この期に及んで、シャープ再建を巡る報道が錯綜している。日経新聞は、「メインバンクが、INCJ案と鴻海案を比較して、金額では鴻海案が多いが再建スピードや収益改善効果が高いため、INCJ案で大筋合意、月末のINCJの革新委員会で詳細を詰める模様」、とし、昨日のWSJや朝日新聞は、「鴻海は支援総額を53億ドル(これでの5000億円から約6300億円)積み増し、INCJも2000億円を3000億円の出資で液晶を分社、交渉の焦点がメインバンクの判断に移った」、としている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H4V_R20C16A1MM8000/?dg=1
http://www.asahi.com/articles/ASJ1P5R4NJ1PULFA030.html?iref=comtop_6_03。
日経新聞は、INCJ寄りであり、WSJや朝日新聞は鴻海寄りの印象。いずれもシャープの意向は不明。なお、昨日の株価は、WSJが報じた後、151円まで上昇したが、INCJ決定報道後、128円まで下落した。
INCJ案も鴻海案も、液晶分社化語後に、東芝の白物と統合は、共通であるが、JDIについてが、大きく異なり、おそらく経産省・INCJはJDIとの統合を何としてでも実現したいようだ。
金額は、実態はほぼ変わらない。また、両者とも、以前は液晶会社に分社といっていたのが全社を対象としたものになっているが、カメラモジュールやコピーも魅力的であり、あるいはTVや、セット部門にもある液晶応用技術が重要と認識したのだろうか。
不明な点は、堺の扱いであり、いずれの報道でも触れていないが重要である。鴻海案の場合は、テリーゴー個人の分に加え、当然、全部を買い取るのだろうが、INCJ案の場合は、テリーゴー個人から1/3を買う必要もありえ、既に黒字化しているだけにコストが高いだろうし、そのままの状態で残れば、K2のTV向けパネルとのすみわけや技術者の扱い、堺からのパネルを買い取ってモジュールにする部分もあるなど、整理をする必要がある。
更に、INCJ案では、JDI統合ありきなので、堺を除いても、白山、石川、能美、茂原、東浦、鳥取、天理、三重、亀山と9拠点の整理も必要だろう。また、JDIにとっては、中小型パネルに絞りこんでいるのに、TV向けなど大型パネルも手掛けることになり、上記の堺問題も含め課題が多い。
2018年めどに統合との話だが、ちょうど、スマホではOLED化になるタイミングであり、ほとんどの工場が不要になるか、OLED転換が必要である。その中で、拠点整理統合となると社員、特に技術屋の士気が問題となろう。
仮に、INCJ傘下となった場合に、鴻海が対抗措置として、鴻海が堺を現状であるいは100%買って、スマホにも参入するとどうなるだろうか。JDI・シャープ、SDP(堺)、パナソニック姫路の3社で、減りゆく液晶市場を3社で、血みどろの戦いをするリスクもある。さらに、鴻海と関係の深いとされる中国当局が独禁法でJDIとの統合を許さないという事態もあろう。
技術流出を恐れる声もあるが、既に、堺の技術者は鴻海傘下にあり、鴻海に好意的だというし、それ以前に、NEC秋田から天馬に技術は移っている。シェアや特許、SID発表などからも、日本が液晶で強いというのは幻想であり、韓国・台湾はおろか、中国とも差はないだろう。また、シャープより堺の方が、給料がいいという説もあり、シャープの技術者が堺に流れる可能性も高いだろう。
本体への出資、液晶の分社、その後の本体の東芝白物へのINCJ主導での統合は賛成だが、JDIとの統合や堺の件は、不明で課題が多く、OLED化や、スマホ不況で厳しいJDIと共倒れになることは避けたい。もっと鴻海とINCJが話し合い、グローバル視点で液晶産業を考える必要があろう。