2015年11月12日 東芝のWH減損に関する日経ビジネス「スクープ」報道

 日経ビジネスオンラインが、スクープ記事として「東芝、米原発赤字も隠蔽、内部資料で判明した米ウェスチングハスウの巨額減損」を12日夕に出した。過去にウェスチングハウス(以下、WH、会社資料ではWEC)は赤字であり、1600億円の減損をしていたのに、これを隠し、実態は赤字であったとしている。

 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/111100135/

当初、記事を見た直後は、正直、土曜日の説明会やその後のスモール会議で原発事業は健全だと聞いていただけに、タイトルや内部告発に驚き狼狽した。が、よく見ると、1600億円がWH全体か、土曜の説明会での開示資料での減損、新規建設等だけの話がはっきりしない。  

http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/pdf/tpr2015q2.pdf

土曜の説明会では、WHの減損について、WHを、燃料、サービス、オートメーション、新規建設の4部門にわけて説明された。全体としては減損の必要がないが、新規建設が2012年と13年、オートメーションが2013年に減損とされた。割引率は、新規を中心に、当初は低いが急にあげるなど厳しくしたとされた。開示はないが、新規は、平均で9%強なので15%位の印象を持った。

今から思えば、土曜の開示は、日経ビジネススクープ対策だったかもしれない。

 

冷静に分析すると新規建設1600億円なら十分ありうる話で開示も含め問題なし

冷静に分析すると、鍵は日経ビジネスWHの減損1600億円が、WH全体なら、これまで何度も問題視され、開示資料で健全だと言ってきただけに、極めて重大事であり、投資家や世間を欺いていたことになるが、1600億円が新規建設だけだとすると、十分にあり得る話であり開示の要もなく、日経ビジネスのミスリードだろう。想像だが、日経ビジネスのいうのは単独で東芝のは連結の違いであり、単独は新規建設が中心で連結で燃料サービスということかもしれない。

以前の開示(http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/pdf/tpr2014q4_1.pdfでは、WH買収後のWHの累積EBTDA3700億円とされ、グラフからは、2008-14年の累計売上は原発全体で4.5兆円、うち、国内1.5兆円、WH3兆円位と見える(正確には、輸出等もあり単純ではない)。また、全体のサービス燃料が8割とあり、3.5兆円、ここからサービスのみの国内売上1.5兆円を引くと、WHのサービス燃料は累積売上2兆円、ハード(新規建設)が同様に1兆円とラフに計算できる。

これが正しいとしると、WHの平均EBTDA収益率10%で妥当であろう。仮に新規が累計1600億円とすれば、サービス燃料で5300億円、収益性は25%となるが。これもあり得る話だろう。

しかし、政治的な面もあり、これを開示したくないのではないか。それが誤解を生み、問題化している可能性もある。

そもそも、原発として、まず、赤字でも新規建設、そして燃料サービスで、全体として儲ける(これは、コピーにおいて最初に赤字でハードを売り、後で、消耗品で収益回収するビジネスモデルと同様)一体の事業なので、分けるのも変ではあるが、新規建設のみ減損なら、全く問題はなく、むしろ保守的で、その必要がないようにも思われる。

土曜日の開示はよかったが、どこまでが単独でどこからが連結なのかも含め、もう少し開示をすれば、誤解はなかったのかもしれない。

 

原発は開示が難しい

原発は、政治、外交、や安全保障もあるので、開示が極めて微妙である。赤字はダメだが、儲かるのも難しい。また、通常のビジネスであれば、内部通報もあるが、国家安全保障に係るゆえに、その面でも難しい。日本政府だけでなく、海外、米もある。金融庁や東証、経産省のレベルをこえ、官邸ベースを超えるだろう。

逆にいえば、そういう事業を、一民間企業、上場企業に任せることが難しい。国家戦略と、ROEなどの投資家利益が、整合性が無いとはいわないが、相性は悪いだろう。

それゆえ、原発は、外に出し、東電などと合併させ、国家管理会社、あるいは米とも連携して、国連かどうかわからないが、そういう管理すべきではないか。特に、英や仏アレバへの中国出資もあるが、話題となっているセミコン社以上に、紫光集団などが、原発を持つ東芝を支配するのは問題だろう。セミコン社を上場させ、その売却益で、リストラを進め、本体は、ヘルスケアやIOT、制御など中心に、GEからも出資を仰ぎ、上場子会社のセミコンと共に、新たな発展を目指すべきだろう。

 

残されたガバナンス問題

 もし、仮に、日経ビジネスのいうように、WH全体が赤字で全体の減損であり、新たな隠蔽粉飾なら、室町氏などの辞任問題となる。ただ、その場合、なり手がいるのだろうか。また、指名委員会も含め、早急に、社外役員が集まれるのだろうか。急な記者会見があれば、出席し発表するのは、東芝社内の人間ではなく、社外役員や指名委員長となる。場合によっては、長い期間、社長不在もありえ、万が一、解任などになれば、どうするのか((法律上は、辞任の場合は、新任が決まるまで室町氏)。今回、皮肉にも、社外役員制度についても多くの問題を投げかけている。