日経新聞報道では、ルネサスが米インターシル(NASDAQ:ISIL)を買収する方向で最終交渉の模様。買収金額は最大3000億円規模で月内基本合意の模様。日経報道のIHS調べでは、車載用半導体では、ルネサスは、NXPセミコン(41億$)、インフィニオン(28億$)に次いで3位(26億$)、4位がSTマイクロ(20億$)、5位がTI(18億$)、6位がボッシュ(14億$)だが、10位以下のインターシルと統合すると2位に浮上(28億$)という。http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21H3S_R20C16A8MM8000/?n_cid=TPRN0001
インターシルの時価総額は21億$(先週末)、ルネサスはプレミアムを乗せ、既存株主から全株式買取り。買収資金は4000億円の手元資金(6月末)、銀行からの借り入れも検討するようだ。ルネサスは、統合後、撤退的なリストラを進め、収益性は見事に改善したが、他方、不採算事業撤退で売上は4割減少、かつてトップだった車載用シェアも、NXPがフリースケールを買収、インフィニオンも米社を買収、3位に転落し、シェアアップと成長戦略への転換が必要のようだ。
インターシルとは
インターシルは、同社HPやFORM-10Kによると、2015年の売上522mil、産機向け66%、家電IT34%、地域では中国47%、北米17%、売上高R&Dは23%前後、1000以上の特許、従業員1100人で445人がR&D関連、自社ファブも14%あるが、GFやTSMCなどファウンドリが86%。もともと防衛関連のハリスの半導体部門から99年に独立、遡れば1967年の老舗。B/Sは健全で無借金、自己資本比率84%(954mil$)である。また、日経報道では、営業利益率2割とされているが、直近の同社財務資料では、TAOS社との訴訟費用引当81mil$があり、赤字14mil、最終利益は7億$黒字。粗利率は55-60%だが、R&D23%、SGA19%はあり、2014年度Opm13%、2013年度2%。
バリエーションは安くはない、日本と10倍、むしろ自社株買いか
最近のEV/EBITADA倍率は39倍と割高である。仮にR&Dの125億円を含めて12倍とバリエーション上限。日本の同業は、ロームは前期ベースで4.2倍、ルネサス自身が5倍、新日本無線は4倍である。特に、ルネサスは、10倍のバリエーション格差をどう説明するのだろうか。日本の各社のP/LやB/Sが正しいなら、ルネサスは、自社株買いをするか、同業を買うべきだろう。そうでなければ、この差に相当するシナジーを説明すべきだろう。