市場は、8.2%減であったが、ディスクリートとロジックはプラス、メモリの29減が響いた他、センサ等やアナログも二桁近いマイナスだった。2024 年は16.0%増、2025年は12.5%増を予測。

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私学法改正とガバナンス

いま、私立大学は、私学法改正で、てんやわんやであるようだ。大学における「憲法」は「寄附行為」といわれ、大きく改正される。日大の元理事長の事件を契機に、私学のガバナンスが求められ、20232月に閣議決定され。20254月施行となる。大学や短大を運営する法人の場合、合併・解散といった重要事項の議決権や理事の解任請求権を評議員会に認めるのが柱。理事らの背任行為や贈収賄には罰則を設ける。改正案によると、法人の監視・監督を担う評議員会は、理事会の諮問機関との位置付けは変わらない。理事会へのチェック機能を果たすため理事と評議員の兼任は禁止する。評議員会の議決が必要なのは法人の根幹に関わる事項とした。不祥事があっても理事が辞めない場合を想定し、評議員会に解任請求権を与える。大学運営の監視機能強化 私学法改正案を閣議決定 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

改正私立学校法に基づく寄附行為変更認可申請(令和67月以降受付)について(文部科学大臣所轄学校法人):文部科学省 (mext.go.jp)

これまでの私学のガバナンスでは、評議員の位置付けは、国のガバナンスに例えると、いわば国会議員であり、そこから、いわば内閣に相当する理事を選ぶというものだったが、今回は上場企業のガバナンスに近い。すなわち、そのコンセプトは理事会、評議員会、監事という3つの機関の間で執行と監視・監督の役割を明確化・分離になる。理事長、業務執行理事などの経営陣の不祥事を防ぐため、評議員会の機能強化に一番の主眼が置かれた。現状ではチェックされる側の理事全員がする側の評議員を兼務している場合が多い。改正法では評議員会の独立性を担保するため、理事との兼任を一律に禁じ、理事・理事会選任の評議員は2分の1以内、教職員評議員は3分の1以内にするなど評議員の構成にも制約を課した。

 

変わる私学ガバナンス 法改正を機に経営改革進めよ 大河原遼平・TMI総合法律事務所弁護士 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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理由とは~3シン因と相関、因果、そしてネットワーク構造

「理由」「原因」の構造について、3「シン」因分析、直接の新因(近因)と、本質的な理由の真因、更に深い深因と構造化して分けて考案すべきだと提案している。普通に原因とされるのは、新因か真因であり、深因は、ある場合にはプラスだがある時はマイナスというような、文化に根差したような避けがたいもので、他のケースにも当て嵌まるようなものである。この3シン因分析を使って、半導体の敗因も分析した。 原因とされる、①油断、②日米摩擦や米戦略、③国内政策、電電解体等、④水平分業遅れ、⑤品質拘り、⑥マーケティングや情報軽視、⑦経営者とビジネス力、⑧自前主義や横並び体質、につき考察した。   時期によって、本質的な場合もあり関係の無い場合もある。新因(直接の原因)は、日米摩擦や水平分業等、トップ次第戦略次第で対応できたものが多い。その真因は、経営と技術の分断、構造変化に弱い等があり、これらは、半導体だけではなく、電機業界全体の問題でもあるが、中期では、教育等で対応可能かもしれない。深因は、油断し易いくせに、自暴自棄になりがちで、目先の和(周囲と時間軸でも)を重視するが中長期目線がなく、その癖、対応が遅い等の国民性もある」

しかし、上記の8つの原因のそれぞれの関係性や因果関係については言及せず、3因との対応は主観的な考察になっている。そこで、客観視するため、ネットワーク科学で、それぞれの因果を分析した。

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ネットワーク時代に過剰品質は悪?

ここ数年、製造業の品質不正が問題になっている。三菱電機のケースもショッキングだったが、今回のトヨタなどのケースは大きなショックだった。しかし、トヨタのケースは、基準以上の「過剰品質検査」であり、これまでとやや違う面もある。また、トップ企業の「特別採用(トクサイ)」という側面も大きいのではないか。これまでは過剰品質がもたらすマイナス面が指摘され、実際には十分だから、過剰品質のための検査は無くても大丈夫だ、といことが議論の一つにあった。しかし、今回は、それ過剰検査でも国が定めた基準とは違うことが一つの論点である。 日本企業過剰品質の問題については、コストや管理会計、下請け論、ガバナンス面など多くの指摘や先行研究がある。しかし、ネットワーク、繋がり、標準という観点はまだ多くないようだ。

品質不祥事と管理会計 Quality Scandals and Management ...

繰り返される品質不正問題に企業は終止符を打てるのか

品質不正を生むリソース不足と厳しい納期、過剰品質という ...

品質不正、いま何をすべきか。QC学会トップからの警告

日本的経営と品質管理 - 名古屋学院大学リポジトリ

品質力は「落ちている」と「変わらない」が拮抗 - MONOist

これまでの品質管理は、スタンドアロンでの話だが、これからは、ハードもソフトも多様な種類と階層でネットワークとして繋がり、あるいは、プラットフォームの上で、データ連携が必須になる。

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オンラインネット空間とリアル空間とどちらの情報量が多いか

リアルとオンラインの会議や会合等、どちらが良いかについては、それぞれプラス面マイナス面があり、棲み分ける面も多いことは共通認識になっている。海外や遠距離との会合、数百など多人数で会議、知識伝達や決定事項の通達などはオンラインでもいいが、教育、アイデア創出、深いコミュニケーションはリアルだろう。オンライン飲み会は味気ない。ただ、まだ一部、オンラインに拘る方々も、アカデミアにも多い。リアル情報とネット空間情報のどちらを学習させるかになると、生成系AIの可能性にも関係する。

 MOT2020年に行ったアンケートでは、リアル授業の価値は、桁違いではないが、数倍であった。また、オンライン時代にこそ、リアルやライブの価値は高まり、リアル授業はそうしたライブ感でのワクワクやドキドキをしないといけない。これは早稲田MBA入山教授も同意見であり盛り上がった。人間は五感をフルに動かし、環境認識をしてモデルを作り、環境に介入し、その反応を、五感でフィードバックして学習していることが明らかになっている。その点、ネットワークから多様な情報を得ていても、自ら動かず、五感を持たない生成系AIの学習推論とは異なる。これは先日、人間の対面営業と生成系AIによる営業とどちらが勝つかという実験をして、自らが実験台になって確認した。

その中で、そもそも、自らリアル空間を動き回り、五感からの情報を得る場合と、ネット空間から主として、画像や文字と音声を収集している(片方向)場合とで、どちらが多くの情報を得るか、考察を続けている。

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DCはAIファクトリー

この5月末から6月上旬にかけ、総務省経産省開催のデジタルインフラ会議が開催され、有識者委員として参画、積極的に議論をした。慶応大学の村井純先生を座長に、東大江崎先生、ソフトバンク宮川社長、IBM森本CTOなど素晴らしいメンバーである。生成系AI時代に、データセンター(DC)を中心に、5G6G基地局や光ファイバー網のデジタルインフラのあるべき姿、カーボンニュートラル観点から、電力網などとの関係、国家安全保障やレジリエンス、地方活性化や街づくりの観点が議論された。拙著「デジタル列島進化論」で分散DCを都道府県に1カ所、50以上設置を主張していたが、宮川社長のプレゼンでは47都道府県に1つ置き、信号、河川管理、上下水道など日本国のインフラをデータと推論エッジAIで管理することが必要だと示されている。村井先生の資料では更にAI-DCを数百、1000以上とある。

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第6回)配布資料 (soumu.go.jp)

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第7回)配布資料 (soumu.go.jp)

総務省|デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合| デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第8回)配布資料 (soumu.go.jp)

 会議ではAI-DCAIファクトリーと称したのは至言である。AIファクトリーが日本の未来を。

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スマホニュースに続き、TVも新聞も、ニュースは広告~PFビジネスモデルの罪と罰

 スマホニュースは、既に、ニュースだと思ったら、本や商品の広告だったりする場合が多いが、TVや新聞や雑誌もそうなりつつある。かつてたまに出ていたWBSも企業関係のニュースは、広告代理店経由で、スポンサーがつき、ポジティブな発言をする識者が選ばれる。

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シンクタンクの限界~手法とデータが同じなら結果も似てくる

ここのところ複数の政府系、民間系のシンクタンクの方々と将来予測について、意見を聞かれ、議論することが多いが、アプローチが酷似しているのに驚いた。どれもこれも、社会ニーズ(ウェルビーイング、社会課題等々)、科学技術動向、市場動向を踏まえ、1020年後の将来からバックキャスト、分析データは、財務データ、論文、特許、主要な大企業とスタートアップ動向、有識者発言をベースに、ヒヤリングやアンケートを行うというものだ。

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レガシー半導体液晶工場をデータセンターに

日本の液晶産業は衰退、その工場の利用方法として、データセンター(DC)や半導体のチップレットへの転用が注目されているようだ。DCへの活用は、20223月のブログや拙著「デジタル列島進化論」でも指摘、チップレットへの転用はガラスインターポーザの視点から2023年に何度か指摘している。

ソフトバンクも堺にAIデータ拠点 シャープと本格交渉へ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

インテル、シャープの液晶工場で半導体 研究拠点に活用 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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半導体とDCの乗数効果と雇用創出効果

デジタル列島改造論の一つの狙いは、地方の活性化である。そこで、半導体とデータセンター(DC)について、乗数効果と雇用創出効果を、一般のハコモノと比べ考えてみた。

 不況時の公共投資で土木建築が多いのは、乗数効果が大きいからである。建築には、多くの工事作業者が関与し動き寝泊まりし、飲み食いし、トラックがモノを運ぶ。多くの人間が仕事にありつけ恩恵を被る。しかし工事が終われば、それで終わりであり、次は20年後の修繕時までは周辺への経済効果は薄い。しかし、半導体やDCは、事前に電力線を引き、建物ができた後は、装置を据え付け、サーバーを入れる。そして、運用は24時間であり、DCでは少なくとも50~100人必要で、多くの雇用が生まれる。

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ゼミの新たな形~オープンイノベーション

 来年3月に向け有終の美を飾るべく、ゼミのあり方も進化させている。多くの場合は、ゼミはグループ討議や合宿、OB参加、一部個別指導位だが、当ゼミは、工場見学や一部外部スピーカーを招聘してきた。また、立命館MBAとの交流会も行ってきた。

今年からは、外部スピーカーを呼ぶ回数を増やし、既に7名、6月末で9名である。

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どこを狙うか~教員のストライクゾーン

事業でも学術でも、レポートやMOTのグラデュエーションペーパーでも、自身のテーマが属する領域のどこを狙うかが鍵である。通常の研究大学院では研究室毎にテーマやアプローチが決まっており、それを逸脱することはない。建築学で半導体物性は難しいだろうし、経済学で宇宙工学はできない。もっとも、アカデミアでも横グシ研究はあり、あるいは、経済や社会等のテーマを物理アプローチや工学アプローチで解明するなど実績も出てきている。MOTのテーマは多様であり、学生自身がテーマに関して、専門家であり、また、プローチも多様である。

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流行語「深掘り」と「簡単ですが以上です」

MOTだけでなく、いろいろな機会に発表を聞いていると、必ず最後の一言が、「深掘りをします」と「簡単ですが以上です」だ。これほどまで全員がそうなのだから、彼らが属する会社でも、上司も同様なのであろう。半デジ会議などでも、14分の発言と言われているのに、長々と10分近く話しても、「簡単ですが以上です」で締めくくるトップも多い。

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日本電子の75周年記念シンポ

 日本電子は531日に、帝国ホテルで決算説明会と75周年記念シンポジウムが開催された。会場には、多くの新製品など実機の展示があり、シンポジウムではMARS産学連携による新世代電子顕微鏡開発」by東大柴田教授、「経営哲学とイノベーション」byIHI特別顧問(NEDO元理事長)齋藤氏、ピアノ演奏を挟み、「逆タイムマシン経営論」by一橋大特任教授楠木氏、ノーベル賞受賞者である大隅氏の講演という豪華なものであった。

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ラピダスの資金調達問題

日経新聞その他複数が、ラピダス向けの融資に政府保証を付ける方針と報じた。銀行が躊躇、個別企業に異例とも。「ラピダス向けの融資に政府保証を付ける方針だ。2027年からの最先端半導体の量産には5兆円が必要とされる。民間金融機関の融資実績がないラピダスは資金調達が課題だった。政府保証で融資の決断がしやすくなるとみている。31日の検討会でラピダスの政府保証の根拠となる法案をつくる計画を提示する。」ラピダス向け融資に政府保証 経済産業省、最先端半導体の量産支援 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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チップレット時代の半導体ビジネスモデル

ファブレス/ファウンドリモデルだからと言って、ファブレス側は製造を知らなくていいという訳ではなく、ファウンドリも設計を知らなくて言い訳ではないのは当然である。これは、OSATEMSでも同様である。TSMCの強みは、設計についても十分な知識やツールがある。ファブレスもユーザーとの関係で、アーキテクチャからやるか、仕様からか、デザインか、更に、回路設計からか、など多岐に渉る。

 今後、チップレット時代、カーボンニュートラルもあり性能からも消費電力削減が必要な時代には、これらの垣根が変ってくる。また、最終ユーザーとファブレス、ファウンドリが十分なコミュニケーションをする必要がある。

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先端半導体も需給はAI向けに逼迫

先端半導体はAI専用チップが、今後急増していく。チップサイズと省エネの問題から、当然、ビオンド2nmになる。また、アプリケーション毎の専用化が求められる。生成AIがこうしたトレンドを加速している。他方で、EUVの導入やGAAの難しさから供給は限られる。さらに、台湾有事リスクもある。

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シリコンサイクルの周期をFFT

 シリコンサイクルの周期がいったい何年なのかは古くて新しい問題である。PCサイクル説なら34年、大統領の4年説、最近はスマホの2年サイクル、インテルやTSMCの先端ロードマップ、ムーア則なら34年だが、実際は需給の結果ではある。

統計がある1985年からで40年近いが、統計的には、N9程度である。下記でピークとピークかボトムとボトムを取ると、平均4.56年、σ=1.25である。

かつて、ヘッジファンド時代に、正確を期すべく、FFTではWSTS902010年の月次データから周波数解析をすると、3.9年に周期の山があり、これが該当するだろう。

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経営の再現性と授業の再現性

 来年3月で理科大を去るので、1月の講義が「最後の授業」になる。20072009年の非常勤講師時代の経験も経て、改良してきた。これまで8年間に多くの科目を担当あるいは新科目を開講してきた

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トランプ政権の側近カミロ氏の講演に日米関係を思う

去る土曜日のゼミに、藤末先生の紹介で、元トランプ政権での側近のカミロ氏に来ていただき、1時間のスピーチをしていただき、こちらからも、先方に関心がありそうなテーマにつき、三菱UFJ銀行からの企業派遣学生による半導体産業に対する金融支援、東芝学生による防衛産業構想についてプレゼンをし、フィードバックを貰った。カミロ氏は、少年時代、三沢で過ごし、親日的である。親切な英語でゆっくり話てくれ、ほぼ理解できたし、こちら側の下手な英語も理解してくれた。

 カミロ氏は、米国の政治情勢、選挙システム、データを用いた選挙運動、日米関係、トランプ氏の実態や故安部総理との友情などについて、興味深い話であった。

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エッジとクラウドと半導体

 AI半導体の進化が著しい。これまで、クラウド側、データセンタにあったAIチップが、PCやスマホの端末側に掲載される時代がやってきた。

 半導体をおおらかにメモリ(ストレージのNANDなど)、とプロセッサに分けると、データが小さいが、生で腐り易い場合と、大きいが加工、いわば「〆」「血抜き」された場合、また、通信回線とエッジAI半導体の処理スピードで下記のようになるだろう。

 

 かつて、スタンドアロンだった時代は、エッジ側にメモリもプロセッサもあった。しかし、通信回線が高速になれば、端末の負担を軽くして、メモリ機能もプロセッサ機能もクラウド側になる。

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予測と希望は別なのに

予測と希望は似て非なるものだ。予測は、主観的な面もあるが、あくまで客観的に将来がどうなりそうかを論じるものであり、明るい場合も暗い場合も、希望する場合もしない場合もある。希望は、明るいものであり、意志がある。日本では、これらが混同される。

 為替については、20225月から150円の円安を「予測」している。理由は金利差、貿易収支、日本の国力(人口と生産性からのGDP)などである。個人的には、円高の方が有難い。その方が生活は豊かで、輸入品を安く買え海外出張でも楽だからだ。しかし、そうした希望とは異なり円安になると考える。その場合、それをどう利用するか、が重要だと思う。

 台湾有事は、もちろん、希望ではない。予測とも言えないがシナリオの中で無視するわけにはいかないし、そうであれば、対応対策を練らなければならない。それが、TSMC誘致であり、ラピダス設立である。

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後継者はリレーか駅伝か

カリスマ名経営者でも後継者選びや、そのタイミングを誤る場合は多い。ジョブス、ゲイツ、グローブ、モリス・チャンも成功したとは言えない。日本では、ニデック永守氏のケースが思い浮かぶ。誰を後継にするかは、古来より世の東西を問わず国家元首や大名から個人事業でも大きな問題であり、老舗中小企業では永遠の課題だ。タイミングも難しい。経営が悪い状態では、無責任に引退する訳はいかず、良い状態で安心して花道を飾ろうとして、想いに反して、ズルズル引きずる場合も多い。

 

この課題については、古典も含め無数の先行研究があるが、その中で、「リレー」というキーワードで論じているのがNRI松田氏であり、タイミングは9年が最適としたが、これは経営重心論での固有周期に近い結果である。「経営リレー」論(前編)経営陣の「祟たたるメカニズム」「託すメカニズム」 (nri.com)

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ミニマルファブの現状

生産技術の方向性には、巨大化によるコストダウン、逆に、ミニチュア化によるコストダウン、そして時間軸の中で、短TAT、カンバン、枚葉、整流化などの方向性だろう。巨大化は、半導体ウェハーや液晶ガラスサイズがあるが、サイズに限界がある。固定費は大きいが、量産で下がる。これと並行して、行われるのが、短TATなどだが、技術の発展で工程数は増える。これと逆なのが、半導体そのもののコストダウンでは有効な微細化などミニチュア化だが、工場そのものでは、あまり上手くいっていない。

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迂回型イノベーションと最近技術

研究イノベーション学会において、TFT液晶、NANDフラッシュ、Li電池など、デバイス中心だが、迂回型イノベーションモデルを提唱した。迂回型イノベーションモデルは、当初、巨大市場でのライバル技術の置換えを狙うが、難しく、回避して、別の市場で離陸、その後、様々な技術の貢献で、新市場にも巡りあり、ぐるっと一周2030年かかるが、当初狙っていた市場を取り込み初志貫徹するというものだ。OLEDや炭素繊維なども、このパターンだ。AIも広い意味で近いかもしれない。一周が何年かは分野によるだろうが、どのタイミングで最初の市場から転戦し、やり方を変え、良いニッチ市場を見つけるかが鍵だ。デバイスのケースだといずれも、発明から5年程度で転戦、10年では良い市場を見つけて、一定事業基盤(開発を継続できる)の地位を得ている。そうでないと、理解あったトップも変わり、累積赤字も膨大になるし、開発チームも抜けていき、チームリーダーも老いる。

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水面下の東芝

非上場化の東芝が中計を発表した。決算数字もあるが、セグメント開示はない。当然ながら、投資家やアナリストでなく、マスコミ向けなので、素人向けのレベルの低い内容になっており、厳しい質問が浴びせられたであろう。非上場化は煩いアナリストとの無駄なコミュニケーションコストは減るが弛んでしまわないか不安だ。未達背景を安易な成長のための先行投資、固定費増と結論づけているが、島田DX戦略の総括は無い。中身的に欠けているのは、①28年以降の姿、②セグメント別の想定資本コストがなく、ROSだけで考えている、③ベンチマーク比較、④FCFも運転資本やCCC想定、⑤R&D戦略、⑥為替前提、等である。

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液晶産業の終活コスト

0年代世界を席巻した液晶産業が国内で終焉が近づいてきたようだ。シャープは1500億円の最終赤字、ディスプレイのみで832億円の営業赤字、ディスプレイ関係の減損などが1200億円近い。堺のTV向けは停止、中小型も縮小、OLEDラインは閉鎖。最終赤字が2年連続1000億円超は、同じく液晶パネルの赤字で経営危機に陥った2015年度以来8年ぶり。SDPを取り込んだのが痛かった。22年度の有報では堺は約260億円の建屋が資産計上、半導体後工程やデータ・センタ向け転換が難しければ、700人の人員も含め、更に損失が広がる可能性があろう。ジャパンディスプレイは2023年度も赤字、創業以来、10年連続の連結最終赤字を計上した。日経では「かつて半導体と並び日本の電機業界をけん引した液晶産業が終焉」と評している。日の丸液晶終焉へ シャープ大型撤退、JDI10期連続赤字 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

様々な指摘があるが、液晶での苦戦は日本だけでなく台湾も厳しい。韓国も楽ではない。中国の一人勝ちであり、OLEDとの戦いにも負けた。

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台湾の工業高校の高レベルと大学制度~普通大と科技大

長年、台湾ハイテク産業を研究調査してきたが、教育制度については、恥ずかしながら、最近の動向については不十分だった。最初に台湾を訪問した95年前に、文献で調べ(当時はネットもなく大変だった)、、ITRIを訪問する際に、教育制度についてヒヤリングは行い、また市内の書店で入試問題や受験参考書を買い、数学や理科のレベルの高さに感心はしていた。ただ、その後、フォローしていなかった。

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人口減少対策としての半導体/DC誘致の効果

経産省の半導体デジタル政策、とりわけ、TSMC熊本誘致やラピダス千歳工場などの経済効果は、既に地元のシンクタンクなどから大きく報道されている。また実際、地価アップも含め顕在化している。

人口減少に悩む地方自治体にとっては、半導体工場やDC建設が、どのくらい影響があるか、について、半導体の乗数効果と人口減少予測の視点から考察した。

人口戦略会議20241月に公表の「人口ビジョン2100」から日経が4月に消滅可能性自治体を報道した。地図で見る「消滅可能性自治体」 2050年、あなたのまちは? 全国1729自治体・地域 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 報告書では、全国1729自治体地域を4分類、A「自立持続可能性自治体」、B「ブラックホール型自治体」という出生率が低く他地域からの人口流入に依存するもの、C「消滅可能性自治体」、D「その他の自治体」である。A65Bは都市部など25C744D895である。

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SUMCOの1Q決算説明会~生成AI市場とGAA向けウェハー

 SUMCOの説明会が59日にあり参加した。市況や技術動向は橋本会長、今回は生成AI市場についての分析があり、また、GAA向けウェハーについて興味深い発言があった。

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ラピダスの検証~ビジネスモデルと収益モデルの仮説と現状比較

この数年、地政学の変化、経産省も人財を得て、半導体にはフォローの風が吹いていた。そうした中で、ラピダス経営陣も、これに、まさに迅速、適切に対応した。少なくとも、この2年余りの経営については、高く評価すべきであろう。

 他方、世界情勢の混乱、「もしトラ」のリスク、自民党の混乱、財務面でのアゲインストの風、今後、数年は厳しい情勢も覚悟しなければならない。その中で、ラピダスは社会実装に向けて、正念場だ。

 リスクはGAA微細化という技術的な面と、収益化のビジネスの面があり、前者は、各社苦闘しており、過去の実績からは、TSMCが断トツにせよ、まだ分からないし、十分な機会がある。後者は、短TATやチップレット化を活かせば、十分な機会がある。

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R&Dモデルとビジネスモデルとストークス4象限

イノベーションは、R&Dだけでなくビジネスモデルも考えながら進める必要がある。そこで、イノベーションモデルを整理して図示し、ストークスの4象限との関係も考察した。

 

 R&Dでは、基礎研究、応用研究、そして開発となるが、次第に、ビジネス要素が増えてくる。ステージゲートでも事業化を意識した項目が増える。目標KPIも当初は、物理化学単位である電子移動度やビット速度などが多いが、次第に、金銭やTATなどの単位が増える。その意味では、純粋なR&Dの軸とビジネスの軸をとると分かり易い。

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因果、推測、予測、そして、真実

アナリスト時代は、公開情報から会社の成長性や競争力の真実を探り、そこから将来を予想するという作業の繰り返しであった。推定された会社の実力から予想される業績予想の当否により、自身のロジックや推測ルールを検証、修正し改善を加えてきた。その一例が、経営重心論などである。

 さて、今は、教授という立場で、またNEDOの審査委員などの立場で、マル秘情報や、場合によっては、経営陣も知らないか意識していない情報に接する。あるいは、過去の真実も確認でき、ある意味、昔の答え合わせができる、というわけだ。

 過去については、真実はあっても、当事者がいなくなり、あるいは複数いると、事実の解釈や因果関係が難しい。現在については、当事者は既知であっても、関係者が多いと、解釈は異なり、全体像は不明になったりする。こうした過去の事実から、法則性や普遍的事実などの「ロジック」を見出し、そこから、未来を予想する。

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Z世代と転職問題と多様性

 世界中でZ世代の行動が注目されているようだ。Z世代は、90年代半ばから2010年代前半に生まれた世代を指し、今なら10歳から20歳代後半だ。インターネットが普及した環境で育ったため、SNS等で情報を収集し、発信力も高く、環境に対する意識も高く、多様性や人権を重視、さらに、社会貢献や働きがい、起業志向もあるようだ。Z世代とは 環境や人権を重視 きょうのことば - 日本経済新聞 (nikkei.com)

こうしたキーワードを並べると素晴らしい世代といえる。加えて、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視、仕事にイミを見出したい傾向もある。また、2020年からコロナ禍環境でZOOMを使ったため、オンラインによるコミュニケーションを当然と認識しているだろう。SNS発信やスマホのリテラシー以外は、社会貢献、仕事でのイミ、多様性、起業志向、タイパ、等は、同感かつ同様である。この世代は、ちょうど、我々の子供の世代であり、我々の価値観や文化が伝搬した面もあるのではないか。

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生成系AIと営業対決

これまで、長年、営業一筋30有余年のゼミ学生が、グラデュエーションペーパーのテーマに、生成系AIと営業に関するものを選んで、昨年から研究を続けている。生成系AIと人間の仕事の関係については、既に数多くの先行研究があり、営業に関連しては、マーケティング関連はあるが、対面営業などについての実証研究はまだ多くない。そこで、ゼミOBの阿部氏が社長のPXストア(メルコHDのグループ会社)の協力で、パルコ錦糸町内の店舗で54日に実験を行った。PXストアは輸入お菓子などを扱い、阿部社長がグラデュエーションペーパーにて、独自コンセプトである新4P(PeerprettyPridePF)を打ち出した魅力的な品揃えと陳列になっている。会社概要 株式会社PXストア (px-store.com)

 PCにある生成系AI(Copilot)と人間とで、どちらが、接客対応がいいかを、比較するものだ。具体的には、顧客が、店のお勧め商品を尋ねて対応するもので、私自身が実験台になった。

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生成系AIと東大入試~苦手科目は数学と物理、古文

 日経新聞が生成系AIに関する特集「AI、東大入試に挑む」を連載、かつての受験生として、興味深く読んだ。数学が1点では…ChatGPT、英語8割超も「東大不合格」 AI、東大入試に挑む - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 共通テストでは、チャットGPT7割近くより、特に英語、理科社会が高得点、数学は低い。二次試験の過去問では指示文の強化で、平均得点率が上昇したが、本番では、合格レベルに遠い。特に、数学が厳しかったが、英語はかなりの高得点。国語は現代文と漢文はいいが、古文が苦手、理系では、物理が厳しく、世界史などは高得点である。

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台湾が失望しないように

TSMCが九州に進出、この機会に、日本と台湾の友好関係が深まっている。素晴らしいことだ。台湾は数少ない親日国であり、台湾のダムを建設した八田與一などへの尊敬や、かつての半導体立国の日本へのイメージもあるだろう。

 

 しかし、TSMCには、多くの失望が生まれているようだ。日本人のスピード感の無さ、リスクを取らない、英語ができない、等々は、台湾だけでなく、日本側の自覚も含めた共通認識だろうが、それだけでなく、勤勉や意欲、仕事ができないことが、明らかになりつつある。日本人は何でこんなに仕事をしない、できないのか、と怒りが起きているらしい。住まいや教育レベルも不満らしい。

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新たなシンクタンク構想~MOT社会実装の場

これまで、多くの政策は必ずしも、社会実装に成功してきたとは言えないが、それは、PDCAPDの主体が異なることに原因があるのではないか。政治家や官僚やアカデミアの着想(いわば、論文でいえば、問)から、それを有識者会議やアンケート調査で、いわば検証し、それを民間にやらせ、実証する、というパターンが多い。現場をしらない5W2Hの境界条件を軽視するアカデミアの思い付きは、実装させられる民間側から見れば、なかなか難しし、やらされ仕事ではモチベーションも下がる。アイデアは、むしろ民間側から出る場合も多く、PDCAの主体が一致している方が5W2Hの境界条件がわかり、修正も容易だ。何よりモチベーションが高くなる。

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上場の意味とエンゲージメント~透明性と即時性、手応えとヤリガイ

これまで、上場のメリットとして、資金調達、信用が高まる、知名度もあがり、人材採用が容易、などが挙げられきた。最近、アナリスト時代に担当し、フォローしてきた、東芝、日立国際電気、日本無線、新日本無線が非上場化する中で、これまで、アカデミアの論文などではあまり言及されてこなかった上場のメリットとして、エンゲージメント、モラルが大きいに気が付いた。上場会社のエンゲージメントというと、ストックオプションなど金銭面中心に語られてきたが、そうではない。

 

 大企業であれ、中堅中小であれ、上場することは、まさに公の存在として、マスコミやアナリスト投資家との対話が必要になる。経営の良し悪しや、社員が発明した新技術新製品の売行きで、株価も反応する。そこに、緊張感と、やりがいも生まれる。これまで、そうしたマスコミや投資家などとの対話は、コミュニケーションコスト増加として、マイナス面として語られることが多かったが、逆ではないか。

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TSMCに学ぶ~その文化とビジネスモデル、経営手法

TSMCは、いまや、日本でも大変有名になったが、実は、半導体産業での存在感だけでなく、その経営スタイルや文化も大変参考になるだろう。

 最初に、台湾のTSMCを訪問したのは95年頃である。既にPC関連でEMSは成長し、新竹科学技術工業団地が整備され、DRAMで、東芝や三菱電機、沖電気などと提携が始まり、LCDも離陸しつつあった。そこで「台湾シリコンバレー紀行」と題したレポートを執筆した。

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ニデック決算~永守節と冷却事業とPF化

ニデックの決算説明会をオンラインで視聴した。トップが再び交代、ソニー出身で常務として、スマホ事業のリストラを担当した64歳の岸田氏が社長となる新体制となったが、相変わらずの永守節だった。79歳の永守氏は、会長兼CEOから代表取締役グローバルグループ代表に就いたが、永守氏は今期の事業計画の策定につき、新しい体制で決め、自身は参画していないとコメントした。これまでより、やや永守氏の発言ウェイトは減ったかもしれないが、雰囲気は変わらない。ただ、やや話し方がスローになったかもしれない。

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