2016年10月20日 富士通研究所の見学会に参加、尖がった成果に感動

 

102013時半~17時で、川崎の㈱富士通研究所の説明・見学会に参加した。昨年は4月だったが、今年は遅く、待ち望んでいた。マスコミ合同で、多数参加。13時半過ぎ~1410分、4月に前任の佐相氏から受継いだ佐々木社長がR&D戦略についてプレゼン質疑、その後、研究成果の新規発表が2件、10分ずつ、その後、プレゼン会場を出て、14時半過ぎから16時半まで見学会という例年のパターンである。

 

 今回は、佐々木社長の、実用化よりも社会への影響度の大きさを重視、また、R&Dの流れの中で、R0を位置付けたこと、あるべき先端基礎研究テーマに社会科学を意識したこと、が注目された。

 

 また、注目新発表では、田村フォローの「量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャを開発」、岡本AI研センター長の「人やモノの繋がりを表すグラフデータから新たな知見を導くDeep Tensorを開発」だった。共に、例年に増して非常に尖がった成果であった。さらに、展示も16テーマだったが、ハード系もあり、あまり他社で見ない例も多く充実していた。ほぼ全て資料の用意もあり、説明員の対応も改善しており、意気込みを感じられた。ショールームの展示も良かった。

 

R&D戦略

 

 富士通のR&D戦略の特徴は従来から、研究開発の独立性を維持するため、別組織としていることである。同様の例として、ホンダがある。富士通グループ連結のR&D費は2027億円だが、セグメントに配賦されない300億円前後が安定的に富士通研の予算となっている。だ。海外にも、米、欧、中国に、計230人程度。海外を中心に、オープンイノベーションも盛ん。内外で、共創を重視、異分野異業種連携を重視。基本的には、リニアモデルをベースにしているが、事業展開に向けて、R0という先端基礎研究に10%振り向け、ここでコンセプトのプロトタイプを固める。その後で、先行研究に50%をかけ、ここでコンセプトを実証、そこで応用研究(10%)、事業化研究(30%)となり、富士通本体の開発となる。他の面から見ると、先行基礎が20%、横断的なものが50%、事業に直結する依頼研のようなものが30%である。研究企画や広報も充実し社会への啓蒙・教育活動も行っており志が高い。

 

量子コンピュータを実用性で超える新アーキテクチャを開発

 

 ムーアの限界、ノイマンの限界が近い将来、顕在化する中で、IBM等が開発する量子コンピュータや、ディープラーニング等の非ノイマンアーキテクチャが注目されるが、実用性で量子コンピュータを超える新アーキテクチャを、トロント大学と共同で開発した。特に画期的なのが、解を探索する途中で局所的な解にたどり着いて膠着状態になったときに検知して脱出する可能性を高める技術を導入したこと。ディープラーニングの限界や課題があきらかになった。

 

人やモノの繋がりを表すグラフデータから新たな知見を導くDeep Tensorを開発

 

 これも、ディープラーニングが苦手な分野を攻めている。既に、IT創薬では、京大と共同研究、また、金融での不正取引発見、セキュリティなどへの応用が期待されよう。

 

展示テーマ

 

 発表された以外に、CEATECで人気のあった「ロボピン」含め15の展示があり、基盤的なものから実用的なものまで様々だったが、昨年よりレベルアップした印象。また展示ではないが、ショールームにも興味深いテーマが多い。