2015年3月27日 パナソニックの事業説明会で垣間見た「日本の電機業界と証券市場」の期待と課題

2015327日 パナソニックの事業説明会で垣間見た「日本の電機業界と証券市場」の期待と課題

 

2015326日 19~1950分、汐留の本社にて、会社主催の説明会があり、津賀社長、河井CFOより説明があった。2014年度は、CV2015を前倒しで達成、課題7事業にも黒字化など目途がつき計画は完遂され、2015年度の営業利益4300億円、売上の2016年度から2018年度10兆円に向けて、家電、住宅、車載、B2Bソリューション、デバイスの5セグメントと、日本、欧米、新興国等の海外戦略地域という3地域とのマトリックスで、M&Aや先行投資も含め業績や戦略の方向性が示された。

 詳細は、Sell Sideアナリストからのレポートに譲るとして、違った視点で3点指摘したい。

 

その1.

 当社は事業ドメインを、5セグメント×3地域のマトリックスで捉え、ここに40もの事業部からなるカンパニーを配置して損益管理している。また、私自身が質問したが、CCM(キャピタルコストマネジメント、EVAに近い概念)43事業部を管理する。これは、外部にコミットする営業利益率とは異なり内部管理のためのものである。これまで、総合電機各社は、ポートフォリオ見直しに関し、同様のアプローチをとったが、それだけでは不十分であり、結果的には、経営重心的なアプローチが必要であった。5セグメントの分け方は、本質的なものであり、違和感はないが、定量評価として経営重心的なアプローチも取り入れれば、よいだろう。これも私が質問したが、5セグメントの中では、デバイスの位置づけが課題であり、「過去の量を追う設備投資はしない」などの回答のニュアンスからは、おそらく、次第に他のセグメントに取り込むか、外へ出すのだろうが、それでも、なお水平分業的に拡大するものがあるかどうかは今後注視すべきだろう。

 

その2.

 説明会は全体で50分、会社からの説明は簡潔であり、要を得ているが、一部、報道もあり重要な施策であるCCMや全社調達でコスト削減、などについては、プレゼン資料に織込んで欲しかった(質問には答えて頂いたので満足だが)。説明が20分弱、質問が30分くらいであり、そのバランスも良かった。しかし、10人弱、一人1-2問なので15程度の質問の中身が議論があるところだろう。次の表に、質問の中身を時間軸と、数字確認かディスカッションか、に分けてまとめたが、中期の説明会であるのも関わらず、相変わらず、4月に始まる来期の業績数字に関するものが半分以上である。逆に中期の経営についての議論は私とあと1名であった。

 中長期投資、投資家と企業の対話、などが喧伝され、また経営のトップが自ら中期を語る場で、来期の為替前提や感応度の数字確認というのは勿体ない気がする。本来、こういう公式な開かれた場でこそ、中期の経営の考え方について、侃々諤々の議論をすべきだろう。現場のアナリストの関心(それは投資家の関心かもしれないが)と、中長期投資・スチュワードシップコードなどが重要だとする議論には、なお大きな隔たりがあると感じた。

 

その3.

 アナリストが企業を分析する際に、固定費や為替感応度などについては十分に議論がなされているし、IRも充実している。ものづくり、についても、工場見学などは盛んである。しかし、研究開発費や、変動費の中で重要な外部調達については、まだまだだと考えている。

  企業を中長期で評価し、企業の「足腰の強さ」を評価するには、研究開発体制や、調達の仕組み、事業ポートフォリオの管理の仕組みなどが重要であり、IRを通じて可能な範囲でアッピールされてもいいだろう。下表は、私の印象に過ぎないが、会社側が、そうした要素をIRや報道で、何時ごろ説明し始めたか、である。実際には、内部で充実していることも多いだろう。ただ、過去の経験では、当然、一社からそういう説明があり、同業他社比較をすべく、他社に取材にいっても、説明がない場合は、相対的に遅れているか意識が低い場合が多かった。

 

 そういう意味では、下表は、日本の電機メーカーが、何時頃、どういう要素を重視しているか、話題になっているか、の参考になろう。また、一時、先行していても、また遅れていることがあることには注意が必要である。

 


 今回のパナソニックの説明会では、研究開発体制については、あまり説明がなかったが、先日の日立に始まり、東芝も体制を変えるという報道があった。グローバル化、オープンイノベーション、ノンリニアモデル、という中で、成長性でも、先行投資の管理という意味でも、今後、注目されてこよう。