ディスコ関家社長と投資家アナリストとのスモールミーティングが先週後半にあった。9、10、11日と3回のコマがあり、ネットで予約でき、10日の部14時~16時に参加した。参加は7名。事前に質問を出し、IR側で共通の質問6項目から社長が回答、その後で順次、個々の質問やフリーディスカッションとなった。簡潔な回答であったが、共通質問以外も多く、時間は一杯であった。なお、事前に注意もあったが、足元から今来期業績についての質問やコメントは一切不可。
ディスコとは長いお付き合いで、先代の関家氏や現会長の溝呂木氏とは、何度か個別でお会いし、SEMIなどの会議では他の業界トップと共にテーブルを囲んで食事を共にして歓談したこともあるが、関家社長とは、説明会でたまに質問する程度であり、こうした面談は初めてである。
経営実績や説明会でのやりとりから優秀であることは分かるし人柄等も想像でき、業界関係者や他のアナリストから良い評判は聞く。しかし、実際の経営者としての評価は分からないし、こういう面談では一端しかわからないだろう。それは、長年担当し、役員就任前からお会いし、会食等も含め、良い時も悪い時も一杯お付き合いさせて頂いた他の経営者に対する評価や想いとは全く異なるものである。その上ではあるが、経営議論だけでなく、社長に対する印象も記しておきたい。
質問項目
共通の質問は、①為替感応度と更に円高が進行した場合の施策、②WLP関係を除くと受注は弱く今年の半導体投資は弱いのではないか、業界構造変化があるのではないか、③新技術動向、データーセンターなど、④IOTなど成長ドライバー、⑤配当株主還元、⑥経営管理、WILL会計など、である。
私がした質問は、⑦これまでは半導体メーカー向けに対象はシリコンだったが、今後は電子部品向けにセラミックスや、Gaヒ素、GaNなど硬い難削材が増える中で、消耗も多くなりユーザー特性も変わるが、どうか、⑧社是の「切る削る磨く」は、微分・引き算型の加工だが、3Dプリンタなど積層造形の積分・足し算型加工が増えてくるし改良されると中期ではどうするか?特にレーザーではなく電子ビーム、開発くらいはしておくか?、⑨筐体はやらないのか、⑩ロジの改善は?(広島から神戸経由で中国奥地は遠い)、⑪450mmへの見解、⑫後工程の国内合従連衡への意見、⑬地震の影響、である。
それ以外の質問は、⑭収益構造5:3:2(原価:SGA+R&D:OP)について、⑮世界景気シリコンサイクル厳しいのでは、⑯ROEについて、⑰ガバナンスコードと経営管理・社内体制、⑱サービス事業、など。
回答の概要の印象
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「100円でも何もしない。80円でも利益が出た。時間をかけてゆっくり60円になるのなら、対応可能だが、急激な円高は困る。」
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「ユーザーの数は減っても、こちらは、交渉力はある。前工程から中工程や後工程に来ても勝てる。前工程のメーカーは単価700万円では難しいだろう。」
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「WLPには注目している。データーセンターやクラウド化は、NAND等の需要にプラスだろう。MSでは海中に沈めて冷やす例も出てきた。いずれ船にデーターセンターを入れて動く時代だろう。」これは、同感、これで為替リスクなくなる。「2020年に、ダイサー、レーザー、グラインダなど、現在と、それほど売上構成は変わらないだろう。」
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「IOTの予想はしない。競馬予想と同じ。ただ、クルマ1億台のうち半分がIT化されると、一台に6インチウェハー一枚分くらい要るから5000万台分がある。センサー等も多い。」ここで、私がSUMCOのデータを紹介し、クルマでは6インチ換算で30平方インチだと補足した、ほぼ1枚分。
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「工場パンパンでそれほどカネは余っていない。株主還元は方針通り。」
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「個人WILL会計は、経営課題がわかるスーパーツール。社内統治には、原則治、経済治、オピニオン治、信頼治があり、原則治は、ディスコバリューズ、経済治は、WILL会計でいける。オピニオン治と信頼治はまだツールがない。また、この4つの治だけではなく、もう一つくらいの治がいると思って悩んで考えているが、まだ無い。」このWILLは、呉工場見学記でも紹介したが、簡単にいうとアメーバ―経営に近く、それにモチベーション要素を入れ、チームではなく個人ベースにして、発展させたもの。この4つの治の話は、IRによると、最近、社長が話すことが多いらしいが、社長のオリジナルかどうか、背景は不明。原則治はいわゆる社是のようなものだろうし、経済治、信頼治もわかるが、オピニオン治は不明。また、「もう一つ何か」は、「文化・風土」治だろう。つまり、言われたりや損得ではなく体に染みついた習性、本能のようなものではないか。であれば、これが一番強力だ。そして、それを計測するツールは、我田引水だが経営重心®であろう。