2016年5月3日 日本電産の決算説明会(4月26日開催)

 

いつもながらの永守節だが、プレゼン時間が多く、ハプティクとクルマや家電商業産業、M&Aの話題が多かった。アナリスト側も、HDD関連の質問は減ってきた。プレゼン内容や質疑からも、もはやHDD向け部品メーカーではなく重電、機電メーカーである。

 

2015年度はハプティクが足を引っ張る

 

業績は、2015年度は売上1150011783億円、OP13001245億円、NP900918億円は立派。OP社内計画は1400億円だったそうだが、3Q50億円下ブレ、4Q100億円下ブレ。3Q50億円、4Q65億円はハプティクによる影響であり、3Qからのユーザーの生産量急減をうけ、保守的にハプティク関連の設備は34億円全額減損した。

 

2016年度は売上12500億円、OP1300億円、NP980億円と、売上1兆円、OP1000億円以上が定着、NP1000億円に近付いてきた。HDD市場は低下だがミックスは改善、精密小型モーターでは増収増益、ハプティクの損失改善もある。クルマや家電商業産業は1010億円増収137増益へ。

 

中期はクルマ・家電商業産業の二つが牽引

 

 中計VISON2020に向けては、先行きが見えやすく安定成長が可能な、重点2事業のクルマ2713億円、や家電商業産業2834億円にフォーカス、クルマでは2026年の注文もあり、想定以上。エンジニアが600人不足。注残だけで、クルマ5000億円、二事業で9000億円をこえ、2020年オーガニックで計1兆円、Opm15%を達成は見えている。M&Aも含めれば、クルマ70001兆円、家電商業産業40006000億円。

 

ルネサスとは言わないが次のM&Aは半導体か

 

 モーターの付加価値向上、あるいは売上10兆円構想に向け、外部調達の最大のコスト要素である半導体の内部取り込みは大きな課題であろう。一時、マスコミ報道もあったルネサスへの出資の言及はないが、こうした状況から見れば、引き続き注目点だろう。あるいは、ルネサスのような半導体メーカーが鍵を握るだろう。

 

オーガニックとM&Aのバランス半々が重要

 

オーガニックとM&Aの半々が大事だというポリシー。実は昨年度は8件の案件があったが値段が23割高く見送った、これは高く買いすぎて減損するリスクを避けるためである。家電商業産業では収益性が改善したが、これはまず、①トップ交替でOpm15%徹底、②事業の再編、工場や拠点集約、③新製品投入、開発投資というプロセスであった。M&Aでは、減損がない適正価格で買い、その後は、こうしたPMIが重要である。

 

モノ作り強化のための生産技術研、グローバル人材のための大学校

 

今後、10兆円に向けて強化するのは、生産技術強化であり、200億円をかけ、京阪奈地区に研究所をオープン、また家電商業産業では、グローバル人材が必要だが幹部養成の大学校を開き、Opm15%を徹底する。今回、役員の異動も多かったが、常に緊張感を持たせ、社外役員を増やし、永守氏に意見言えるような人材を登用する。

 

ハプティクが無い場合の経営重心®は左下へ

 

ハプティクに関しては散々な結果で失敗だったと明言した。歩留まりも改善、高い評価を受けていたが、3Qより市場急変でダメだった。リスクが高い市場で、それほど注力すべきではないとした。しかし、ハプティクは、本来スマホだけでなく、クルマや広範な応用が期待され、VRにも展開する重要なインターフェイス技術である。

 

経営重心®が、これまでの計画ハプティックが無い場合と、ある場合+クルマの変化を踏まえた場合で、どれだけ変わるか分析する。2030年にハプティックが大きく伸び30%を占める場合(ケース1)、逆に、全く伸びない場合(ケース2)に分けて考察した。1985年から2030年まで、二つのケースに分け、経営重心®の推移を計算すると下図のようになる。

ハプティックが大きく伸びるケース1では、一時、左下にシフトした経営重心®が回帰することがわかる。今回の失敗を踏まえハプティクに慎重、またクルマや家電商業産業が予想以上であることから推定するとケース2であり、部品メーカーというより機電メーカーへの道を突き進むことになる。この領域は、まさにジャパンストライクゾーンで、三菱電機やオムロン、ファナックなど相対的に日本メーカーが強い領域である。

 

信長・秀吉・家康

オーナー系の急成長の会社が、トップダウンの早い決断力と変化への追従力で短期ボラのリスクをとる右上の領域から、成長に伴い、会社のリソース、蓄積や規模を生かす左下へ行くのは自然ではある。