ガバナンス元年といわれ、中長期での投資スタンス、中長期視点が重要になってくる中で、短期志向に偏っている投資家アナリスト側も大いに反省すべきだが、他方で、会社側のIRも中長期開示も、IRデーや中計説明会などの開催も増えてはいるが、一層の充実を望むところである。また、企業側も、投資家アナリスト側も、今期業績特に今期の営業利益中心にP/Lばかりを意識して、B/Sを見ないとする批判も多いが、その典型的がB/Sの開示である。
今期B/S計画の開示を
もちろん実績は開示される(実績もある時点で区切るのではなく、在庫などは期中平均で示すべきだろう)が、予想については、今期も中計でもP/Lだけであり、P/Lはセグメントもあるのに、B/Sは全く無く、せいぜい、FCF、D/Eレシオ程度で、質問で在庫が確認できる程度である。在庫水準をどうするかで、稼働益に差が出てP/Lが変わるわけだから、本来は今期のB/Sの前提がないとP/L予想も検証できない。これに中期では固定資産や暖簾の判断に関係する割引率も開示しないと整合性がとれないはずである。
そういう中で、去る5月27日の電子顕微鏡大手の日本電子の決算及び中計説明会において、今期のB/S計画が開示されており、特筆すべきことだろう。これは、かなり以前から継続的に開示されていたが、以前はあまり認識していなかったが、広く開示という視点から各社を見るようになって再認識した。
中期セグメント目標もP/LだけでなくB/Sも
今回、日立、東芝などのIRデーにおいて、中期でのB/S計画、厳密なものではなくとも、イメージだけでもないかと聞いたが、ないようだ。本来は、セグメントの判断をROAでも行うと言っているのだから、セグメント別B/S開示も、無いとおかしく、割引率もレンジでいいからあるべきだ。
コミットの3年計画と定量性のあるビジョンの5年以上の計画を
会社側の役員会で承認された中計は3年でいいだろう。しかし、日本の場合は、経営の時定数(経営重心®での固有周期)も、トップの在職年数も長いのだから、5-10年でのあるべき、経営の方向性をP/LとB/Sの両面で説明すべきではないか。社長や新経営陣は就任後すぐに3年2期の6年か4年2期の8年とか、想定される在任期間で何をすべきか所信表明を、セグメント別にざっくりとした数字でB/Sも含めて行い、その後に、コミットメントのある3年中計を行うようにすればどうだろうか。
かつては、各社、5年あるいは中期のビジョン作成に注力していた。もちろん、景気変動もあり、5年以上では、計画は違ってこよう。しかし、だからこそ、コミットはしないが、トップの想いを反映した中計が、理念の空回りではなく、P/LとB/Sのある程度の定量性を伴ったものと共に開示されると、議論が深まり、投資家も中期での収益性改善に目が向くであろう。