2015年5月31日 リオンの説明会(5月29日)

去る529日に、アナリスト協会会議室で説明会が行われた。決算発表は既に428日に発表されており、同日、短信以外に業績要旨の資料がHPにアップされる。説明会では、プレゼン資料以外に、詳細なインベスターズガイドブック等が配布、社長、CFO、二つのセグメントのトップが臨席、プレゼンは業績説明をCFOが、見通しや戦略説明を社長が行い、質疑に適宜、事業部門のトップが答える形式である。なお、今回は、前回CFOだった清水氏が、社長に昇格し初めての説明会である。会場は、ほぼ満員だが、補聴器のトップメーカーだからというわけでもないが、シニアが多い。さらに、エレキ系、医療系、小型株系と、アナリストが異種混合であり、それぞれの切口が異なり面白い。また、アナ協での開催のため、アナリスト会員以外は入れない場合がある。今回もそうだったが、プレゼンがやや長いこと、会議室の時間の関係から、質問の時間が不足気味である。

東証二部が2000年、一部が2011年ということもあり、運用会社になって初めて付き合いが始まり、説明会も2回目、IR来社も運用会社時代1回だけであり、INPUT回数も少ないしまだ付き合いが浅く、十分に理解していないし、IR体制にしても評価できるまでに至っていない。ただ、肉親に耳が遠い老人がおり、また技術的にも補聴器には関心があったし、同社の二つ目のセグメントの微粒子計測は、手法は異なるが、大学および大学院時代に研究テーマであったので、これも関心があった。

当社は、国内で「リオネット」ブランドで知られる補聴器のトップメーカーであり、創業者が戦中に小林理学研究所という音と振動に研究所を設立したに遡り、そこがDNAとなっており、日本光電などと似ている。また、補聴器だけでなく、微粒子測定や環境測定部門を持つのもそういう経緯である。なお、20151月末頃、週間ポストの理工系漫画家、見ル野栄司氏によるマンガ「スゴ技カンパニー調査室」に解りやすく掲載され、IRの仙波氏も登場する。

補聴器は欧米では100年の歴史があるが日本は同社が嚆矢である。国内では長年70-80%のシェア、海外は再編を経て、シーメンス、フォナック、スターキーなど6大メーカーという体制だったが、15年前に日本に参入、リオンはシェアを下げ、現在は、リオン25%、シーメンス20%が大きく、後はオムロン、パナソニック等となっている。 

他方、リオンの海外進出は手がついていなかったが、台湾から中近東やアフリカ向けに安い補聴器を出している。

国内では薬事法があり、耳鼻科で診断をうけ専門店で、周波数や音量、安全性を調整して買うのが通常だが、メガネ店でも売られている。この他、正式には補聴器ではないが、安ものの補聴器(正式には集音器)がネットショップ等で売られている。

日本では難聴者1400万人に対し、精神的な抵抗感などからか、普及は200万人程度であり、4年程度の買換えとなっている。75歳位から使われるケースが多く、紛失や故障を除けば、1回、多くて2回程度の買換えであり、補聴器の年寄り臭いイメージを払しょくすれば、普及で、7倍、また、熟年層から使えれば、4回程度は買い変えられ、潜在性はある。また、両耳タイプは30%であり、片耳タイプが70%であるが、本来は両耳がよく、ここも潜在力がある。

問題は、価格でボリュームゾーンが15万円と高い、また専門店も1000程度しかなく、リオンも350店しかない。実際に、都内で調べたが、都心の有名デパートにもなく、メガネと比べれば、あまりに店の数が少ない。薬事法の建前はあるにせよ、メガネ店を使うか、流通網を工夫すべきだろう。店舗数拡大には、設備費、テナント代、検査要員などがネックだが、積極的に支援や人員の育成もすべきだろう。

コスト構造は、変動費は20%程度であり、かつ、その大半を、DSP、あとはマイクロホン、イヤホンからなる。国内工場でボリュームがすくなく、一人一人の耳の型の形状にあわせ、それぞれの音響テストの工程がコストが高いことも含め生産コストが高い。ボリュームゾーンの15万円を例にすると、DSP1万円、マイク1000円、イヤホン1000円、製造コスト3万円、粗利7万円、販管費開発費で6万円、営業利益1万円というように推定される。なお、DSPはオンセミコン、マイクは米ノールズ、イヤホンは内製もある。DSPは特殊なものとはいえ、1万円は高いように思う。なおマイクは独自のMEMS技術を使い量産間近であり、コスト低減が期待される。

こうした状況を鑑みるに、コスト高の問題は、DSPの調達や内製化、ファンドリー活用、MEMSマイク導入、などで、大幅に、下がろう。なお、3Dプリンタは2004年に導入、受注から納品まで3日を達成している。

また、ヘッドセットのような御洒落な補聴器を開発し、店舗戦略を変えれば、潜在ユーザーも大きく増えよう。そして好循環になっていく。研究所であるというDNAは理解できるが、専門店での純粋医療としての補聴器から、多くの店舗で求めやすく安く親しみやすく御洒落な補聴器を目指すべきだろう。

海外では、シーメンスが補聴器部門をファンドに売るなどの動きも出ており、これを韓国や中国、台湾勢、あるいは、医療部門を持つオムロンや、メガネの流通を持つHOYA等が買収して、一気に国内に参入する可能性がある。

また、将来は、アップルが、そのコネクタが薄化のネックになるヘッドセットをやめて、補聴器型にし、それで補聴器に参入する可能性もあろう。

高齢化社会を迎え、補聴器の潜在成長率は高いが、グローバルで業界再編が始まろうとしており、リオンの経営判断に注目される。

なお、説明会では、CFOが、業績について、補聴器が消費税反動で厳しかったが回復しつつあること、それ以外のセグメントは好調であることが示された。

社長からは、中計、2017年に売上200億円、営業利益30億円、ROE10%について説明があった。

質疑では、私が、MEMSマイクの課題、影響、3Dプリンタのコスト削減効果について確認、また、販売店戦略について、もっと、メガネ店を使うべきではないか、との意見があった。DSPでオンセミから高コストで購入、3Dプリンタの使い方、MEMSマイクの立ち上がり方など、やや不安である。デザイン、生産面、調達面、販売チャネル、などで、大きな改善余地、その結果、成長余地もあろう。再編の中で大手が入る前に準備が必要であり、多少は急ぐ必要があろう。