東芝に久しぶりに個別取材を行い、これまでの疑問点を確認した。ようやく、IR体制が通常モードに戻っていた。かなりの点は解消した。確認した点の多くは、2012年度以降の修正が大きかった部門、PC、TV、半導体のディスクリート、システムLSIの数字のチェックであり、そこは特段、大きなサプライズはない。
以下、過去、説明会などで宿題になっていた疑問点であるが、かなりクリアになり、既に出た以外で大きな会計問題はないようだ。WHなどは常に長期の見通しやリスクをどう見るかという点はついてまわる。そこの価値観を除けば、ほぼ出尽くしたといえよう。
有形固定資産と設備の減損
半導体部門について、システムLSIは全額減損、ディスクリートは大半減損とされていたのに、有報では、加賀東芝で300億円、岩芝で174億円、大分工場で238億円が残っている件については、子会社の加賀東芝、岩芝は、子会社ベースでは減損していないが連結ベースでは実施しているようだ。大分については、システムLSIだがメモリー向けドライバーはメモリに含めている分が残っている。
会社全体の有形固定資産は8863億円であるが、有報から確認できるものは、デバイス2861億円、ヘルスケア112億円、電力社会インフラ1541億円、本社522億円の5036億円であり、3800億円の差額があるが、テック社が300億円強の他、空調エレベータ、WHの子会社分(WH本体は掲載あるが)などであり、ライフスタイルがゼロであることには変わりは無い。
棚卸や受注の中で長期のものがどの位あるか
棚卸の中で、長期のものがどの程度あるかが関心事項だが、やはり、有報にも記載がある棚卸の中身の内訳としての長期性資産の800億円が大半であり、それ以外には、「その他」の「その他」に少しある程度。なお、セグメント別のイメージとしては、電力社会インフラが30%強、デバイスが30%、それ以外が10%ずつという傾向のようだ。
ならば、電力社会インフラが11500億円の3500億円程度、そのうち、長期が800億円強であり、25%前後ということになる。電力社会インフラの受注案件の中で、1年以上のものが40%程度あるようなので、違和感はない。
なお、こうした受注の仕訳はカンパニー毎で計算しており、原子力は7年くらい、火力は3-4年くらいが最長で、多くは2年以下のようである。また、規模感もマスコミ発表するのが100億円を超えるもので、大半は数十億円でETCなどは例外的なもののようだ。特別調査委委員会の不正会計の利益の修正が500億円だったので、これを例えば長期の棚卸の800億円、あるいは受注の40%という規模からすると、不正が大半を占めるということになるが、今回の修正は利益の方が売上規模より大きいケースが多く、ETC等は数百億だがロスコン引当が大半で売上修正は数十億であることからすると確かに問題はない。
長期資産の減損テストの割引率
有報記載の通り(P89)、全体では、WACCが6.2~9.8%であり、セグメント別詳細はないが、電力社会インフラは高めのようだ。
なお、他社では、割引率の開示は、減損があった場合になされているが、日立では、情報通信で5%強(期間5年)、クルマで9% 富士通で、FTSの際に、14.2%(移行時)、現在は10.6%、また、パナソニックの中計の質疑で出たのが5~10%という程度であり、これらと比べても十分に保守的であり、逆に、下限で6%以上あるというは驚きである。
期間については、カンパニーで異なり、原発全体では20年弱、火力はもう少し短い。なお、経営重心理論における固有周期の概念が、この期間に近く、この数字がセグメント別に開示されれば、経営重心の測定(固有周期や広さ)がより正確になるだろう。
PBOの割引率
年金関係の割引率等については、各社、有報に開示があるが、この件については、2008~9年の割引率がイレギュラーであり、細野氏が疑念を呈しているが、問題はないようだ。東芝の場合は、割引率は、機械的に、国債利回りと対国債AA格付けのスプレッドから計算されており、当時はリーマンショック直後で国債利回りが対前年比で低下したものの、スプレッドが上がったことで上昇した。
他社との比較では、WH連結後で、海外で米国債の利回りとの関係があり差異が生じている。それゆえ、意図的に数字を作れるようなものではないらしい。