2015年4月23日 日本電産の説明会の注目点と分析
先ほど10時~11時半 サンケイビル4Fにて、日本電産の説明会があった、ほぼ満員、会社側出席は永守CEOの他、佐藤、吉松、永安の4氏でいつもと同様。今回は2020年に向けての中計もあり、CEOの説明が通常より長めの40分であった、質疑はいつもと同様だが10人弱(うち筆者と投資家以外はセルサイド、15問程度)であり、やや中期の質問が増えてきたのは喜ばしい。
説明
2015年度の計画は、通常通りだが、CB転換が進み株主資本が55%となった。NPは900億円予想だが、大台の1000億円が射程圏である。また、車載家電等の売上が精密小型を上回り、四半期営業利益も100億円を超えた。FCFはやや悪化で在庫増が要因だが誤差の範囲。設備投資は720億円と多いが2016年竣工の生産技術研究所等も含め先行投資をする。
2020年度に向けたVISION2020が示され、売上2兆円、OPM15%以上ゆえ3000億円、ROE18%。M&Aも車載中心に含まれるが、セグメント別には精密小型4000~6000億円、営業利益1200億円程度、車載7000~1兆円、営業利益1200億円程度、家電商業産業4000~6000億円、営業利益600億円程度、その他2000~3000億円、営業利益400億円程度を目指す。このためには、日本からコントロールは難しいので、M&Aも含め、地域に任せグローバル5極体制とする。また、財務規律が重要である。2020年に向け売上1兆円増加だがM&Aが5000億円、自律成長が5000億円と半分づつ。500億規模の会社なら2年毎に買うことになり、PMI管理が鍵となる。これまでは、赤字会社の再生もあったが、今後は収益性のいい会社を多少割高でも必要であれば買う。値段交渉はせず相性や製品シナジー重視。
精密小型は、HDD台数は2013年の5.5億台から2020年に4.5億台と減少見込みだが、データセンター向けなどハイエンドが増え、単価は5ドルを超え上昇基調であり、寡占化効果もあり、収益性は改善見込む。その他の小型モータは待ち伏せ丸ごと戦略で単価4ドルを40ドルにしたり、振動モータなど新規を期待。
車載家電商業産業は、現在はOPM8%だが、増収で固定費負担が増える上、変動比率を内製化や資材調達本部によるコストダウンで下げ、10%以上に引き上げる。
2030年の10兆円に向けては、モーター専業から車載、さらに総合電機へと変態していくが、研究開発、モノづくり、グローバル人材などのインフラが重要である。研究開発では、既に新川崎に研究所を設立、モノづくりでは、グローバル2016年竣工の生産研、人材では2016年に大学校を設立、幹部社員を養成する。
質疑
圧力センサと2030年に向けた戦略が私の質問である。話題別に示す。
M&Aについて2件あったが、上記に記した以外では、車載関連については中身の話を避けたが、あと関心がある分野として通信とした。
振動モータについて、当初は簡単な振動モータ、次いでスピーカーメーカーによる振動から、進化して高度なものになったので、参入し、キャパもコパルのデジカメで空いた工場を使いフルで多忙。次期iPhone7で検討と噂があるフォースタッチに関して圧力センサがコパルで手掛けているが技術があることは確認された。
ADASが前回の1500万台から2000万台に上方修正されたが、まだ保守的で3500から4000万ではないかとの見方については、5000万台という自動車メーカーの声もあるようだ。
経営体制、2020年には集団指導体制かとの問いには、少なくとも2020年の時点ではCEOをやっており、現在と不変であることが強く強調された。
2030年には、IoTや新しい分野をするが、総合電機メーカーなら収益性が低くなるのでは、については明確に否定し、赤字や採算の悪いものはしないことで収益性を維持し、これまでの日本の総合電機メーカーと違う経営を目指す。
また、その取り組みは片山CTOが中心に組織横断で取り組み、既に、世界トップのインターネット会社向け物流AGV、液晶工場の後工程など受注が入っているようだ。
分析
今回の注目点は、以下である。
第一に、2020年の中計、2030年の長期計画が示され、第一段階として永守CEOの元、2020年までにグローバル5極体制や、研究開発、モノづくり、人材作りなどのインフラを構築し、会社の基礎を固めるのだろう。
M&Aも、①内容が車載から通信などに分野が変わり、②赤字会社をゆっくり再生から黒字会社を買って多少や少なくても時間を買う、③日本からだけでなく現地に任せる、というように変わっていく。2020年までが勝負である。
第二は、2段階でポートフォリオが変わることである。まず、モーター会社から車載が2020年まで、そして、IoTやスマートFAなどを手掛けるグローバル電機と変貌するのが2030年である。
2020年の2兆円、営業利益3000億円は、目標にはちょうどいい位であり、売上ではM&AやADASの市場成長からは十分に視野に入っていよう。営業利益率でも、すでに精密小型では25%は十分可能であり、車載も変動費の内製化や増収による固定費負担の減少でこれまた可能であろう。これに対し、家電商業産業の10%達成は、景況感とソリューションの中で受注採算が鍵であろう。その他は20%は高いようだが、製造装置などもあり市況次第だが変動が激しい。
2030年の10兆円は、これまで、確かに、創業以来、ほぼ12~13年毎に、売上が10倍と1桁づつ上がってきたので、その位のターゲットになるのは十分にわかるが、売上で3~5兆円は、これまでの延長線上にあるが、残りの5兆円は、日立、東芝、三菱電機、ファナック、安川電、オムロンといった領域になり、M&Aでは通信など、これまでと違う分野になり、会社も研究開発やモノづくり、人材のインフラ構築を急いでいるように、かなり変貌し、経営重心がシフトしてこよう。
売上げ10兆円の場合の営業利益については、明言は避けられたが、最低でも2020年の15%と同等の1.5兆円が視野に入っていよう。
これは現在の10兆円企業である日立やパナソニックを大きく上回る。この加算される売上げ5兆円の部分で最低でも5000億円(これまでのモータと車載で20%とすると売上5兆円で営業利益1兆円)、営業利益率が10%である。
この新たな領域は、FA関連や車載であり、三菱電機では産メカ、オムロンではIABやAECとなる。三菱電の産メカは10%が十分に可能な稼ぎ頭のコアであり、IABは15%、AECは8%から、確かに、ここにフォーカスすれば10%はおろか、日本電産ならば15%を目指すべきかもしれない。また、経営重心の考え方からいっても、中サイクル、中ボリュームの日本が一番得意な競争力を持つ領域である。
第三は、この新しい分野を担うのが新しく代表取締役になった片山CTOであり、これまでの「総合」家電メーカーでの経験、そのグローバルな人脈や、行動力が発揮されることであろう。氏の捲土重来に期待したい。