経営重心の著書を刊行して半年以上が経過、引き続きケースを集め、また、多くの方々と議論させて頂き、御蔭さまで、日々、進化している。ここでは、識者の感謝も含め、また、指摘された点も含めて、その進展と広がりについて、記したい。
もう一つの軸と経営者重心など
第一に、経営重心の第三の軸や、他の平面からの考察である。経営重心は、固有周期と固有桁数からなる二次元平面での分析である。本来は、多くの軸があり、ここでは、最も本質的な軸として、固有周期と固有桁数を選び、重心や広さなどを定義し、分析しているが、拙著でも書いたように、当然、他にも有意な軸は一杯あろう。その一つは、顧客との関係性、具体的には強弱関係や親密度合いなどであり、特に収益性に影響が大きいだろう。この3軸による分析、あるいは重心が、もっと多くの知見を与えてくれるだろう。例えば、現在の経営重心では、原発と半導体製造装置は、全く異なるが、顧客との関係性は、いずれも中長期であり濃い。
図表1 経営重心Z軸方向の考え方:第3の軸「顧客との関係性」と経営者重心など
経営者の影響、いわば経営者重心の視点も重要だろう。この場合は、事業や経験を通して醸成された経営者の気質や価値観が大きく影響しよう。また、この経営者と従業員の総和の価値観の気質の相互作用、マッチングで重心が変わってくる。重電の会社に、気が短く、質より量を追い求める価値観のトップが就任した場合は、なかなか馴染まず、あまり違いすぎると反発し社風が乱れるが、時代の風や流れとマッチすれば、そうした経営者の個性が会社の重心をあるべき方向に引っ張っていくこともあろう。
さらに、研究開発のフェーズでも、実用化期間と開発件数の多さといった尺度で分析できる場合もあろう。
顧客の経営重心平面でのベクトル、経営者のベクトルが、企業の経営重心のベクトルに影響していくのだろう。
経営重心理論の拡張
第二は、経営重心理論の拡張性である。もともとは、電機精密メーカーの分析であり、これが拙著に書いた範囲であり、いわば経営重心1.0である。これを、部品や機械にも、展開しつつあり、実証検証している。
図表2 経営重心の拡張
これをまだ一部だが、自然数にカウントでいない素材やソフトに拡張しようとしている。これは、経営重心2.0である。素材産業は、トンや平米で数えられることが多いが、江戸時代以前は、そういう単位はなく、その素材にマッチした自然数でのユニークな数え方をしていた。酒の合、反物の疋、繊維の梱などである。よって、そういう原単位で数えれば適用可能だ。また、ソフトも、ユーザーの数、マイナンバーは自治体の数の1000とか、N倍則などの発想が適用できよう。
また、固有周期では、1年以上の分析だが、1年以内でも、中国での季節商戦などサイクルはあり、商社や卸などが該当する。輸送なども同様だろう。ここは、いわば非製造業の領域でもある。また、当初から、サイクルがない場合の議論はあるが、サービス契約にしろ、期間はあり、全くサイクルが無いというものはない。ただ便宜上や実用上は、そういう区分けでもいいだろう。今後の課題は、自然数でも数え方の単位が異なる金融などへの拡張であり、経営重心3.0といえよう。
こうして見ると、それぞれの可算非可算、大きな周期での1年以上、1年以下、便宜上サイクル無という分類が、製造業、非製造業、金融、などとの区分とも関係していることが分る。これは、今後の考察課題だろう。
ジャパンストライクゾーン(JSZ)
第三は、ジャパンストライクゾーンに関して、である。
図表3 JSZ考察
なぜ、日本が1億を超えるとダメか、は日本の人口が関係するかもしれない。あるいは周期では、5~10年というのは日本のワーカーのある部署の平均勤続期間8年の中にはある。
また、国際競争力に関しては、縦軸に顧客の海外割合、横軸に社員や株主の海外割合をとると面白いかもしれない。横軸がある意味、日本的なサイクルを反映しやすいであろう。縦軸は、世界市場の広がりに比例するので、ボリュームを反映するかもしれない。この分類ではちょうど右上が部品、左下が重電や旧NTTファミリーなどがくる。これらの点は、更に考察を必要としよう。