5月13日15時半~16時半の説明会に参加、出席者は、澄田会長、小野社長、棚橋CFO。棚橋氏より業績について詳述、澄田会長が中期戦略、質疑は小野社長という分担。出席者は決算ピーク時にも関わらず30人程度と多い。通常は、数人の質問者だが今回は私が中心に質問。
長年付き合い、取材回数、説明会参加も多く、セルサイド時代は担当しレポートも書いたが、10年毎に業態を変え、特に2010年以降はM&Aも多く、捉えどころが難しい会社でもある。
半導体商社からスタート、業態を変容し成長
転換点は2004年
事業領域は、ハードディスクドライブ、電子デバイスの商社型ビジネスに加え、半導体設計用ソフトウェア(EDA)、自社製テストシステムRETSET、ASIC受託開発、組込ソフト開発等に広範にまたがっている。かくして、シリコンサイクルに翻弄される半導体輸入商社から、チップからソフトや製造装置まで含めた半導体産業の「サポータ」に変貌を遂げた。
成長戦略とM&A
2007年には構造変革を成し遂げた澄田氏が社長に就任、2008年には東証二部に上場、リーマンショックでも減収減益ながら同業他社が赤字転落する中で、黒字を確保、2011年には東証1部、2012年には創業25週年を迎え、新たな成長段階に入りつつある。
M&Aで第三の成長期へ
業績は安定したものの、一方で、売上やOPはかつての半分程度にとどまり伸び悩みであることも事実であり、2013年に社長に就任した小野氏の下、2012年のレグラス、2014年はガイオ・テクノロジーとSTAr Technologies,Inc.、2015年はギガヘルツテクノロジーと等のM&A、また、台湾事務所開設やVCの出資など、成長戦略に貪欲である。
セグメント分析
現在の会社側の区分は、設計ソリューション事業として、ケイデンスのEDA、三栄ハイテクス、レグラス、ガイオ、ITアクセス、組み込みシステム、粗利率は安定して25%、この中で、EDAは代理店事業、それ以外は子会社が中心だが設計が付加価値である。プロダクトソリューション事業として、テスター、STAr、HDD、デバイスであり、粗利率は同様だが売上で大きく変動する限界利益率型の事業である。テスター、STArは、テスター関連でありシナジーがある。HDD、デバイスは商社的事業であり、今後、デバイスでは単なる半導体部品販売からは撤退。
今後の成長の鍵
それゆえ、今後の鍵は、①SPEでのテスターの自社製品の広がり、②ケイデンス依存度、③組込受託設計での採算性向上とM&Aによるシナジー発揮、④IOT分野、制御系の取り込みだろう。IOT関連は社会インフラや産業分野で、画像や制御が中心だが、どこに絞るかが重要だろう。
経営重心®分析
イノテックの経営重心®を1995年度から2015年度まで5年毎に分析する。ポートフォリオは下図のように大きく動いているが、経営重心®の位置は、半導体に近いサイクルで、固有周期4年弱で安定、固有桁数4~6で推移している。
現状ではポートフォリオ管理上もガバナンス上も問題はないが、IOTという中で、クルマ、医療などM&Aを通じて、広げていった場合は、更にドメイン広さが拡大し、2を超えてくると、よりホールディングス的になる。
決算動向・中計など
業績は、2015年度は売上312億円、OP10億円、EDA安定の中で買収したガイオが好調、テスターも良かった。2016年度は、減収減益、売上295億円、OP8.5億円だが、まさにポートフォリオ入替の最中であり、デバイス単体売りからは撤退、研究開発を強化、新規を伸ばす。
質疑では、ケイデンスの影響は不明だがプラスマイナス両面があり、OrCADに期待。手のりテスターは評判もよく引き合いも多いがまだ導入時期。震災のテスターへの影響は不明。また、半導体商社業界の再編の影響は、既にボリューム系のチップ売りは縮小し影響はないが、業界全体はEMSの方向であり、イノテックの方向性と異なるようだ。
なお、先週のお台場のIOT・組込マイコン・クラウド・ビッグデータの展示会でも大きいブースで画像処理のレグラスのFAやドローンカメラ等が注目されていた。