11月27日 16時より説明会。出席者は、室町社長、志賀副社長(社会インフラのトップ)、平田CFO、ダニーロードリックWEC社長、栗原LG会長で、室町氏以外は最後まで出席。会場は満員、前半は16時から17時半くらいで、アナリストとマスコミ合同、後半はアナリスト質疑のみで、19時近くまで。原発事業詳細、WEC詳細、減損テストの詳細、原発事業概要や今後見通し、LG社概要、英NuGen社、フリーポート液化サービス契約などマスコミ等で関心があった話題は全て織り込んでいる。
前半はマスコミ中心の質疑だが、マスコミの会計財務知識の欠如による無意味な質問による時間の浪費、あとは、相変わらずの責任問題や、室町氏の減損認識の有無や社外役員の反応の質疑が多い。また、室町氏役員就任は2014年で2012年は顧問にすぎないのに減損認識を問う事実誤認、連結調整とシナジー効果を一緒にする勉強不足の質問まであった。開示が悪かったのも事実だろうが、開示しても、マスコミの多くは猫に小判とは言わないが、却って混乱するだけではないだろうか。経済関係の記者は、最低限の基礎知識や、それが無いなら、アナリストの質問を聴いていればいい。ただ、WECトップ(先日もオバマ大統領と一緒に会合し、インドにも同行)から、世界の原発市場やエネルギーの見方などを披露、日本だけ見ているマスコミに世界の常識を啓蒙できたことは良かっただろう。以下、視聴可能。 http://www.c-hotline.net/Viewer/Default/TOSHbcfa7577351f32f30be3d235b8277eb4
驚くべき開示、社内資料なみで原発事業が丸裸
開示については、室町氏が先頭になって積極開示姿勢、元社長らへの訴追も監査委員会から年内に説明会、他セグメントも開示積極、カンパニー毎のIR等も示唆。後半は開示問題より、ようやく将来の原発事業の可能性など通常の話題になった。驚いたのは開示内容であり、100点以上、120点で、社内資料並みで丸裸である。
東芝がWECを買収して以降の2006年から2015年上までの原子力事業の売上、OP、EBITDAを、WECの燃料、サービス、建設、国内の建設とサービスに分け、2012年度、2013年度の減損テストの部門別に分けた詳細数字は圧巻。更に、14年度以降の減損テストの前提となる15~17年度の詳細予想、18~29年度の同様の平均数字まで出している。その割引率9%、永久成長率0%まで提示。
ここまで出すのは、様々なステイクホルダーの反対などもあったろうが、生き残りをかけて全部洗いざらい出した感じである。これがまさに最後のチャンスで、ここで開示不足があれば、東証等も許さないだろうから嘘偽りはないだろう。むしろ出し過ぎというか競争力上など問題かもしれないくらいである。
減損ストレステスト
さらに、ストレステストは、保守的でもある。2014年度では、WECでは前提として将来15年の受注が64基、永久成長率2.5%だが、東芝連結では、46基、0%の前提に置き換え。これで部門別も、全体も問題ないという結果である。
問題となった2012、2013年の減損は、WECは、プロダクト別に減損テストの結果、新規建設677億円、オートメ249億円のロス発生。ただ、サービス、燃料は、時価が簿価を上回り、全部合計すると、時価が簿価以上で、連結では減損せず。同様に、2013年度は、新規建設394億円減損。また、アレバと比較するマーケットアプローチも25%いれてテストしている。これを11月7日に開示していれば何の問題も誤解も無かっただろう。ただ、御蔭で開示が大きく前進したのは、怪我の功名だろうか。
質疑で、少し議論があったのは、18年度以降の見方が甘いのでは、ということである。もちろん、合理的なものであれば、何の問題もないが、15~17年度の平均OPが400億円に対し、18~29年度が1500億円という点である。ただ、OPMでは11%であり、無理ではないが、弱気ではない。3.11前は、8%前後であり、減損も3.11の影響であるから、不自然でもない。ただ、もう少し燃料サービスのOPMを高めに、新規建設を低くしておくと、良かっただろうし、実態はそうなるだろう。
エネルギー原発政策は日本の常識、世界の非常識
WEC社長の見方は非常に参考になっただろう。アメリカだけでなく、世界の多くは、CO2問題で、原発は不可欠だという認識のようだ。また、独は再生可能エネルギーを導入しているが、そのために却ってCo2を余計に出していると指摘。また、そうした状況を独クルマメーカーは解っているため、米に工場建設をしているようだ。また、エネルギー政策は、単に短期のコストが安い高いではなく、多様なリスクヘッジをした長期ポートフォリオであるべきという指摘も参考になった。日本で、日本人が原発政策について正論を言うことは難しいが外国人に指摘すると納得した方も多かっただろう。なお、私自身の認識は核のゴミの問題であり、これに目処がつくことが重要である。
原発ビジネスモデルは、本来はライフサイクルで認識すべき
原発のビジネスモデルの開示も分かり易かっただろう。まず、①最初の10年が新規建設で初期はもうからないが、量産効果で収益アップ、1基は赤字だが、数基でトントン、10基近ければ、設計ノウハウやコストダウンもきき、OPM10%くらいだろう。その後は、②40-60年のサービスと燃料でOPM10%前後がコンスタントに維持される。最後が、③廃炉だが、これが、今までなかったものであり、150基近くあり、毎年売上300億円で、収益性もいいだろう。いわば、コピーのハードと消耗品のモデルを期間10倍にして、最後、廃棄まであるというものだと考えると理解しやすいだろう。
そういう意味では、①新規建設、②燃料サービス、③廃炉は、一体であり、WECのように分けて減損をする必要がないように思う。買収当時は原発ルネッサンスと言われ新規建設に価値があったから仕方がないが、冷静に判断すべきだったろう。
WECの単独B/SとWEC株をどう認識すべきか
私がした質問で重要な点は、以下である。
WECの単独B/Sについて、総資産10bil$、株主資本5.7bil$、有形固定資産7bil$、在庫3.2mil$、Debt4300億円など。自己資本比率は57%で健全。殆ど在庫がなく、無形固定資産もあることを考えると、在庫や売掛などもあまりない。
WECの株評価についても確認した。これは、減損とはまた別の話で、少数株主である、IHIやカザフスタン等が関わる。東芝では、WEC全体で価値が簿価を上回っているから当然だが、評価損はせず、簿価のままのようだ。ここは、P/Lが少数株主持分控除をするのに、B/Sでは暖簾など100%いれて(これがP/Lでの売上やOPと同様)、少数株主控除的なことをしない点が課題となるが、会計制度でも議論があるようだ。
東芝は原子力事業全体で考えているので、簿価のままでいいし、現在の少数株主も、IHIなど原子力事業なので問題はないが、これが一般株主であれば、原発のシナジーがなく、よってWEC単独減損した分だけ株評価損が出ることになる。ここは、2012~13年度にIHIなどがどういう処理をしたか、役員会や監査法人などで議論が無かったのかチェックポイントであろう。
さらにいえば、WECと東芝が一体なのに、別会社でわけ、WECだけの分を他の株主に売ろうとしていることが問題なのだろう。
つまり、WECを100%子会社化した上で、「原発東芝社」を、適切に株式評価、減損テストして、分社化し、それを、IHIやカザフスタンも含め、外部株主に保有してもらうべきだろう。さらに、そうすれば、連結と子会社での減損の違いなどもなくなる。また、その方が、フェアでもあろう。これまでWECだけでは買い手がいなかったこともそういう背景もあろう。説明会後、WECがアレバに出資意欲との報道もあったが、これも、そういうスキームにした方がいいだろう。
リストラ、半導体分社
リストラやB/S強化に関連して、売却できるものは売却する方針。ただ、ファイナンスの可能性については、特注銘柄であり、エクイティファイナンスも、社債発行も、難しいとのコメント。また、半導体は、完全売却、持分法は否定したが、子会社ならば、分社化、上場などもありうると踏み込んだ発言だったことは注目されよう。
なお、LG減損テストは問題なく、一時のトラブルもなく、さらに東電からも評価されているようだ。その他、プロジェクトも疑念はなくなっただろう。
新しい東芝のかたち
今回、原発事業を開示したことで、東芝は、NANDと原発が、OPM10%以上であり、まさに、この二つがコアであることが丸裸となった。これ以外の可能性は、エレベータ、ヘルスケア位だろう。その意味では、半導体分社化に加え、WECを取りこむ形で、原発事業も分社化し、上場するのも手だろう。以前から指摘しているように、そこで、国家安全保障にからむところは東電や国、INCJなども出資、民間でも問題ないであろうサービスや、廃炉などは、外部一般株主を多くすればいい。そして、OPM10%にいかない企業をむしろコアとして、育成していくというのも手だろう。NANDも、紫光や、MU、ハイニクスなども含め、外部資本をいれ連携強化していく必要があろう。
資本強化策については、GEからの出資や、社外役員を受け入れることを期待したい。開示は丸裸となり隠すものはない透明性だ。次はガバナンスであろう。