2015年12月4日 東芝・富士通・ソニー(VAIO)PC統合~TVで放映されなかったコメントと分析

東芝・富士通・ソニーのPC統合の件で、12411時のTV東京WBSでコメントした。なお今日は午前からお台場での国際ロボット展、計測展に行き、歩き詰めでいささか疲れていたので表情が暗かったもしれないがニュース内容によるものではない。また、その後18時から会食もあり30分しかなく、実際に録画されたのは20分くらい。

TVでのコメント

TVの時間制約から、また、視聴者の注目を引き付けるために、引用されそうなコメントは、①PC統合の背景、②東芝不正問題との関連だろうと、思われたが、やはり、「本来はタブレット等の新製品開発を怠り目先の利益を出そうとしたツケが出た」、「不正会計問題が表に出なかったら社内の抵抗勢力にあい、踏切がつかなかった」、「生き残る余地はある」とうところ、数分だった。

なお、TV東京側の解説では、東芝の不正問題の結果、PCのリストラとなったとしているが、これは私の認識とは異なる。2年ほど前にPC部門をデジタルライフに移した時には少なくともリストラ対象だったと考える。もちろん、社内の抵抗もあり、今回の不正問題で、前に進む可能性はあろう。

放映されなかったコメント

放映されなかったが、指摘したのは以下だ。元々、東芝は、ダイナブックを出し、ノートPCのイノベータであった。富士通もPCではNECと並ぶ強豪であった。ソニーもVAIOなど特色があった。しかし、東芝でいえば、ITバブル崩壊後から、市場でミニノート、さらにタブレットが登場したが、過去の遺産に拘り、自身のそうした新カテゴリーの製品投入は後手に回り、市場開拓が遅れた。自社でNANDSSDがありながら採用も遅かった。

この頃の東芝のPC事業は、90年前後の革新性と真逆であった。さらに、富士通とHDDとケータイを事業交換してからは、製品ライナップの縛りがあったとしても、タブレット市場が本格化しても、何ら手を打てず、まさにイノベーションのジレンマの通りだったのである。これは、富士通やソニーなども同様であった。市場をリードする新製品は出てこなかった。

 

コストダウンのためEMSシフトだが付加価値も低下

ITバブル崩壊後は、日本メーカーも生産をEMSに移すなどコスト低減に努めたが、同時に開発力も失われていったのではないだろうか。富士通などは調達力が優れソリューションに逃げられたが、東芝はそれも難しく、社内的には、ある程度の業績を維持するために、無理に業容を拡大したが、付加価値が増えることはなく、最後は粉飾をするに至った。まさに、ITバブル崩壊後はリストラをし過ぎ、短期利益確保のため、開発を疎かにしたツケが回った。

事業継続の最低規模の合従連衡

セルサイドアナ時代に提案して10年、あまりに遅い統合であり、手遅れの可能性もあるくらいである。実際は、東芝でも2012年あたりから、ソニーも分社化の前後、水面下では統合に向けた動きはあっただろう。この頃、NECも、BtoCはレノボに売却、富士通もいろいろ検討しただろう。しかし、富士通では、PC部門が健闘していたが故に、決断は遅れ気味だったろう。もちろん、各社で、リストラや撤退の前に、日本勢で結集するのは当然でエルピーダ、ルネサス、JDIと同様である。

それでもまだノートPC市場が拡大中であれば、他社への有利な売却など、いろいろ手が打てたが、もはや、世界市場遅が右肩下がり、タブレットやスマホに浸食されている現状では打ち手はすくない。開発など、事業継続に必要な最低限のリソースを投入できる規模にはなっていると考えたいがギリギリだろう。今後、生き残る道は、シニア市場特化、アーティスト特化、いろいろな現場特化などの、カテゴリーキラー、ロングテール市場を取りに行くしかないだろう。くれぐれも、「ニッポンPC連合で世界に向け復活」など甘い夢を見て、汎用のボリューム市場に行こうとしないことが肝要だ。もちろん、このPC統合が成功すれば、TVやケータイでも、水面下の動きは加速し、シャープのリストラも巻き込もう。それゆえに、重要である。

経営重心理論通り市場1億台を超え悪化してきたPC

経営重心的にみると、90年代は、国内PC市場の拡大は世界PC市場拡大と軌を一にしていたが、2000年代は、PC全体市場が1億台を超えると、世界は拡大するのに、国内市場は飽和、EMSの台頭、海外勢の参入もあり、単価ダウンが厳しかった。これは、スマホやTV、デジカメも同様である。