2016年8月29日 鴻海シャープが有機EL(OLED)でJDIと協業意欲か~最後通告

 

日経新聞によると、シャープの戴社長は、有機ELで、JDIと共同開発したいとの考えを明らかにした。日本の技術者を結集して、「日の丸連合」で先行する韓国に対抗すべきだとの認識を示し、「中国、韓国勢と競争できるよう協業し、日の丸連合をつくろう。」、「なぜ官民ファンドのINCJは、国のお金でシャープと戦うのか。日本の人材が全部集まって開発、両社で経営しましょう」と述べという。

 

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29H36_Z20C16A8EAF000/?dg=1 

 

噂はあった

 

これは、以前から、シャープに決定後も水面下でいろいろあったようであり、INCJJDIの大株主でなければ、JDIを買った可能性もあっただろう。それゆえに、十分にありうる話であり、最近は、JDIは財務が厳しく、OLEDに慎重な発言が多く、この協業の可能性も出てきた。

 

これが、最近、シャープ、鴻海、両方で、OLED見直し発言がある背景でもあり、JDI再建INCJEXITの中では少ない選択肢だろう(あとは、ソニー等に出資要請)。また、INCJのメンツも保たれよう。

 

http://www.circle-cross.com/2016/08/26/2016826-lcd-oled市況とスマホ-tv動向/

 

INCJ主導と鴻海主導の違い

 

以前のINCJ主導のシャープ買収後でのJDI統合との違いは、そもそも、INCJ主導のシャープ救済や再編は、ハイテク・グローバルに弱いINCJが経営主導権、また、あくまで液晶であり、かつシャープの液晶を潰して、JDI救済が真の狙いであったと思われるが、整理すると、下記であろう。

 

  1. 今回は、経営主導は、グローバルにもハイテクに強い鴻海やイノラックスが経営。

  2. 今回は液晶でなく、OLEDが主眼。

  3. OLEDではシャアがなく、独禁法も利益相反もない。

  4. JDIが業績やB/Sが厳しく株価低迷の中、シャープは一息つき、黒字化も出てくる中で、家電等で鴻海とのシナジー効果も出てきている。

    ディスプレイでも工程水平分業を

     産業構造的には、半導体はファブレス・ファウンドリが中心となり、さらに生産も、前工程と後工程も分かれている(テストハウスやOSAT)が、ディスプレイは、まだ一気通貫モデルであり、そろそろ、工程水平分業もあり得よう。

    OLEDでは、LCDと共通のバックプレーンは既に技術が確立されているが、フロントはこれからであり、サムスンがトッキ蒸着機とDNPマスクの組合せで、質・量ともに圧倒しているが、まだ、紆余曲折はあろう。また、バックプレーンではJDILTPOも含めトップである。

    会社全体が統合するのは独禁法はじめ多くの問題はあり難しいが、フロントのOLEDでは、JOLEDも含め技術者も結集し協業し、いろいろな方式を試してもよい。

    バックプレーンは、キャパが多いJDIがファウンドリ的に、鴻海シャープなどに提供するならば全く問題はない。また、JDIが弱い、モジュール等後工程は、ここで圧倒的で、アップル向けにセットのEMSもある鴻海でもいいだろう。

    液晶に関しては、従来通り、シャープとJDIは、そのままだが、シャープは15型程度以上の大型、JDIはそれ以下で済み分ける手もある。

    JDIは、巨大なLTPSのキャパを、半々に分け、LCDでは社内で垂直統合、OLEDでは水平分業でファウンドリとして鴻海シャープ等、中国やLGも含め、供給すれば、稼働率確保となりメリットが大きく、白山を減損なく稼働できる。これは協業せずとも新しい柱として考えればいい話である。

     

    これが鴻海側統合の前の最後通告

     鴻海は、ディスプレイでの統合整理が早急に必要だが、決定が近いだろう。SDPに、イノラックス、シャープの液晶や場合によってはTV等も含め統合、上場する可能性があろう。その場合、その最終決定の 前に、「縁があった」JDIJOLEDに、メンツ立て・義理立て、あるいは「日本のために頑張って、考えて居るのだ」とうアリバイも含めを、政府やINCJや技術者に送っているのではないか。それゆえの鴻海なりシャープなり(かつての仲間や同僚もいる)への最後のメッセ―ジでなないか。

    鴻海グループでのディスプレイ統合を妄想する

     そこで、将来の鴻海グループでのディスプレイの統合だが、以下のようなイメージを独自に妄想している。まず、SDPを将来上場も視野に入れながら、グループのフロント、バックプレーン、TV部門も統合すべく再編する。新SDP傘下に、旧SDPの堺、旧シャープの天理三重亀山、TV部門、イノラックスもいれる。堺工場は、OLEDのフロント、TV向け大型パネル(LCDOLEDを問わない)R&Dである。この新SDPに、INCJ75%を持つが実態、200億円近い債務超過の可能性もあるJOLEDは売却。これは、INCJにとっても、JDIにとっても負担が減り助かるだろう。

    技術陣は、堺のOLEDフロント部門かR&D部門に統合。旧シャープ、旧イノラックス等に分散されていたRGB塗り分け蒸着OLEDを統合、旧JOLEDも半分統合。残りは将来のTVも視野にインクジェット・WOLEDも継続。スマホ向けのJDIではシナジーが無いが、TVも手掛け余裕がある鴻海グループでは生きる。

    JDIはオープンイノベーションで、堺部門と共同開発する。その代わりに、10%を出資、また白山のLTPS/LTPOのキャパの稼働を維持するため鴻海グループのOLEDフロント向けにファウンドリ事業を始め、かつ、将来、OLEDフロントのキャパを使える。これらは、どのようなオプション契約にするかは詰めないといけない。

    INCJJOLED売却や技術流出等のチャックも含め10%以下をSDPに出資する。逆に、鴻海がJDIに多少出資して資金をサポートも可能である。これにソニーが将来のOLED確保のために時限的垂直統合モデルを導入して更なる出資に参加してもいいだろう。アップルも同様だ。

    以上のスキームにより、JDIは、年間100億円近いJOLEDの負担を無くし、白山の減損リスク減らせ、将来、OLEDフロントを使えるオプションもある。アップルに加え、ファウンドリ事業で安定化する。JDIのコアはLTPSであり、フロントあるいはCFBLではない。このファウンドリを発展させ、タッチパネルや、XOディスプレイでも他社に供給できる。また、鴻海から資金の支援を受けられる。

    JOLEDは解散のリスクを無くし、元来は、TV向けであったインクジェットやWOLEDの可能性を将来につなげる。鴻海シャープも、遅れているOLEDフロントを強化、同時に、複数の技術の可能性を試せる。それほど強くないLTPSLTPOも調達もできる。また、のリスクや負担はかなり軽減されるはずである。

    なお参考までに2015年春頃に提案していた業界再編案を示す。

     

    ディスプレイ産業も水平分業、オープンイノベーションを

     半導体産業は、90年代後半、日本の地位沈下と共に、ファブレス・ファウンドリモデルが主流となり、後工程もOSATなどが中心となった。LCD産業も、そろそろ、一社で、バックプレーン(TFTアレイ)、ブロント(OLEDあるいはCFなど)、モジュール工程を工程分割する水平分業モデルを考える時であり、それがまだ垂直統合モデルのサムスンに勝てる一助にはなろう。JDIは、その優れたLTPSLTPO、タッチパネル技術、XO技術を、水平分業、オープンイノベーションで生かすべきだろう。

     なお、OLED産業は勃興期であり、垂直統合モデルも有望であり、臨機応変に使い分けたい。