シャープでは、意図的か現場の暴走か不明だが、ここ数年は、「過剰在庫の積み増しによる短期利益の嵩上げ、その翌年は在庫処理評価を特損で落す」の繰り返しであると、指摘した。つまり、「期末が近付くと、計画達成のため、液晶パネル、特に亀山第二工場の稼働を無理に上げて、利益は上がるが、在庫もたまり、そして、その翌年は、その反動で業績が悪化、リストラ、また、その次は、新たな目標をたて、その達成のため、期末に向け在庫を積んで利益を上げる」である。そして、無駄な在庫を積んだ分、一時的に、利益は上がり、工場の減損は避けられるが、一番、大事なキャッシュはどんどん減り、いずれ資材も買えなくなる時がくるのである。http://www.circle-cross.com/2015/05/09/2015年5月8日-シャープにおける在庫の教訓/
まさに次表に示すように、債務超過を避けるところから逆算して、P/Lをつくり、そこから液晶の稼働を決めているかのようだ。
現在、パネルベースだけでも、1500億円の在庫があり、これを6月末か9月末までには、正常な1000億円まで下げる必要があるが、中身の大半は、もともと小米向けという説もあり、1億台分、ほぼ同社の年間のスマホ分に相当することになる。これを今、安く掃き、亀山など工場稼働を下げて対応しているようだが、大変だろう。
また、その在庫も、メーカーレベルがどこまでか、工場までか、シャープ系の販社までか、そこまでかが不明な場合もある。エクセルなど、系列ではないが、元役員が社外役員となっている場合は、どう考えるべきだろう。また、在庫処分といった場合、完全に物理的に、破棄し、無くせばいいが、残っている場合は、流通在庫となり、業界全体に悪さをすることになる。かつては、不良品的な在庫も含め、それを品質が低くても使える業界向けに改造し、新しい応用先を見つけ、そこが高採算となった実績もあるが、もはや、そういう方法は通用しにくい。また、仕掛の場合は、堺工場では、ガラスなど部材とトンネルで直結された一貫ラインであるため、ガラス等は、どちら側にあるのかわかりずらい。しかもシャープは3月決算、ガラスメーカーは12月決算であり、誤解を招き易い。
さて、東芝も、工事進行基準だけでなく、全事業が対象となり、半導体では、フラッシュメモリーは問題なく、ディスクリートとシステムLSIが対象、家電では、当初、日経新聞が家電全体、TVや白物、とういう報道があったが、白物は問題なく、TVやPCが中心というので、影響は、更に絞られつつある。システムLSIとディスリートでは、汎用的なCMOSセンサーやドライバの作り込みだろうか。TVやPCでは、EMSを使っており、実態が把握しにくい。
そこで、半導体の在庫問題で、かつてあった(東芝ではない)のが、加工前の生ウェハーと、加工済みのウェハーを誤魔化すというものである。会計監査などがはいり、在庫の棚卸評価を工場ですることもあろうが、流石にクリーンルームに入り、ポッドに入ったウェハーを一枚一枚チェックするのは大変だし、触れば塵がつき不良化だから、せいぜい目視での検査となるようだ。実際には、加工コストがのった完成品に近いウェハーを評価するとコストが高くなり、損失も大きくなるので、加工前の生ウェハーだとすれば、価格は10分の1となり影響が少なくなる。実際にそれを見抜くのは光を当てればよく、微細加工されると、光の回折の色で判断できる。
このように、短期の利益は、在庫の増減でどうにでも変わり、特に年度末でなければ、先行きの需要の見方で、その在庫が適正か、どうかは変わってくる。村田製作所やロームでは、決算説明会の利益増減分析で、必ず、在庫の動向が説明され、何故かしら弱気の見通しの背景を探ると、その期末の在庫水準が異常に低かったりする。それゆえ、半導体であれば、仕掛2ヶ月前後と製品在庫0.5~1カ月の3ヶ月を大きく超えると注意しなければいけないが、逆に3カ月を大きく下回る場合は、よほど慎重だと見ていいだろう。逆に、機会損失を指摘しないといけないかもしれない。京セラのアメーバ経営では、在庫は悪でその分の金利を支払わねばならないという教えであり、在庫管理は徹底している。
アナリスト出身で、ある会社の監査役を無報酬でされた大先輩によると、外からと内からで一番の違いは在庫だそうだ。期末には平常にするが、その途中の在庫変動は半端でないという。工場見学でも、その辺に注意しなければいけない。開示も、為替などは、気中平均レートと期末レートが併記されている場合もあるが、在庫も、期中平均もあれば、より把握しやすいだろう。