2015年6月15日 ジャパンディスプレィの反射型省電力パネル説明会

201561515時~16時、社長就任予定の有賀COOによる説明会に参加した。いつも決算説明会がある会場で開催、そこそこの参加者。説明と質疑で40分、別のフロアに移動して実機の展示20分だった。

 同社の戦略は、3年でスマホ向けで圧倒的地位を築き、5年で非スマホで売上30%にする。前者は白山工場や、ピクセルアイズであり、後者が今回の話であり、低消費電力化、太陽下でもクリアなパネルを、画素内メモリ、ライトコントロールフィルム、銀による反射電極、ホワイトマジックにより実現する。ウェアラブル、産業医療用、電子棚札では従来品の置き換え、またサイネージ等はユーザーと共創で新市場を開拓していく戦略である。売上は1000億円、営業利益率10%以上を目指すが、既存置き換えが600億円、創出で400億円以上である。展示品も従来型と比べクリアであり、視野角なども良好であった。

 気になるコスト面だが、質疑では、既にCMOS化しており、東浦工場では銀スパッタ装置も導入しているので、生産性が上がれば変わらないし、BLが不要になる分は、安くなり限界利益率は向上する。

銀スパッタは製造ノウハウが難しいようで、析出のコントロールなどが難しそうだ。ホワイトマジックは有名なソニー時代からの特許で、デジカメで有用なもの。また、ライトコントロールフィルムも、強い特許で押さえられ、フィルムメーカーとはエクスクルーシブな縛りがあるようだ。

 気になったので、質疑で確認したが、画素内メモリでは、SRAMを使い、7Trタイプである。SRAMには、通常、4Tr6Trというのは聞くが7Trは初めてであり、液晶ならではの何かの制御にTrが必要なのか気になる。日立でもエプソンでも特許があるようだ。フィリップスでは、Tr数の少ないMRAMで特許が出されている。仮に4k2kパネルに使われるとすると、RGBW4画素なので32MbSRAMであり、時代でいえば、90年代後半になる。16MbDRAM95年頃だが、DRAMよりTrが多いので)、そこそこの微細化が必要である。もちろん、300mmウェハー上でのチップ100㎡程度と比較が難しいが、Tr数も多く、DRAMでいえば、64Mbから1Gbに相当する。

通常のメモリとは使用される面積が異なり、単純比較はできないが、CMOS化されていても、現在のLTPSの微細化ルールとは10年くらいは異なり、またシリコンのレベルも電子移動度が、うまく制御されてSRAMの高速スイッチを達成できるか、そこが気になるところである。ただ、回答では、そもそも、250ppi程度なので、そこまでの集積度ではないし十分に歩留まりも向上しており問題ないようだ。

 また、プロセッサとの関係になるが、全く、リフレッシュをしていないわけではなく、リフレッシュも数Hzで書きこみはしているようだ。このリフレッシュが要らないというのはIGZOの優位な点であり、そういう意味では、この画素内メモリはIGZO対抗という面でも面白いと感じた。

 反射型では、BLからの開口をあける必要がないので、空いたスペースにCMOSによる回路を形成するのは、無駄が無いし関心があるが、かつてLTPSのメリットとしては、ドライバー回路など周辺回路の一体化によるコスト削減、更に、シャープのCGSシリコンでは、MPUも形成できるシステム液晶をアッピールしたことがあり、その後なかなか難しいようなので印象が悪い。しかし、同社は、あくまでメモリだけであり、徒にMPU等の回路を形成して付加価値を上げようという戦略ではないことが質疑で確認して安心した。

 なお、昨日、日経平均が下落する中で、同社の株は午後から株価下げが目立ち、それと関連があるかどうか不明だが、幾つかネガティブなニュースがある。第一は、台湾の報道で、「インセルが無くなる」という説である。これは説明会後で、確認したが、一蹴され、また、業界関係者にも聞きましたが、あまり気にされず、可能性はゼロではないが、薄さとコスト次第であろう。第二は、次世代iPhoneでのOLED採用の動きであり、これは何度も報道されているが、「バックプレーンにLTPSではなく、Oxcide(ただし、SELやシャープではなもの)を消費電力の低さから採用しようと韓国勢が設備投資をしている」というもので(日新電機の説明会の質疑で確認したhttp://www.circle-cross.com/2015/06/08/201565-日新電機の初の説明会/)そうなると、白山工場投資が微妙になる。なお、フロント側も、従来のRGB蒸着から、IJか、RGB+白色BLか、いろいろ動きはあるようだ。第三に、短期だが、「小米が厳しくシェアダウン、ハイエンドはアップルに負け、ローエンドは下位に負けており、その影響で、シャープで在庫が5000万台あり、シャープの三重工場の稼働が2割まで落ちている中で、変動費割れに近いFHD8ドルで投げ売り、同社も小米向けはよくないのではないか」という話がある。値段の影響はあるが、他でカバー、全体では、稼働は好調で今期の業績は現状では心配はしないでいいだろう。