2015年6月5日 ダイヘンの説明会

20156513時から決算と中計についての説明会が開催された。決算や中計については既に512日に発表済みである。なお、2年前より、年1回だが、説明会を開催するようになった。それまでは、個別取材方式で、証券会社主催や会社主催も含め、セミナーや工場見学会などがあった。運用会社時代からの付き合いであり、累積Inputは工場見学も含め数十回程度。

 田尻社長の説明は、独自分析や他社比較もあってユニーク、かつ自身の言葉で関西人らしい、本音の熱い想いが語られており興味深い。

セグメント別の業績動向では、第一の電力が、パワコンはピークアウトだがスマートグリッド関連やシェアトップの柱上変圧器が電力会社の更新需要もようやく始まり、増収増益が続く。

第二の溶接メカトロは、シェアトップのアーク溶接ロボットが好調の上、六甲工場のロボット生産の自動化が貢献、増収増益が続く。現在自動化率は3割が7割に引き上げられ「ロボットがロボットを作る工場」であり、コスト低減だけでなく、顧客への提案の場ともなる。

第三の半導体も堅調である。

全体の戦略と中計については、「ロスカット活動」と「ならでは製品」拡大に取り組んでおり、2014年度のロスカットは49億円、ならでは製品は190億円に達した。新中計では、売上1500億円、営業利益120億円(8)ROE10%が示されたが、これに向け、ロスカットは2015年の58億円から90億円、ならでは製品は同様に250億円から400億円に引き上げること等で達成する見込みである。

中計の骨子は、①開発型会社を志向、②ロスカット、③提携、である。開発費に関して、同業他社比較分析の上、2%台から5%へ、ロボットの領域拡大、パワーグリッド、ワイヤレス給電を強化するようだ。ロスカットでは単なるコストカットではなk業務プロセス見直しを図る。提携戦略では、必要に応じたアライアンスをするというもので、実際に欧州のバストロイ社を買収、また中国電力の子会社の同業者に資本参加した。なお、今季の業績には織り込んでいない。

ステイテクホルダへの還元は、①ユーザーに対しては開発、②社員に向けては同業者並みの賃金にアップ、③株主、という考え方が面白かった。

 

 質疑では、今期の業績見通しの補足や確認が多かったが、電力向け動向は権超、パワコンが急減した場合の懸念も既存工場や外注を使い固定費が増えて無いので大丈夫だろう、との回答。また、柱上変圧器は更新が多く欠品無く対応した点が大きかった。同社の溶接機売上高に占めるアルミ溶接向け製品の売上高は15%程度であるが、同社はアルミ溶接が強く、自動車ボディのアルミ化は、今後楽しみな材料となろう。また、ロボット工場の自動化についても夢物語ではなく現実のなっているようだ。

 

 私の質問は、以下である。

まず、前回、昨年の説明会で2017年中計が売上1100億円で横ばいの中、営業利益87億円を目指すというものから、売上1500億円、営業利益120億円と大きく変わった背景について確認したが、売上には拘らないものの、ロボットの底堅さや電力向けが好調など手応えを感じていることが大きいようだ。

次いで、中国電力子会社の買収の影響と、今後、同様のケースがありうるか、を聞いたが、連結は7月からで、影響は、年間100億円程、営業利益は3億円のようだが、今後、中国地方での工場向け受変電装置等にも広げ、利益もコスト削減で改善しそうで、期待できそうである。なお、さらに他の変圧器メーカに資本参加するという考え方はないようだ。また、電力会社関連で、スマートメータ関連にも手掛ける可能性については明確に否定した。

更にロボットの展開でインダストリ4.0では通信やネットワーク技術が必要であるが対応できるのか、という疑問には研究開発担当役員から、製品としてはないが、社内に保有技術はあり大丈夫のようだ。

最後に、開発費が増えるが、中身や、オープンイノベーションの取り組みについて聞いたが、開発費はこれまでは、既存製品の改良等が多かったが、今後は、大学たVBのとの提携など新分野が増えそうである。

なお、同社は、社名をダイヘンに1985年に変更したが、もとは大阪変圧器、1919年に柱上変圧器メーカーとして創業。その後、変圧器技術の応用を図り、1934年には溶接機事業へと展開。戦後は、アーク溶接用ロボットの生産を開始、競合会社買収や提携もあって、溶接機および溶接ロボット市場での確たる地位を確立した。半導体関連への参入は、ダイヘンOBで当時、東京エレクトロン社長の吉田氏との関わりによる提携で、1985年には、クリーン搬送装置や電源事業をスタートしている。

長期の業績推移は、1991年度には主力の変圧器が電力設備投資の恩恵もあり、営業利益57億と過去最高。しかし、バブル崩壊後、電力設備投資も一巡、自動車関連業界を始めとする産業界の設備投資手控えもあり、溶接関連は停滞した。90年代後半には、1998年度末から2000年度の第1次コスト構造改革であり、2003年度から2005年度を最終年度とした第2次コスト構造改革により、固定費を削減、生産体制も再編した。

こうしたコスト削減効果に加え、電力設備投資回復や、造船向け溶接が好調で、2005年度には営業利益66億円と最高益を更新、2006年度には更に営業利益90億円と、中計での2008年度の毛評の営業利益85億円を2年前倒しで達成し、2007年度は売上1000億円と突破した。

2008年度以降は、リーマンショックの影響や2011年の震災による電力会社の設備投資手控えで低迷したが、三本柱の電力向け小型変圧器、溶接機やロボットなど溶接メカトロ、半導体関連が堅調であり、2013年~14度は売上が1000億円を突破、最高を更新、利益は今一歩であったが、2015年度計画では、売上1250億円、営業利益90億円、当期利益65億円といずれも再び過去最高となる見込みである。

 経営重心視点では、電力向けという長期サイクルの安定事業と、ロボットという中サイクルの成長事業、半導体という短期サイクルの事業が、比較的バランスがよく、業績の変動が小さい。経営重心的に見れば、ほぼ日本が強いストライクゾーンに入っている。また、勢いがあり、ある程度、景気に影響されながらも、すぐに最高益を更新する点も評価できる。ここ5年は、電力が低迷し、ロボット等が支えたが、今後は、電力関連が電力会社向けだけでなく期待できる。やや半導体の存在感が小さく、いろいろ対策が必要で、むしろ、半導体にこだわらず、搬送系は、ロボットやFAに、電源系は、広く、スマートグリッドとして位置づけると発展性が見えてくるような気がする。

 提携やM&Aでは、否定はしたが、ある程度、スマートメータ関連も、ウォッチし場合によってはビジネスモデルを熟考し、参入しても、いいかもしれない。同様に、更に、中部電力の愛知電機などとも提携するのも中長期ではありうるのではないだろうか。東京電力系では、高岳製作所が、東光高岳に再編したが、西日本系でも、そうした動きが出てくるかもしれない。

 中計の売上1500億円、営業利益120億円は、過去の中計の傾向と比べると挑戦的にみえるが、事業領域や競争力から見て、十分に達成は可能であろうが、その次の2020年に向けての戦略が知りたいところである。2020年、社会インフラが整備される中で、どう発展するかが期待される。