ソフトバンクのARM買収に関して、推計できるシナジーと、現時点で不明確な点を纏めておきたい。特に、発表翌日の株価急落は、バリエーションだけでなく、経営、B/Sや資金、ガバナンスについての不明確さ、説明不足もあろう。
腑に落ちず不明確な点
まず、これまでのディールと異なり、ソフトバンク側は全員一致であり、社外役員の柳井氏までも賛成した点を強調していたが、いかにも日本的であり、また、そうであるなら、先行的なものではなく、もうタイミングは遅いという見方もできよう。
トルコで、ドラマ的な両社の会見で、2週間で電撃決断決めたというが、10年前から狙っていたとはいえ、それほど短期にDDができ、両方の役員に十分な説明ができたのだろうか。市場でも業界でも、寝耳に水のディールだったのにこれも不自然である。
説明会での、やたらB/Sの健全さを訴え、増資もしない、配当もこれまで通りと、言いながら、自社株買い5000億円の説明が中途半端な印象であり、また、暖簾の説明、計算できる3兆円の規模についての説明が弱かった。
また、保有株の売却で資金が来月にも入るのに、ブリッジローン2年は長すぎる印象であり、何か理由か、あるいは、まだ何かあるのでは?との憶測を呼ぶ。
バリエーション
日本企業の買収としては、過去最高の3.3兆円、PER60倍、ARM技術者当たり時価総額は10億円などが高いとの見方もあったが、一昨年からの、インテルのアルテラ、アバゴのブロードコム買収などは数兆円のレベルであり。違和感はない。装置では、ASMLのエルメスは3000億円であった。
実際、ARMのHPから、2020年の市場環境について詳細な見通しがあり、ここから推計すると無理なターゲットではない。
計り知れないシナジー
とにかく、世界中の向う5年くらいのハードのプラットフォームを抑えることで、それらの開発動向が一目瞭然となるメリットは大きく、シナジーは計り知れない。
それゆえ、過去には、ライバルのインテルはじめ、複数の半導体メーカーが買収を考えたようだが、独禁法があり、難しかった。
今しかない
タイミング的には、ソフトバンクの懐具合もあるが、スマホやIOTの業界の流れからいえば、今しかなかったろう。
中国と再編
また、どこかで、中国ICファンドも関係している可能性は考慮しておきたい。半導体業界の再編は、今回のビッグニュースで再び混とんとしてきた。中国も含め、多くの企業が戦略見直しかもしれない。