27日14時より堀場製作所(以下、HORIBA)が初のIRデーを、琵琶湖畔の「HORIBA BIWAKO E-HARBOR」(大津市苗鹿、最寄りは比叡山坂本駅)で開催した。内容は、びわこ工場見学会と自動計測事業説明会、および懇親会。14時半より、斉藤副社長の挨拶の後、工場長の西村氏による説明、14時50分~16時で見学(HORIBA BIWAKO E-HABOR,E-LAB)、16時半~17時半で自動車計測事業戦略室長の原田氏により事業説明、17時45分よりBAR&テラスで懇親会。参加はアナリスト投資家50名弱だが、大半が最後まで残って、工場や自動車計測事業について議論をしたり、琵琶湖の夜景を楽しんだ。
HORIBA BIWAKO E-HARBOR
HORIBA BIWAKO E-HARBORは、HORIBAの新しい拠点として、120億円をかけ、2014年4月に着工、2015年10月より移転、2016年5月にスタート。10F建てのE-HARBORに隣接して、自動車開発試験設備のE-LABがある。敷地面積6万㎡弱、建屋面積7000㎡弱、延床面積2.7万㎡、収容人員600名(現状460名、パート100含む)のようだ。
技術の遷宮
今回、将来のHORIBAの成長を担う若手が、先達からのアドバイスを受け、移管プロジェクトを「技術の遷宮」と呼び成功させたのは面白い。
建屋はSKY ATRIUMの工夫
建屋は、10Fだが、2Fから8Fまで、6Fのオフィス、2F毎3層の生産ラインがあり、上層から、小型、中型、大型の製品のラインとなっているが、大きな特徴は、コミュニケーションスペースを設けた大階段「SKY ATRIUM」を建物中央部に配置したことである。
このアトリウムの階段を使って移動することでコミュニケーションが生まれるだけでなく、運動、健康促進にもなり、琵琶湖を望められ、精神衛生にもいいだろう。ところどころに、ソファも配置されている。6Fのオフィスでは、動線を意識し、コミュニケーションがし易いスペース配置となり、開発、設計、生産の一体感が増し、即断即決が可能となる。
E-LAB
E-LABは、ユーザーも自動車開発試験ができる実験ラボであり、シャーシテストセル、エンジンテスト、マルチテストセルの3部屋(セル)を設置している。見学者や利用者は多いが、セットメーカーやTier1はもちろん、大手から中小まで、多様なメーカーが利用するようだ。特に、コスト面でもスペース面でも、これだけの施設を使えないユーザーや顧客は多いようだ。
E-LABの見学
今回の見学会では、シャーシテストセルとマルチテストセルは、外から、エンジンテストセルには、入室して、現場を確認できた。
モノ作り改革
社外に分散していた部材の組立工程などを1フロアに集約する方式を導入し、在庫や輸送による部材の停滞をなくし、迅速で柔軟な供給体制を構築することで、設計・生産を有機的に融合させ、かつ新生産方式を導入する事で、品質向上とともにリードタイム1/3、生産性2倍をめざすようだ。
7Fの生産ライン見学
実際に見学したのは、小物を中心とする7Fのガス分析計の生産ライン、大物の2Fのラインである。
7Fのガス分析計の工程は、クリーンルーム内であり、窓から覗いたが、テスト時間が非常に長いようだ。
実際は、品種やスペックにより、エージング時間や測定調整項目が異なるだろう。赤外線フィルタは、光学メーカーも生産しているが、計測器の性能を左右するキーコンポーネンツであり、多種多様で、量やコスト面から内製している。
2Fの生産ライン見学
2FはMEXA-ONEなど、かなり大物のライン。
自動車計測事業について
原田氏より、事業概要だけでなく、排ガス事業に追い風となっている2つの規制変化(RDE、WLTP)について市場規模、測定方法に歴史も含め、丁寧に説明された。業績については、2016年度の計画が売上650億円、OP40億円から、2020年度には、売上1000億円(うち、ECTが160億円、ETS30億円、MCT300億円、EMS500億円)、OP100億円を目指す。
排ガス規制
排ガス規制は、かつての直接測定(MEGA、Motor Exhaust Gas Analyzer MEXAで測定)から、排ガス濃度が同じでも、総排気量で排ガス中の量が異なることから、排ガスの質量を規制するCVS希釈(Constant Volume Sampler)となり、MEXA-ONEでは、希釈した排ガスを袋で採取しその濃度を測る、というように変化した。さらに、それが路上で重量規制が導入されRDE(Real Driving Emissions)が追加となった。RDE試験では、試験環境が変化するため、データの裏付けが難しいが、HORIBAでは、MIRA社買収により、89kmに及ぶ3つのルートを開発、電波状況なども含め、様々なテストが可能となる。更にEU委員会が、WLTP(World harmonized Light-Duty Test Procedure)を導入、17年9月から欧州、18年10月から日本というスケジュールである。
HORIBAはプラットフォーム戦略というよりは中立
こうした規制動向が、まさに、HORIBAの将来に重要であるが、世界では、EUが先導し、国によって、省庁やメーカーの強弱が異なるため、見極めが難しい。その流れを読んで、技術開発や、M&Aもなされていこう。