日経新聞の9月21日報道によれば、ホンハイがシャープに対して液晶事業買収提案をしたようだ。分社化する液晶事業会社の株の過半数を取得、アップルにも出資を求め、シャープと併せ3社で運営するとのこと。
ただ、事実関係としては、検討はしているが、まだ液晶事業分社は、正式には発表されていない。JDIの中にも、シャープの液晶事業に関心がある向きもあるだろう。ただ、半年前と比べ、水面下で大きく動いていることは事実であろう。
シャープの立場
既に指摘したように、シャープ側では、①大西氏が液晶企業を直接見て、その過去も含めて楽観できない実態を本社サイドでも十分認識した、②銀行から厳しい通告を受けた可能性があり時間がない、③液晶市況が悪化の中で液晶事業も厳しさを増している、である。http://www.circle-cross.com/2015/08/31/2015年8月31日-シャープを巡るjdiとホンハイの報道の読み方/
アップルの立場
また、アップル側では、新しいiPhoneを投入し、ハプティックの重要度が増しており、日本電産だけでなく、ハプティック・モジュール、あるいは、液晶とタッチパネル、バックライト、ハプティックを、モジュールとして、トータルに安定供給してくれるサプライヤが欲しい。液晶&タッチパネルメーカー、バックライトメーカー、ハプティックメーカー、それぞれ、微妙に、不足しているところがある。
更に、将来2017年以降のiPhoneでは、液晶からOLEDになる可能性があるようだ。この場合は、基板はガラスではなくプラスチック(高耐熱低膨張係数ポリミド、ただし表面保護は必要)、タッチパネルもOLEDでは構造上、表示面側にカソード電極があり電界をシールドするため、インセルは困難であり、オンセルあるいは外付け方式になる。おそらく、フィルムオンセル方式だろう。また、そもそもインセルを使わずとも、十分に、薄くできるようになる。そうなると、現在のインセル技術力ではなく、バックライトやハプティック技術がコアとなり、そこがサプライヤを選ぶ、優先順位となろう。
その場合には、シャープのモジュールの実績や技術力、あるいは、バックライトやハプティックの多少の技術力も魅力になる。つまり、インセルで圧倒的に強いJDIの優位性は減る。ただ、現在、バックライトは、ミネビア、オムロンが供給しているが、ミネビアでは過去、生産トラブルもあり難易度は高く、ハプティックも日本電産とAACだが、AACでも生産トラブルはあり、シャープのこれまでの実績でどうかは不明だ。
http://www.circle-cross.com/2015/08/28/2015年8月26日-ハプティックは30年ぶりのユーザーインターフェース技術の革新/
また、足元の課題としては、iPadでは、IGZOが必要であり、LTPSは十分なキャパがあるが、このIGZOのキャパが不足気味である。また、2017年あたりからのスマホ用にOLEDを採用する可能性があるが、そのバックプレインとして、LTPSではなく、IGZOを採用する動きもある。そうなると、ここでもシャープが必要となってきている。
つまり、アップルとして、インセルが重要で在り続ければ、JDIやLGが最重要サプライヤであるが、ハプティックの重要性と、将来のOLEDを考えると、JDIの優位は相対的には減り、その分、シャープが浮かびあがることになる。
ホンハイの立場
ホンハイとしては、もともと、シャープに関心があり、実際、堺にテリーゴー個人で出資、実績や、堺の人員との融和も進んだ。徐々にシャープ側のアレルギーも堺のメンバーを通じて、減ってきているだろう。他方、買収したイノラックスの技術では、液晶のサプライヤに入れない焦りもあろう。また、バックライトや、ハプティックの重要性、最近のアップルの意向も熟知しており、その中で、日本電産との協業、また、そこでシャープを再認識したことだろう。春先あるいは3年前は時期尚早だったが、徐々に機は熟しつつあるだろう。今回もホンハイでなく個人としての出資の可能性もあろう。
JDIあるいはINCJ等の立場
こうした状況は、当然、JDIもわかっていよう。