2016年9月15日 東芝の価値試算とポートフォリオ

 

東芝の時価総額を、サムオブパーツ法で検証し、ポートフォリオを考えてみたい。また、同時に、中計でB/S目標をセグメント別にイメージ的でいいから開示を希望しているので、希望する側として、独自に、足元の数字を試算してみた。

 

B/Sのセグメント開示

 

 セグメント開示は、売上やOPの詳細の他、FCFDep、設備投資、B/S全体の数字は開示されている。そこで、幾つかの前提を置いて、内訳を考察する。まず、売手売掛や買入債務、在庫は、現状の回転期間を想定して1-2か月とし、FCFから試算。有形固定資産は主要工場の価値の開示から推定(半導体が多い)、年金負債は従業員の割合から(重電が多い)、自己資本は過去の累積利益の傾向(半導体が多い)と、あるべきセグメント別の自己資本比率(グローバル競争でリスクが高い半導体は高め)から試算した。

 

半導体部門の価値

 

 半導体に関しては市況次第だが、メモリで同業のマイクロンやSKハイニックス(ただし両社はDRAMがあり東芝はNANDのみ、あとセグメントでは非メモリとHDD)から、1~2兆円のレンジと仮定した。メモリ以外は500-1000億円位だろう。

 

子会社グループ会社

 

 また、連結子会社では東芝テックが大きく時価総額1000億円である。また、本社のRDC等の価値も大きく、本社の土地の含み益も数千億円はある。

 

時価総額の中身の考え方

 

(1)日本の半導体は、海外に比べ、昨今のM&Aで見られるバリエーションで通常のEV/EBITDAで半分程度と、大きくディスカウントされている例が多く、東芝も5000億円くらいで見るべきかもしれない。

 

(2)過去、同様のコングロマリットディスカウント、あるいはジャパンマネージメントディスカウントがあり、0.2~0.5位となる。

 

(3)現在、なお財務が厳しい上、特設注意銘柄であり上場廃止などのリスクが織り込まれている。

 

 以上の要因もあるが、今回の試算では、むしろ、原子力のリスク、あるいはフリーポートの1兆円の偶発債務は厳然たるリスクであり、また、長期に亘る事業ゆえに、割引率次第では減損リスク等も膨らむ可能性がある。

 

B/Sのブレイクダウン試算 

 

考察~ESSのリスク「シン・ゴジラ」とISSの低い収益改善が課題

全部門でのM&A失敗の総括が不十分

 

テックもIBMからのM&Aで大きく減損したし、半導体でも白色LED等のM&Aも失敗だった。2005年以降のM&Aは全分野において尽く失敗に終わっている。不正会計の問題が大きく報じられる中で、あまりマスコミでもセルサイドアナリストも触れていないが、東芝グループのM&Aの失敗もかなりの問題であり、その経営責任について、総括が必要であろう。それが不正会計の一因でもあり助長もしている。皮肉なことに、メディカルや白物家電は、高バリエーションで売却、売る側のM&Aは大成功だ。

 

まずは「普通の会社」を目指せ

 

この考察から、ESSの長期リスクを払拭し、ISSの収益改善、INSのシナジー発揮が必要である。しかし、リスクの高い原子力を国策会社として外し、セミコンを上場させると、時価総額的には極めて厳しい水準となることも判明した。また、原発は、リスクであると共に、国家に対しての「人質」的要素、すなわち、「原発事業を保有すれば潰されない」という難しい問題もある。ここに、東芝の苦悩も驕りも内包されている。ただ、半導体も、このまま、東芝の中において、資金調達が厳しい中では成長も難しい。また、今更、詮方ないが、もしメディカルがあれば、まだ1兆円は狙えただろうが残念だ。そこは、キヤノンとの協業も含め、オープンイノベーションで補い、エコシステムを構築すべきだろう。

 

いずれにせよ、早急な原発切り出し(そうなれば、潰せないことはない「普通の会社」にもなる)によるリスク払拭、セミコン社の上場準備と共に、ISSINSとテックを含めた「普通の会社」としての戦略策定、ビジネスモデル作りが必要であろう。