2016年2月3日 日立の更なる進化に期待~下方修正の中でグループ再編

 

2317時より説明会。いつもと同様、中村CFOによるプレゼンだったが、今回でCFO退任となり最後のプレゼン、下方修正は残念だったろうが、グローバル景気変調の中では仕方がない面もあり、むしろ、次の2018に向けたCF経営などの布石も打てた思いもあるだろう。大きな課題は、事業ポートフォリオは経営重心®的にも改善したが、地域ポートフォリオの改善、専門性が必要だろう。モノ作り力と強い製品の強化も必要だ。今回は、業績修正より大胆な事業体制変革とトップ人事に注目したい。

 

3Qまでは堅調だが年間下方修正

 

 業績は、3Q累計7.23兆円、OP4084億円、EBIT4109億円、NP1803億円と増益持続、コアFCF1000億円の大台へ、アンサルドやペンタホのM&Aもあったことを考慮すると、評価したい。3Qでは売上2.42兆円、OP1343億円、EBIT1483億円、NP753億円、は計画比80億円上ブレ、最高更新。年間は、売上9.95兆円は不変だが、買収したアンサルド5ヶ月分1250億円が、当初は入っておらず、この分は下ブレ、OP68006500億円、EBIT62005400億円、NP31002400億円。

 

 下方修正の背景は、マクロ的には中国景気悪化やオイル価格下落に伴うものだが、社会インフラ事業を手掛けている限りは、新興国もあり地域ポートフォリオ上はやむを得ないものもある。生産調整や在庫評価など。また、次に向けた布石もあろう。ただ、情報通信の下ブレ幅が意外と大きかった。3Qでは、生産調整-50億円、建機中心に在庫損が-100億円、4Qは生産調整200億円、と情報通信のIOTとストレージなど。3Qでコスト削減が730億円あるが、M&Aでのミックス変化があり、実際は620億円で、半分は材料価格安(電力料金が年間100億円、石油1バレルで年8億円、電力料金4億円)

 

マル情と社会産業が下方修正だが思い切った判断も

 

 セグメント別には、OP(億円単位、括弧内はEBIT)で、情報通信が-210(-310)、社会産業が-260(-320)、建機-30(-20)、オートモが-70(-70)など。

 

情報通信は、SI系は堅調だがプラットフォームが大半でIOT立上げ遅れ-60、ストレージが-100。ストレージは米で業界再編が起きる中で、①大容量からデータ解析へニーズ・シフト、②クラウド化、③HDDからSSDへ、という流れが急である。近年、収益性が徐々に低下する中でペンタホ等買収をしていたが、影響が避けられなかった。

 

また、NTT等キャリア投資が激減、脱ハードで懸念だったNWは事実上撤退(なお、日立国際の通信事業は防災無線などが中心で別であり対象外)OP外でも、減損等リストラ費用も計上している模様。これはIRデーでも示唆されていたが、思い切った決断だ。

 

電力社会では、石油ガスの急落の影響で生産調整が-60、中東の化学プラント等、付加価値が薄く値段交渉が長引きリスクが高い事業の終息-100、性能不良対応が-100等。この決断も、よく思い切ったと評価できる。プラントは受注高ではなく限界利益・CF創出力で管理、今後は得意な医薬、アジアに集中。

 

中国エレベータが懸念だが、3Qまでは、それ程ではないが、4Q以降、2016年が厳しそうだ。回復の兆しもなく、値下げ対応していないので、シェアも減っているようだ。

 

OP外で、リストラ費用が800億円となり260億円増えたが、非上場会社も含めたリストラだが、100億円が人員削減で5000人相当。ただ、平均的に人員を減らすのではなく、事業別に適正化をする。この800億円の効果は2015年に220億円、2016年に、2年で400-500億円あるようだ。

 

2016年度は、上期はy/y減益、通期は、視界不良だが、減益だろう。建機や材料、白物、クルマ、エレベータは引きずるだろうし、情報通信も再編効果は見えにくい。組織再編や撤退、事業売却も多そうで、定量的には難しい。なお、報道では、INCJ主導の白物家電再編には加わらず、東芝のメディカル部門オークションには参加してないようだ。

 

組織再編はグループ再編への布石

 

 これまで、この世界「インフラ不況」の中で、グループ再編が急がれると、期待してきたが、今回は、グループ本格再編の前の本社の組織再編が発表された。業種地域毎に、ユーザーと共創、オープンイノベーションで創り上げるフロント強化体制となった。具体的には、電力・エネルギー、産業・水、アーバン(ビル、鉄道など)、金融・公共・ヘルスケア、の4業種で計12のフロントBU、横串のサービス&プラットフォームBU、を、サービス主体の事業とし、その下に、プロダクト主体の事業群として、インダストリアルプロダクツBUとグループ会社(製品、部品、材料など)を位置づけ、また、同時に、米、EMIA他、アジアパシフィック、中国の4地域で同様のフロント機能を持たせ、これら計14BU長と上場会社のトップが東原社長に直に報告する体制となった。日立は、2009年よりカンパニー制を導入、各社を上場会社同様に、自立経営を徹底し、効果も出たが、5年経過し、新技術の登場や、産業構造も変化する中で、複雑化してきており、社会インフラ中心に進める上では、評価できる組織変革だろう。

 

ここでの鍵は、情報通信であり、大げさにいえば、日立「本丸」の「マル情」の発展的「解体」ともいえる。まだ詳細は不明だが、マル情は、NWが撤退となり、金融BU、公共BU、および横串のサービス&プラットフォームBUに分かれるのだろう。ここで不明なのが、日立キャピタルや日立物流などであり、質疑では、グループ各社に属すると言われた。

しかし、組織図では、「製品・部品・材料など」とあり、しかも、プロダクト主体の事業群とあるので、不明である。上場会社でもあり、これからだろうが、金融BUや、横串のサービス&プラットフォームBUに分けられるのではないか。また、来期以降、セグメント開示のおいては、BU別に分けると、「マル情」部分を中心に、相殺消去が多くなり解りずらいことも課題だ。