2015年6月5日 日新電機の初の説明会

201565日 10時半~12時まで、日新電機が会社主催で初の説明会を行った。出席者は小畑社長、石田専務、植野常務、子会社の日新イオン機器㈱の長井社長、等であり、小畑社長が業績概要と次期中計の策定方針について、次いで長井社長によりFPDイオン注入事業について、説明があり、その後、まとめて質疑、小畑社長、長井社長、必要に応じて植野常務が回答された。

質疑は、1/3が業績関連、2/3がイオン注入に関するものであった。初回にしては、質疑も活発であり、小畑社長はじめ会社側も丁寧に回答され、まずまずだろう、話題が多かった割にはプレゼンは簡潔で、質問時間も十分にあったことは良かった。次回以降にも、期待したい。特に、説明資料にあった「日新のDNA、ベンチャー精神、日々新たなり、異文化への寛容さと咀嚼力」と、トップの姿勢や雰囲気に違和感は少なかった。

会社側は、イオン注入関連の質問が多かったことに驚いているようだったが、最初に質問した私自身がFPD関連が多く、また全体の質問の半分程度をしめたせいもあり、それに多少、影響された面もあろうが、ホットな話題であり、かつ、時間を割いて長井社長によるFPD向けの話があったので当然だろう。長井社長の登場が無ければ、もう少し、バランスが取れたろうし、私自身も、他の質問をしただろう。昨年なら、ソーラー関連が多かっただろう。

なお、同社のIRは個別での対話を重視してきたが、今後は継続的に説明会を催すようだ。なお、半導体や液晶の調査をのぞくと、同社の継続フォローは運用時代からで10年だが、ほぼ毎四半期、個別訪問をしてきたので、数十回のInputであろう。

小畑社長の説明は、以下である。

まず、関連する主要市場について、2014年から2015年の動きはだが、斑模様だが全体としては堅調の模様、売上計上はタイミング次第だが受注は増加傾向。国内電力は投資抑制が効き低調だったが、修繕関係など一部回復、また、2015年下期から受注が急増、東西周波数変換はまだ先だが、東西電力流通を促進する変電所向けコンデンサ設備の「新信濃」、や「北海道本州」等のプロジェクトが計上され、2020年に向けては上昇基調だろう。

国内一般民需は、工場設備更新が拡大続き、スマート電力供給システム(SPSS)が、民需向けや水処理で、離陸する。海外は、アセアン好調、中国は競争は厳しいが超高圧送電は拡大。新エネルギーはパワコンがピークアウト。

ビーム真空はFPD向けが2014年末から受注が急増、高水準が続く見通し。半導体や電子線照射も伸びてくる。

 なお、同社のセグメントで、ライフサイクルエンジニアリングは、数年前に、新たに区分けされたが、電力、ビームも含めた全ての機器のメンテやサービスである。単なる機器販売ではなく、こうしたビジネスを重視したのは、先見性があり、収益性からも、受注サイクルによる業績への影響を最小限にする意味でも評価したい。

 2015年度の業績は、受注が1400億円と過去最高を更新、特に電力がそれまでの半期250億円前後から下期は400億円と急増、ビーム真空も高水準。タイミングによって、売上、営業利益はぶれるが、実態は強く、十分に達成可能であろう。ビジョン2015からは、売上で300億円、営業利益で15億円下ブレだが、震災による原発の影響で電力会社の投資水準が低いことや中国の影響だとした。

 次期中計のビジョン2020は、数値は呈示されず、策定方針のみであったが、市場環境は追い風であり、その中で、SPSS、新興国の電力インフラ、設備の保守点検修繕、クルマやモビリティ、医療や農業などを成長ドメインとするようだ。

長井 日新イオン機器社長の説明要旨は以下である。

 もともとは核融合プロジェクトでの成果のイオンビームから始まっており、技術力が高い。半導体、FPD以外に、コーティングや電子線照射もある。

半導体向けは73年から、累積納入は958(実稼動80%以上)FPD88年からだが133(実稼動90%以上)。拠点は、サービル拠点が、韓国、台湾、上海、米、シンガポールなどに拡大、工場は甲賀で、需要に答え、第一期の9000平米強から第二期5000平米に加え、中国揚州で3400平米を建設。なお甲賀工場のキャパは月産3台。

 半導体では、シリコンに加え、パワー系やがり砒素系もある。同社は中電流で、高電流タイプは、住友重機(前、住友イートンノバだったが、イートンノバが売却)、世界ではAMAT傘下となった旧バリアンがシェア大半を持つ。

 FPDでは、最近、スマホ向けで需要が強いLTPSで必須であり、アモファスの工場を転換するのに不可欠である。トップシェアを維持、4Gでは73%だったが5G83%、6Gでは100%と圧倒している。もう一社の三井造船は、シェア漸減で、6G以降は厳しそうだ。同社の分析によると、スマホ向けは、中国などで6GLTPS対応や、更にCMOS化マスク数増加もあり、2016年まではタイトな模様。

 

質疑では、LTPS関連が多かった。

私の質問は、次のようである。イオン注入関連で、①会社側はIGZOにはイオン注入を使わないと説明があったが、実際には二種類(SEL/シャープ、東工大/サムスン)あり、両方そうかと確認した。しかし、今後はCGSでも使っており可能性はあろう。②LTPSと分類されている中に実際には最終ではOLED向けがあるのではないか確認したが、サムスン5Gはそのようだった、LG6Gは違うようだ。③8G装置の可能性について、話はあるが現実はない、④これまでシャープには実績ないが亀山で可能性はないか確認したが、6G以降はありうる、⑤装置のサービスメンテはライフサイクルにあると思うがどの位か確認すると40億円くらい、⑥SiCや、がり砒素のイオン注入もシリコンと同様で優位を維持できるか聴くと今は受注はないが話がある、線種が違い6インチ以下だが同様の技術、⑦住友グループで大電流の旧イートンノバと合体連携すべきでは?については、それぞれ独立でやっており、今はない、であった。イオン注入以外でも幾つか質問したが、既に記した電力受注増加と電量系統東西連携の関係、中国製造2025が影響あるか、など。

私以外では、①海外動向、②業績数字の確認、③TELAMATと伍していけるか、④ソーラー動向、である。あと、FPD向けスパッタ装置開発の現状や、既に記したCMOS化とマスク枚数、注入機の影響など。

 

同社の歴史は1910年に日新工業社として創業以来、100年に近い。経営シナジーを求めて、住友電気工業の50.8%保有の子会社となったが、1927年当時から提携関係にあり、コンデンサの製造を担うなど関係は深かった。電力会社や民間工場向けのガス絶縁開閉装置や配電盤など受変電設備や、電力会社向けコンデンサなど調相設備が主力。制御システムや、半導体関連のイオンビーム装置にも展開している。

 ポートフォリオでは、売上の3/4を占める電力機器の中では、電力用コンデンサは国内で圧倒的なシェアを占め、「コンデンサの日新」と呼ばれている。一方、ガス絶縁開閉装置や配電盤などの受変電設備の技術開発においては、一貫して「コンパクト化」に取り組んでおり、変電所全体の省スペース化・省資源化を実現する機器として評価が高い。国内の電力会社や、工場だけでなく、海外、特に中国の電力インフラ投資拡大の中で、北京などの新工場で変圧器生産を拡大する。売上の1/4のビーム応用装置分野においては、半導体製造用イオン注入装置をはじめ、電子線照射装置、部品・金型・工具などに耐摩耗性に優れたコーティングを施す薄膜コーティング装置および薄膜コーティングサービスなどに事業が拡大している。

 業績動向は、ITバブル崩壊後、赤字に陥ったが、その後は、リーマンショック後も比較的安定している。「ビジョン2010」では、2005年度の841億円 営業利益43億円を2010年度に海外中心に売上1300億円、営業利益100億円、ROE10%に拡大する計画だったが、20072008年度に売上1000億円超えと過去最高水準に迫ったが、営業利益は66億円にとどまった。2009年度を底に、増収増益が続き、2013年度は売上、純利益は過去最高であったが、営業利益は91年度の98億円に、一歩及ばず、2014年度も再びトライしたが、若干の減収減益で終わりお預け。今2015年度で売上1200億円、営業利益105億円で更新する計画。