2015年11月14日 創業1周年の反省と感謝と決意

早いもので、1126日に創業1周年を迎える。実際には活動を始めたのは年明けであり、ブログ開始は3月なので実質は9カ月程度だが、この半年は、仕事の量と質、共に、受験時代、学生の卒論修論、NRI新人時代も含めて、最高に働いているが、充実している。活動を支えて下さっている会員や関係者、IRの皆さまには改めて御礼を申し上げたい。

当初は、電機業界を、No Sideの立場で、もう一度じっくりピュアに振りかえり、分析したい、経営重心理論の完成と一層の充実が、創業の背景であった。

この思いは不変だが、加えて、1年弱、活動してみて、深刻だと感じた最近のアナリストの質の劣化、分析や投資行動の短期主義に警鐘を鳴らし、企業の「根っこ」を分析、アナリスト活動や企業分析、投資家行動に、ルネッサンスを呼び込むことをも活動理念としたい。

経営重心の進展

経営重心については、電機精密中心に、30社くらいケースが集まり、素材やソフト産業にも概念を広げ、検証しているところである。また、多くの方からアドバイスも頂き、改善改良にも努めている。決算コメントにも、できる限り経営重心分析を入れるように試みている。幸い、多くの経営者から高い評価を頂き、幾つかの会社では経営にも参考になっており、最近では、一橋大の次世代CFO育成プログラムで講義もした。

また、無事、商標登録も完了し、安心して活動できるようになった。これは、他社が、経営重心を標榜して、サークルクロスコーポレーションとして、経営重心に関する活動ができなくなることの予防的措置であり、皆さまが経営重心という言葉や概念を活用し発展して頂くことを阻害するものではない。むしろ、経営重心の概念が発展し、経営の分析手法として広がり役に立てれば喜びである。

課題は、著書の売れ行きである。当初は良く売れ、上位ランキングにもなり一部の都心店ではベストセラーにもなったが、その後が続かない。新書ではなく普通の本にして、タイトルも、「電機業界の経営重心」とすべきだったかもしれない。新しい概念なのに、ちょっと抽象的で、ただの経理理念を語っただけの本のように思われていたようだ。

セルサイドのトップアナリスト時代は多少わかりにくくとも機関投資家中心向けに、速報性と独創性があれば、十分であり、相手は頑張って理解吸収して頂いたのだが、今の立場だと、もう少し解り易さが必要だろう。

ビジネス

8月決算にしているので、初年度は当然、赤字であった。しかし、まず、変動費が賄えるようになり、月次損益も黒字が見えてきた。

リサーチを売り物にすることは決まっていたが、どういうビジネスモデルにするかは、あまり考えず、模索中ではある。とりあえず、あまり、アイデアは無かったが、会員制のサービスにしたところ、御蔭さまで会員数も着実に増えており、お願いした企業だけではなく、そこからのご紹介、さらに、知己ではあったが、予期せぬ新たな会員などもあり、不思議な御縁と御恩を感じているところである。幾つか、御断りしたところもあったが、あまり会員数を多くすると、管理も大変であり、情報は拡散するので、それほど会員数を多くするつもりはないので、会員様へのサービス充実を心がけたい。

予期しなかったのは証券会社を通じた講演会や機関投資家への個別プレゼンが、そこそこ、あることである。月により多少があるが、投資判断なし、バリエーションなし、短期業績なし、という割には驚きであり、投資家も長期視点、中立な立場での分析を求めていることが分かった。

INPUT

INPUT先という点では、電機業界中心に、これまで通りの御付き合いを頂いておりIRはじめ多くの方に感謝している。工場見学や研究所の見学も行かせて頂いたし、個別取材も感謝している。ファンド時代に付き合いが始まった企業も、せっかくの御縁なので、継続フォローさせて頂いているが、決算集中日などは説明会が重なっているのが残念だ。過去に比べても、INPUTの数は相当多く、質も高いだろう。

当初は、そんなに質問する気も無かったのだが、そもそも質問が出ない場合が多い上、最近の幾つかではレベルの低い質問が多いし、何よりも、説明を聞いているうちに沸々と疑問や好奇心が湧いてくるので自制できない。大手電気でも質問シェア10%、中堅では50%以上、100%も多いが、最近は、それがいい刺激になり、アナリストの質問の質・量も改善され、盛り上がり引き締まっているようにも思う。

OUTPUT

OUTPUTという点では、講演、プレゼンを除けば、日々のブログ、レポートが中心だが、ほぼ月に25件以上、12頁から8頁だから、10万字くらいであるから、毎月、一冊くらい本を書いている印象である。最初は、こんなに書くつもりはなかったが、ついつい書いてしまう。いくらでも書きたいこと分析したいことがある。決算メモなどは、数時間でできるが、経営重心など長期で分析すると10時間かかる場合もある。また、これ以外に、時間を要しているのがプレゼン資料作成であり、50枚で10時間はかかる。講演やプレゼンだけでなく、個別取材する場合も、用意している。

当初、書こうという内容は、以下であった。こういう分類で分けていないが、ほぼ以下の内容を織り込んでいる。想定外だったのは、東芝やシャープの問題であり、これについてのコメントが多い。下記では、②、③、④が多くなっている。景気の転換点という意味では、⑫が多くなった。また、⑧、⑨も、間接には触れているが、もう少し充実したい。

<元々のイッシュー>

  1. カバーされていない企業について(どちらかというと企業向け)

  2. カバーされている企業の中長期視点(スチュワードシップコードに役立つ) 

  3. IFレポート(Investers’ Fiction)大胆な予想に基づく業界再編予想

  4. 会社説明会記事と解説、会社側、アナの質問の意図

  5. Research on Research(研究所 紹介 かつてNRI時代やっていた続き)

  6. 未上場企業紹介

  7. 技術紹介

  8. 電機の80年代~90年代の詳細、以前の取材メモ公開、ネットない情報公開

  9. 半導体、液晶に関わった人間の列伝 トップだけでなく事業部長や現場クラス

  10. 消えた企業 合併吸収の話、破綻の検証 上場廃止企業の有報は国会図書館のみ

  11. 技術予測、市場予測の当否の検証

  12. ハイテク市況動向(これは短期動向も)

  13. 経営重心(出版後、続編フォロー)

  14. 社長・運用の経験談、それを生かしたノウハウ一般化

  15. その他(読書感想、日々雑談)

     

    ポリシー

     アナリストの公器としての使命から、東芝やシャープなどの大きな問題については全面公開、小型株でカバーが少なく光を当てなければいけない場合も、ほぼ全面公開。取材や説明会でIRが出す情報などは大部分公開、また、アナリストの在り方、株式市場の在り方など、論点や、経営重心など、世に問う、という場合は公開、としている。

     他方、詳細分析や、重要情報、については会員、関係者限りとしている。この他、個々に会員にはカスタム情報分析も行っている。

     また、10月からNewsPikcsでプロピッカーとしてコメントしているが、ここに公器としてコメントあるいは紹介すべき情報は公開している。

    今後の課題

     とりあえず、会員制と講演やコンサル、というパターンで月次損益は黒字が見え、確立してきた。中立で長期の分析へのニーズは高く社会的使命度も高い。もっとうまくやれば、大きな潜在性もあるようには思うが、まだ解らない。そこは、足元を固めつつ、次の飛躍も考えたい。