2015年4月2日 注目されるシャープの行方 その4
3月23日のブログで、ホンハイCEOのテリー・ゴー氏が、東洋経済の記事で出資を伴う経営支援を提案する意向を明らかにし、「早ければ、3月中にもシャープやメインバンクに具体的な条件を伝える」としたが、その後の報道で、3月27日に期限を迎えた株価550円で出資するという契約が延期された以外、状況は不明である。
こうした状況を踏まえ、ケースAからEを再考してみると、ケースBのJDIへの統合は可能性が薄まり、あるとすると、ホンハイとの連携が高まるかもしれない。また東洋経済の記事の中で、日本電産やパナソニックの名前が出ているが、これがシャープの件と関係があるかどうか不明だが、日本電産は、車載事業でクルマ用の液晶パネルや部品デバイスでシャープの技術に関心があるかもしれないし(その場合、片山CTOの存在はどう働くのかプラスもマイナスもあり見えづらい)、パナソニックには、改善の目途がついたが課題であった液晶のG8工場がある。
シャープ自身も政府なども、シャープの液晶部門ないしは、全体がホンハイ傘下になるのは抵抗があったとしても、これに、パナソニック等日本企業が一時的部分的に関係すれば、安心感が出てくるかもしれない。そうすると、シャープが生き残るためには、現状でありうべきシナリオは以下であると考える(これまでのケースAからEと区別するため、F~とする)
ケースF:液晶パネル部門(天理、三重、亀山、堺も含め)を、パナソニック姫路のG8ラインと共に、ホンハイ(ホンハイ傘下にはチメイ-イノラックスがある)とのJVに移す。いわば、堺に似たスキームだが、JVにはシャープ、ホンハイ、パナソニック等を株主として、ここにJDIやLGに対抗できる勢力を結集するわけである。シャープとてりーごー氏が大手株主であるSDP(堺工場)もここの傘下とする。そうすれば、この液晶パネル会社は、G4からG10まで、アモルファス、LTPS、IGZO、またIPS技術もある、幅広い技術を持ち、アップルのiPhoneはもちろん、iPAD、TV、車載向け市場にも対応できる。アップルとしても、「当確」のJDI、LGに続く3番目のサプライヤーとして安心ができる勢力が誕生することになる。この液晶連合JVは、そのまま将来に上場を目指してもいいし、様子を見ながら、株の保有比率を変えていき、どこかに集約もできる。ややリスクの先送り的な面もあるが、この場合は、大きな減損も避けられるし、技術陣の漏出も避けられるであろう。
非液晶部門は、セット中心に、リスクの小さい事業を継続する。この場合、TVをどうするかが鍵だが、国内中心に残し、海外向けは縮小するか、パナソニックやホンハイに売却するのもありうるだろう。国内TVが残れば、「液晶のシャープ」としてのブランドも残る。
このケースでは、売上規模は、現在の3兆円規模から2兆円以下にはなるが、500億円程度の安定利益を出せ、時間をかけて体力をつけていけばいいであろう。
ケースG:いわば、ケースFのバリエーションの一部だが、液晶パネルのうち、非アップルが多い、あるいは液晶応用的、垂直統合的な中小型の天理や三重工場の部分はシャープに残す。また堺の大型はそのままとする、というものである。この場合の液晶連合は、アップル中心となる。あとは同様であるが、ある程度、売上も2.5兆円くらいを維持でき、液晶の技術も温存できる。
ホンハイなど業界の中での話し合いがなされ、シャープ生き残りに向け、進展があることを期待したい。
なお、皆さんは御存知かもしれないが、この2月に日経BP社より「日本のM&A」服部暢達著が出されているが、この527pから534pに、ホンハイとシャープの事例がのっており参考になる。