日本電子(JEOL)の昭島本社を訪問、開発館を見学した。この10年は、説明会は出たり、IRに来ていただいたりしていたが、本社に行くのは20年以上ぶりである。やはり本社や現場は素晴らしい。応接室には、江崎玲於奈博士を始めノーベル賞受賞者の色紙がある。また、今度、野依博士も来館されるようで、記念植樹の準備をしていた。
この開発館は、正門から入って少し歩いたところにあるが、感心するのは、待合の1Fのロビーが広く、記念館、展示室を兼ねていることだ。真ん中に、1947年開発、未来科学遺産登録の歴史的な透過型電子顕微鏡「DA-1」が当時のノート等と共に置かれてある。同社の電子顕微鏡は、数々のノーベル章を始め多くの科学的な発見に貢献したが、そうした関連展示もある。
さらに、周辺に実際に開発現場があり、ガラス張りの窓を通じて、様子を見ることができることだ。共同研究者やユーザー等は、様子を見ることができ、同時に展示コーナーでもあるので、外部の投資家・アナリストやマスコミにとっても実物や実験の雰囲気が分かりて、一石二鳥である。レストランでも、厨房での調理の様子を見せる例が増えているが、メーカーでも、その主役である、モノや、モノ作りの現場を、できる限り、外部、ステークホルダーに見せるといいだろう。また、こうした「入り口」、現場を見せる姿勢が、オープンイノベーションの一歩にもなる。
オープンイノベーションという点では、栗原権右衛門社長は、日本分析機器工業会(JAIMA)の会長として、分析業界の中で、大学なども含め、取り組んでいる。
これまでは、大手を除けば、技術や製品毎に得意分野をもつ中堅メーカーが個別、縦割り応用分野を開拓したが、技術の高度化で、分析評価項目は増えている。分析機器メーカーが、オープンイノベーション、コラボで、アプリケーション対応をすれば、ユーザーにもプラスである。顕微鏡では、海外ではカールツァイスは、電顕と光学顕微鏡の両方を持つが、日本では、JEOLとニコンで分かれているがコラボすることで対抗でき、ユーザーである研究機関にとってもメリットが大きい。
医用機器業界は、近く東芝メディカルシステムズの売却を契機とし、さらには日立グループでも再編の中で、日立ハイテクや、メディコ、アロカ等も含めた動きも予想され、大きな業界再編が起きるかもしれない。JEOLにとっても、影響がないわけではないだろう。
JEOLは、全社売上1050億円、OP65億円計画だが、医用機器は売上230億円、OP35億円と、売上は20%だがOPでは半分近い。主力は、生化学自動分析装置であり、シーメンス向けが半分以上を占める。売上の半分は、ハードで半分強がシーメンス向け、あとが国内で富士レビオ向けもあり、来期にむけ100台程度、数十億円となろう。
開発現場兼展示室も見学した。シーメンス向けにOEMで供給している「バイオマジェスティー」シリーズは、水で希釈して、試薬のコストが下がるのがポイント。5つの円形テーブルにロボットアームで、希釈した検査薬を入れて操作する。最大6つまで連結できる装置も用意されている。クリニックでお世話になっている血液検査の舞台裏がわかって面白かった。装置の雰囲気は、初期のLCD製造装置に似ている。検査センター向けにシェア80%のようだ。ここでも、A&Tや関東化学と連携している。
最新鋭の電子顕微鏡の開発室では、著名な教授が打ち合わせだか実験をしていた。一台、数億円し、年間、20-30台位出荷。分解能は1Å以下。物質の研究に欠かせない。
今回、大きく関心を持ったのは、以前から注目し、昨年の国際ロボット展でも見学した3Dプリンタである。といっても、街中の安価なものではなく、超精密次世代3D積層造形であり、JEOLはこの技術研究組合「TRAFAM」に、近畿大、東北大、産総研を始め多くのメーカーと共に参画。