この日は、午前1件の情報交換、夕方1件の個別取材と夜1件の会食の間に、14時から指月電機、その後、ソニーIRデーに参加した。
14時~15時 指月電機の説明会
セルサイド時代は、存在も知らかった。運用してから、誰もカバーしていない優良企業を、四季報の電機関連を片っ端に訪問したり、説明会に行ける限り行ったが、その中で出会った会社である。独立系だが、やや三菱電機系(同社向けが約20%、資本も約20%)で、鉄道系など重電系や白物系のフィルムコンデンサが主力、そこから応用品を展開しており、コンデンサメーカーの電子部品の進化論のケースとして興味深い。部品メーカーではあるが重電メーカーのような社風である。なお社名は、創業者が出身地の萩の指月城からとったものであり、私は数カ月前に、休みを利用して萩を観光、指月城の城址も訪ね、思いをよせた。前職のCFOが愛社精神旺盛なIRに熱心であり、その影響でファンになった投資家も多い。説明会等で御土産に御菓子をくれることもある。
出会いは、この10年だが、九州はじめ幾つかの工場見学に参加、説明会も一時期は欠かさず参加、個別取材もしていたので累積INPUTは多いほうだろう。
これまで、説明会には、目利きに自信がありそうな大物FMが多く参加していた。特に、タワー投資顧問が10%以上保有で有名で、100億円FMとして話題となった清原氏が良く来ていた(今回は見当たらず)。なお、氏とは、NRI時代、アナリストとしてタイガーやソロスなどにNYでプレゼンに行った際に彼が担当セールスだった時以来の知り合いである。Yシャツは来ているがノータイ、いつもサンダルであるが、雰囲気が似ているのか、指月の社長に混同されたことがある(私は流石に説明会にサンダルでは行かない)。
説明会は、伊藤社長より、中計も含め詳細なものだった。現在の売上250億円程度、営業利益25億円を2018年度に売上280億円、営業利益30億円に上げる。海外でのインバータエアコンのフィルムコンデンサ化、クルマ向け、産業機器向けが牽引役である。ニチコン、ケミコンとの比較分析も面白いし、三菱電機の先行指標としても参考になる。
質疑は、アナリストからもあるが、むしろFMから鋭い質問が出るところが特徴であり、ある意味、後述のソニーのIRデーの若いアナリストの上滑りな質疑よりも、本来の目指すべき経営議論になっているような気がする。私自身は2年ぶり位だったので大した質問はできなかったが、クルマ向けが2018年に急増しているのが特需か継続性があるか、長年売上も利益も少ない情報機器をどうするか、秋田、岡山、九州という工場体制は円安の中、不変か、などであった。
二部市場の小ぶりな企業であるが、工場見学などIRも熱心であり、また説明会も大物のFMが質問するので、一つの企業を深く分析するには勉強になろう。
15時過ぎ~ソニーIRデー
ソニー初のIRデーである。14時から平井社長挨拶、ゲーム(14時~14時40分)を飛ばして、モバイル(By十時)、IP&S(by石塚)、HE&S(by高木)、デバイス(by鈴木)に参加した。ほぼ満席であり、前列に座れなかったので、質問は、前列に座ったセルサイドアナリストが中心であった。
既に、セルサイドから多くのレポートが出ているので、ここではあえて感想中心にとどめる。
デバイス以外は、基本、右肩下がりの見通しの中でのコストカットが中心であり、特に開発費を削減している。
モバイルは、切り売りの前のような状態であり、その前提なら、身綺麗にして御化粧してということだろう。しかし、これでは、技術者の流出は止まらず、見かけ上は黒字化していても、実態の企業価値は減り、製品スペックの下落が、ブランドのマイナスにもなり、買収側から見ても、魅力的ではなくなろう。また、仮に方針転換して、自社でやろうとしてももはや難しいだろう。
IP&Sは、競争力も価値もあるが、質問にもあったように、プロとコンシューマを同一でマネージし、またこの中にメディカルがあるのも違和感がある。画像という意味では、競争力のあるCMOSセンサーの応用先ということだろうが、ビジネスモデルの異なる、BtoBと、BtoCが同じカテゴリーである。しかも前者は2020年に向け4K8K対応や、医療など開発投資をして成長を目指すのであり、後者は苦戦のデジカメであるのは、センスを疑う。
TVを含むHE&Sでは、アセットは減損してこれからは在庫管理というのはメイクセンスだが、その目標となる水準、その方策が不透明であった。在庫という意味では、船便が多いだろうが、そのロジ管理や、パネルなどの調達をどう管理するか(EMS等に丸投げか?)。そもそも、今のソニーのTVでの付加価値は、開発、調達、製造、販売、ブランド、の中でどの位残っていて(開発と販売、ブランドくらい)、それを将来どうするのか、についても確認できなかった。また、ここに来て韓国勢が気合いを入れているOLED(Oxcideにして白色LEDの方)やカーブ型について、どうかについて聞きたかったが、誰も聞かなかった。HE&Sでは、興味深いのは、サウンドの方であり、粗利もいいようだが、そこの差異化は難しいようであった。
デバイスは、エレクトロニクスの中で勢いがあり、技術についても詳細に説明され、概ね感心したし、納得できるものであった。今後の設備投資が、ウェハー増加以外に、微細化や、マスク枚数の増加など、どの位あるか聞きたかったが聞けなかった。また、ダイナミックレンジを大きくし、リークを減らすのが、どの投資に関連するのかも確認できなかった。ウェハーの供給と需給、古い工場の使いまわし方も確認できなかった。また、今後もどんどん自前でいくのか、ある程度、リスクヘッジのためにファンドリを使うようなことはあるのか、全部日本でやるのか、なども聞けなかった。