2015年7月19日 東芝問題~第三者委員会の正式発表を前に総括

  1. 振りかえり

  2. 見通しの反省~情報封鎖統制の中で

  3. 近因と遠因、粉飾が起きる三つの条件

  4. 東芝の歴史~日立と比較して

  5. 今後の展望~ポートフォリオ組み換えと業界再編、トップ人事、他社への影響

  6. 教訓~社外役員制は機能するのか

 

 20154月に会社側から最初に発表があった時、融通無碍な社風ゆえ、よくある単純なミスだろうと思った。しかし、その後、どんどん事態は悪化、大幅な過去の業績修正、トップの辞任、行政処分となる大事件となってしまいそうである。東芝との付き合いは30年に及び、IRはもとより、多くのトップや幹部と面談、親交も深め、多数の工場見学、それこそ、累積INPUT1000回をこえ、数多くのレポートも執筆してきた中で、複雑な思いであり、自分が認識してきた「多少融通無碍ないい加減さ脇の甘さはあるが躍動感のある優良企業」東芝とは何だったのかを、振り返りながら、20日の第三者委員会の正式発表報告(2019時に第三者委員会より東芝が受取り、21時に要約版公表、2115時全文公表、17時記者会見)を前に、自身で総括しておきたい。

 また同時に、今回の件は、幾つかの論点がある。第一に、リサーチという意味では、会社側と接触を断たれ、全く情報が無い中でどこまで実相に迫れるか、第二に、ガナバンスコードが導入される中での体制やあり方、第三に、あらためて業績数字だけの分析では不十分であり、業績の質、その背景にある会計原則や、その前提を精査しないといけない、第四に、「企業の根っこを見る」とも関係するが、その前提の置き方に重要な影響を及ぼす企業風土や経営重心、トップの質まで見ないといけないと痛感、第五に、現役アナリストとしては最長である30年という期間ですら、企業風土の分析は十分ではないかもしれない、と考えた。

 そこで、まず、今回の事件を振り返り、その推測の精度の是非と反省、また問題の近因と遠因、さらに遠因の中で東芝の風土を日立と比べ、今後の展望、東芝自身と業界全体への影響、最後にガナバンス制度への教訓について論じたい。