4月4日読売新聞報道でシャープの液晶部門の分社、さらに4月5日日経報道で液晶部門分社に産業革新機構が1000億円出資に向けて交渉開始とされている。またシャープ本体はメインバンク2行が2000億円を投入する模様。真偽は不明だが週明けに正式な発表が出る可能性があろう。とりあえず当面、最悪の事態を避けられそうで喜ばしい。
液晶部門を分社し、他から出資を受け入れるという方策は、先日のブログで示したケースF、Gに近い。しばらく様子を見て、上場あるいは出資元などと合併というのも、同じようなストーリである。ただ、ここでは、ホンハイや、他の電機精密メーカーなどが出資する可能性を考えていたし、特にパナソニックは出資受け入れの代わりに姫路G8ラインも一緒にすることを想定していた。また、堺についてはケースFでは一緒にする、ケースGでは別にするというものであった。
産業革新機構は、筆者もケースFやGにおいて有力な出資候補ではあり、経産省も想定しそうだ(「強化法」を適用する)とは考えていたが、既にJDIの36%の大株主であり、液晶市況のリスクを大きく受ける可能性がある上、JDIとは利益相反の可能性、あるいは実質的に両社を革新機構が一体運営し、将来、合併となる国内で独占企業になるので独占禁止法抵触(「強化法」で適用除外とする?)も、ありえるので除外していた。もちろんこれまでにも記したように、シャープが破綻して優秀な技術者が出たり韓国台湾中国に買収されると困るのはJDIなので中期的には、そういうマイナスリスクを減らしたとはいえる。
利害相反、独占禁止法以外で重要な課題は多い。
まず、アップルの出方である。アップルは大きなサプライヤー2社が一緒になる方向性を嫌がるかも(2/3のシェアになる)しれず、その場合にはシャープが液晶での3000億円の売り上げを失い、また、亀1に保有する製造設備を買い取れというかもしれない。
次に、ホンハイである。CEOが個人で堺に出資している他、株主でもあり、また、延期となった550円でのシャープ株の買い取りを巡る話もあるし、これまた、堺を買い取れ、と要求してくる可能性もあろう。その場合には、液晶新会社のスキームが変わろう。
さらに、もちろん資産の配分の問題もある。従業員や、有利子負債の配分や、共通の資産の配分等は議論が多い。また、液晶と同等の課題であるソーラーや、内外拠点の統廃合などの処理も残されている。この2年で出資してくれたいろいろな内外の会社との話し合いもある。サムスンはじめ海外の会社がカギであろう。
液晶新会社は、これまでのルネサス、JDIなどの例を見ても、有利子負債は少なめ、リスクが大きい市況品が中心となるので株主資本は厚めにすべきだろうし、50%超えが不可欠だろう。
逆にシャープ本体は、リスクが小さく国内中心になるので、株主資本は流石に10%前後ではいけないが20%くらいでもいいかもしれないし、その分、有利子負債は大目でも耐えられよう。
まだ決まっていない重要なポイントは、①シャープの連結対象か持分対象か、②報道のように革新機構が過半をとるか、③他の株主を入れるか、④シャープ以外にパナソニック姫路なども入れるか、⑤トップをどうするか、であろう。
シャープは主導権を取りたいし、減損などのリスクを先送りしたい面もある一方で、連結対象にしたくないかもしれない。革新機構は主導権をとりたいであろう。
トップは、液晶会社には、革新機構からと、外部から同様の案件で実績のあるトップを受け入れ(その場合、母体の会社からも出資する可能性もあろう)、あるいは、現在の液晶トップの方志氏などが有力で、代表取締役二人体制で、会長と社長となるだろう。
液晶を外したシャープ本体は、現トップは引責し、女性社長の可能性もあろう。本体は、あとソーラーの部分をリストラすれば、売上2兆円以下、数100億の営業利益がコンスタントに出る、かなりローリスクの会社となる。
報道内容の数字をヒントに分析すると、以下のようであろう。
液晶新会社は、売上1兆円、ただし、堺は不明、アップルが出ていく場合は、5000億円。報道の液晶関連資産3000億円で、これを現物出資して、1000億円の産業革新機構ノ出資が50%ということは、株主資本が2000億円だから、液晶関連資産は2000億円減損ということになる。これは以前のブログの推定500~2000億円の特損が出るという推定から保守的であろう。
売上1兆円なら、在庫仕掛が2カ月分とすると2000億円程度、売掛債権と買入債務がバランスするとすると、総資産5000億円、株主資本2000億円前後、有利子負債2000億円前後くらいのイメージであろうか。この辺りは液晶のモジュールあたりをどこで持つか、堺をどうするか、でかなり違う。
アップルが出て、堺も外れ、売上5000億円の場合は、かなり在庫仕掛負担が減り、総資産3500億円、株主資本2000億円、有利子負債2000億円と、JDIよりローリスク、ローリターンとなる。ただ、既に天理や三重は老朽化、亀山も古くなった。薄板化や十分な微細化もいる。今後、車載や中国スマホ向けには設備投資や先行投資も不可欠であり、総資産5000億円くらいには、なっていこう。その段階で、JDIと一緒にするか一部の部門を再編整理もあろう。
シャープ本体は、売上2兆円に減るが、有利子負債は1兆円から8000億円くらいに減ることになる。総資産も2兆円から1.5兆円になる。株主資本は3000億円で十分、2000億円が目途であろう。現在の株主資本は2500億円だが、赤字1000~2000億円、液晶の現物出資分1000億円を引き、銀行の注入2000億円で1500億円であり、だいたい辻褄はあるが、これまでも指摘しているように、ソーラーと海外販社在庫や内外拠点の統廃合が不明である。
現状での報道をベースにした状況は次図である
アップルやホンハイ、サムスンなどとの話し合い次第では、ケースFやGも想定しておく必要があろう。たまたま、工場は関西が多く、関西台湾連合としてみた。資金力があり、多少シナジーもあり、トップの決断力がある会社として、京セラ、日本電産をあげているが、全くの「妄想」であり、両社ともM&Aで多くの成功実績があり、かなり厳しいDDをするはずであり、これに関心を示すかどうかは全くの不明である。