日本の電機産業分析に関連して、技術予測の当否や研究開発マネジメントも長年のテーマであり、87年より研究技術計画学会(現 研究・イノベーション学会)に入り、また2012年からはMOT学会にも参画、研究を続けている。そこでの大きな課題は、「日本では、なぜ、イノベーションが起きにくいのか」であり、IRだけでなく、経営トップや研究開発トップ、ムハムハマ氏をはじめ、研究者技術者や大学関係者(MOT、現場の研究者)及びOB、経産省など役所、ETT等シンクタンクの方々とも議論を重ねている。
「2000年への技術戦略―産業と企業を変える人間科学重視の技術潮流」(NRI編 若林他1990/11)
「日本の電機産業はこうやって蘇る」(若林 洋泉社2011/3)
「日本の電機産業に未来はあるのか」(若林 洋泉社2009/3)
http://www.circle-cross.com/2016/06/20/2016年6月18日-なぜ国家プロジェクトは予測が外れ実用化が難しいのか-研究開発の在り方を問う/
http://www.circle-cross.com/2015/03/15/2015年3月15日-最難関-東大理3登場と高度成長前の理工系ブーム/
http://www.circle-cross.com/2016/06/11/2016年6月10日-研究開発費を考える/
冷遇される日本の技術者研究者
以前から、自身の同級生等も含めて日本の研究者技術者の処遇は酷く、それが学生の理科離れ、理工系学生のメーカー離れの大きな要因だと、多くの関係者が指摘してきた。東大でも進学振り分けで電子工学科の人気が急落したことを指摘したが、大きな反響を呼んだ。http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20060417/101387/?rt=nocnt
日米年収格差の単純比較は難しい
こうなると、とても、日本の企業では無理だということになるが、果たしてそうだろうか。日本と欧米や中国韓国などとの年収比較は、年金制度や、税制、報酬の中でのストックオプションなど、社会制度そのものが異なり、単純比較はできない。
年棒は直ぐにでも倍にできる
したがって、年金制度など福利厚生を辞退すれば、直ぐにでも1.5~2倍にできる。
能力曲線と賃金曲線の差が会社人事に歪をつくる
野球選手やアナリスト、そして本来、技術者や研究者も、能力を発揮できるのは40歳までであり、実働期間が少ない。
技術者が守りに入る
それゆえ、まだ貸しを返してもらっていない50歳くらいで、リストラがあると、より一層、不満が大きくなる。
技術者の半減期が早まる
また、どんどん、技術進歩が速くなる中で、かつてと異なり、技術者の「半減期」が、どんどん短縮化、いわば、技術、技術者の不良債権化が起こる。
年俸制で、いったん引退し休む
もし、技術者をいっそ35-40歳定年、あるいは、年俸制にして、その代わり、その能力に応じ、3000万~1億円払えば、こうした問題点はなくなる。まとまった資金があれば、引退して趣味の世界もある、起業するのもよいし、大学に入り直し、MOTやMBAを学び、もちろん、専門分野を極め直すのも良いだろう。自身に満足感もあり将来の展望があるので、後輩の邪魔や、将来のポストのための妙な我慢ゴマすり、無駄な仕事もいらない。
高い技術者の流動性が技術を底上げしイノベーションを起こす
労働者全体でもそうだが、日本の技術者の流動性は、米や台湾に比べ、明らかに低い(IT人材ではインドが40%、米韓が10-20%、https://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/global-report.html)。流動性が低い場合は、標準化が起こらず、会社独自固有の知識が多くなるが、それは、本質的なものではない。そういう会社内でしか役に立たない知識やノウハウが出世や会社に残る重要な要素となり、ますます、新技術を排除し、イノベーションを起こしにくくするだろう。
安心安楽の雇用制度年金制度は、リスクのあるイノベーションと真逆
こうして考えてみると、日本にイノベーションが起こりにくいのは、年金と年功序列の硬直した賃金体系(役所勤務に合わせて税制もそれが有利になっている)による社内の歪や技術者のモラルダウン、また、労働市場、特に専門職の流動性の低さであろう
時価は徐々に形成される
もちろん、実際に、技術者の時価をどう認識するかも課題である。これは、鶏と卵の問題。
技術者研究者の流動性とイノベーション