2016年1月16日 INCJ再考~ミイラ取りがミイラになるリスク

 

シャープや東芝を巡って、再び、INCJに関する報道が増えている。そこで再び取り上げる。http://www.circle-cross.com/2015/08/25/2015822-産業革新機構の折り返し点の評価/

 

INCJは会社であり、2013年度までは、P/LB/Sなどを公表していた。

 

http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/sankatsuhou/kakushinkikou/pdf/hyouka_fy25.pdf

 

 ここでの特徴でもあり、指摘もした問題点は、運用会社のP/LB/Sと、運用先が分別勘定されておらず、一緒になっていることである。総資産は1.4兆円だが、その大半の1.2兆円が、ルネサスやジャパンディスプレイなど上場株の時価評価と簿価評価運用資産であり、2012年度からの増加分は大半がルネサスの値上がり分で、純資産は8500億円弱だが、これも同様にルネサスの貢献が大きい。P/Lではほとんど赤字であが、2013年度に売上がたち黒字化したのはジャパンディスプレイ売却益である。

 

 

 

 それゆえ、開示していない2014年度の、P/Lは、一部の売却益程度で、赤字で、2015年度はルネサス売却次第だろう。B/Sも、ルネサスやジャパンディスプレイの時価変動部分くらいだろう。

 

 仮に現時点で、ルネサスを700円、ジャパンディスプレイを300円とすると、2013年度末に比べ、それぞれ100円、500円値下がりしているから、1150億円と1050億円で計2200億円減っており、純資産は8400億円強から6200億円になり、自己資本比率は60%弱から50%強となる。

 

 もし仮に、昨年春に、憶測記事通りシャープに5000億円出資をしていたら、タイミングにもよるが、180円前後が120円に下落しているので、1500億円は損失、破綻すれば、5000億円の損失であり、乱暴に単純計算すれば、INCJ自体も債務超過の危機がある。

 

 これも悲観的なシナリオで、今後年度末までに、シャープに2000億円を出資し、その後、日経平均が下落、厳しい不況が到来、シャープが再度、破綻の危機で暴落、また、ルネサス株も下落し500円程度、ジャパンディスプレイ株も200円程度になり、東芝と一緒に出資しているランディスギアの減損などがあれば、かなり際どい。そこに、簿価形状している投資先を厳密に判断し減損すれば、危機的だ。

 

 もちろん、普通の株式会社ではなく、バックには政府があり、上記はあくまでシミュレーションだが、分別勘定していない限りは、傘下に、ルネサス、ジャパンディスプレイ、シャープなどの筆頭株主ということは、まさにジャパンハイテクHDということになり、本来は、1兆円以上、自己資本比率80%あるべき、純資産は極めて薄く際どいことになる。これ以上、変動も国際競争も激しいハイテクデバイスを傘下に収めれば、ミイラとりがミイラになりかねないのだ。INCJを救う、産業革新機構再生機構でもつくるとなるのは悪い冗談だが、早期に分別管理をするか、役割や体制を再考すべきではなかろうか。