2016年1月22日 シャープ再建をステークホルダーの立場から考察

 

INCJと鴻海のシャープに対する再建案の詳細が不明だが、報道の範囲での両案を、各ステークホルダーの立場から整理して考察してみたい。これが結論というわけではなく、議論を深めるたたき台になればいいだろう。ステークホルダーとは、両銀行、株主、従業員、国民(税金の出し手として)、などである。それぞれにとって、INCJ案を上段、鴻海案を下段として、○、△、×で評価した。

 

まず出資だが、多くの関係者にとって潰れないことは良いことではあるが、既存株主にとっては、希薄化になる。税金の出し手という国民にとっては、鴻海の方がありがたいはずだろう。銀行の負担は、銀行には債権放棄と追加出資ゆえに、マイナス(潰れるよりマシという意見はあるかもしれないが)。鴻海案なら、プラスのはず。

 

スキームでは、INCJの案は、これまでのルネサスの例を見ても安心感があるが、それなりに従業員もリストラはされる。鴻海も同様だが、堺の例では、リストラが厳しいわけでない。迷惑なのは、JDIの役職員であり、鴻海案なら、関係ない(シャープの技術が流れて中期でマイナスとの見方もあるが)、INCJ案なら、リストラや拠点の統合など影響をうける。

 

こうしてみると、鴻海案が、シャープだけの話であり、シンプルであり目的が明確であるのに対して、INCJJDIや東芝にもかかわる分、話が複雑化し、二つの目的を追うことのマイナスが大きく、特に、JDIの関係者に負担が大きい。

 

それでは、仮にINCJが、JDI統合を考えないとするとどうだろうか。金額では、同規模だが、鴻海が銀行に債権放棄など負担を強いないなら、銀行にもメリットが大きい。国民にも負担は少ない。

 

マスコミに、部分的にリークしあうのではなく、正々堂々と、再建案を、公表し、上記のような表をシャープが作成して、株主総会でも開催し、労組もふくめて、決めるのがいいように思う。それが、オープンな資本市場、民主主義の国のやるべきことではないだろうか。ここまで世間を騒がせたのだし、ステークホルダーやシャープ製品のファン、シャープのファンへのケジメであろう。