TIのキルビーが半導体ICを発明したのが1958年、特許出願が59年、ノイスがプレーナ型を発明したのが59年であるから、59年11月生まれの私の人生は、半導体ICと共にある。
大学院ではちょうどDRAM不足で実験装置制作に苦労し、実用化されて間もないCCDセンサを画像処理に使った。そしてNRIに入社した86年当時は、日本の半導体メーカーの黄金期の始まりでもあり、日米半導体摩擦に象徴されるように米国半導体の凋落の時期でもあった。
NRIの先輩から、日立やNECに比べ、評価が低かった東芝が、1メガDRAMで躍進、NANDフラッシュの開発も本格化した。また、やはり当時、松下やソニーより評価が劣位にあったシャープがTFT液晶での快進撃が始まった。しかし、その後、大半の電機大手は最高益を更新できず、苦戦を強いられた。アナリスト人生は、日本の電機メーカーの栄光から凋落と重なったものでもあった。
そして、四半世紀が過ぎ、50年を迎える半導体ICも、もう少し若いTFT液晶も、その覇権は、日本から韓国・台湾に移り、それがさらに中国に移ろうとしている。いや大型液晶は既に移り、2020年以降には中小型のLTPSや有機EL、DRAM、あるいはNANDも移っているかもしれない。
東芝もシャープも、グローバル競争リスクが大きい半導体や液晶で、一瞬、日立やパナソニックを抜いて一流になりかけたが、道半ばにして、それぞれ、やや似て非なる事情だが、トップ問題や不正不健全な会計でB/Sもブランドも毀損した。
この二社の、リスク・コモデティ・デバイス事業によって、カネと度胸で、二流から一流へ駆け上がっていこうというチャレンジ精神は、その融通無碍な社風とカリスマ経営トップによって成し遂げられた面もあり、その意味では、両社の現状も、その裏腹にあるといえる。