OKIの決算は11月5日に発表されたが、集中日で参加できなかったので、11日に個別取材をしたので報告する。今回のポイントは、報道されているように、下方修正の主因の中国現地企業(イーファ社)のATM代金210億円の不払い問題の動向である。
結論から先にいうと、深刻な問題ではないだろう。一瞬、2012年のスペインでの粉飾問題を想起させるが、①OKI側ではなく中国企業の問題であり、不祥事ではない上、状況から見てOKIの顧客管理不足でもない、②最悪ケース210億円の売掛の未回収による特損が発生するが、自己資本は1000億円近くあり配当支払い余力も含め問題はない、③既にイーファ社に代わり、大手のデジタルチャイナ社と提携、手は打ってある。ただ、改めて、海外リスクは認識すべきだろう。
業績は、上期 売上2330→2300、OP40→36、NP20→9、通期 売上5450→5150億円、OP300→170億円、NP220→100億円。なお、修正の背景は、中国イーファ社だけではなく、ブラジル景気低迷で買収した現地子会社の不振、プリンタの悪化もある、それ以外は、EMSや、センサー等、国内は好調。
もともと、イーファ社とは10年前から中国市場を開拓してきたパートナーであり、これまでは、支払い遅延等は全くなかった。それが些細なビジネスの見解の相違から話がこじれ、オーナー系企業のイーファ社のトップが5月以降、代金不払いの挙に出た。OKIは6月から出荷を停止、話し合いをもったが、難しく、仲裁手続き申し立てとなった。このため、9月末の売掛金1058億円のうち210億円が未回収のままである。
OKIはイーファ社を通じ、台数で半分程度のATMをOEM供給、中国四大銀行の一角に納入、通常の売上規模は500億円程度である。イーファ社ブランドで銀行で稼働、保守は継続中のようだ。また、先日の展示会でも出展するなどの状況から見て、イーファ社が中国の景気減速で経営が悪化や日本企業叩きなどの政治背景でもなさそう。
OKIは監査法人とも議論し、まだ引当金は積んでいないが、仲裁の推移を見て長引いたりすれば、ある程度の会計処理がなされるかもしれない。
メカトロ部門は、イーファ社の件の分と、ブラジルの不況で、年間売上1110→830億円となった。ブラジルも赤字20→35億円と悪化。ただ、国営案件などは入札成功で来期に期待したい。他方、国内は金融や流通向けが堅調(それぞれ300台積み増し)の上、公共性のある法人向けに現金支払機が大きく伸び、35億円上方修正、来期も強そうである。ビデオテラ―システムは、実験中で来年導入。メカトロでは売上1370→1140億円、OPは非開示だが、150→65億円程度と推定。
S&Sは、金融、などが上ブレ。全体としては想定範囲。通信は、レガシーが上ぶれ、コアNWなど下ブレ。社会は防災など飽和だが堅調だ。ただ、マイナンバー関連は話がない。情報通信全体では、売上3400→3200億円、OP240→155億円だが、メカトロ以外では、2030→2060億円、90→90億円と推定。
プリンタは下ブレ、なお、セイコーから買収した大判50億円が寄与している。売上1400→1300億円、OP70→20億円は、問題である。
EMSは、子会社各社で好調で、中計レベルを超えている。売上460億円、OP25億円維持だが、強含み。その他セグメントも、センサーやエンジニアリングなどが好調で、売上190億円、OP35→40億円であり、収益性は全セグメントでトップ、実額でもプリンタ以上だ。
なお、2016年中計、Opm6%、自己資本比率30%以上、DEレシオ1以下は堅持。特に、自己資本比率は、中国の件がなければ楽勝であった。