企業を中長期から評価する際に、R&Dが鍵を握る。それは、①中長期の企業の成長を牽引する役割を担い将来のポートフォリオを決める重要な要素であり、②現在の企業の技術力が評価を左右し、③特に、電機メーカーでは売上高比率で5-10%もの費用が掛かっているためである。アナリストが企業を長期で評価するためには、この分析が不可欠である。
企業側がR&Dあるいは技術戦略IRを行うのも、こうした重要性からであるが、同時に、バブルの頃には「新技術」の発表で株価が暴騰することがあり、業績が悪い場合などに効果があったこともあろう。R&Dあるいは技術戦略IRの要素としては、①研究開発体制、②研究テーマの発表や紹介、③研究開発現場の見学、があるが、ほぼ、①と②であり、③はマル秘となっている場合が多い。
総合電機メーカーは、ここのところ、R&D説明会を継続的に行っている。不祥事で中止だった東芝も4年ぶりに開催された。R&Dというより敢えて技術戦略にしたようだ。あと、NECが年内12月頃にある筈である。この数年の実績を元に、各社のIRを比較した。今後の向上につながれば幸いである。
日立は、知る限りもう30年以上、継続していて敬服する。中研が多いが、日研、その他もある。三菱電機、富士通研も同様である。三菱電機は尼崎、鎌倉と隔年で現地ということもあった。NECもこのところは継続しており年々、改善している。日立などは、CEATECは不参加でも継続していた。東芝は以前から不定期だが、川崎の総研や京浜地区の重電系もあった。
展示、場所、懇親会などは、いろいろな事情もあり、本社であれば便利で参加もし易いが展示スペースに制限があり、懇親会も容易ではない。また、かつて懇親会をしたのに、参加者が少ない上、議論が盛り上がらないこともあった。この辺りは、隔年で、本社でプレゼン中心、現場で展示を多く懇親会つき、というように試行錯誤もありだろう。
プレゼンについては、組織体制、研究員の数や博士の数、テーマ別、時間軸別など予算、R&D戦略(ノンリニア化、オープンイノベーション化、グローバル、知財など)、研究者の処遇と評価、テーマ選出と評価など、MOTでの定番の話題は、資料に織り込んでほしい。最近、やや知財関連の開示は後退している。
研究トップかエース的な研究者のどちらかが話すかは別にして、最近の話題の技術動向についてのプレゼンは良いだろう。これ以外に、新規のテーマについて、展示だけでなく、会社側がこれぞと自信がある内容について発表されるのは有り難い。
いずれにせよ、R&Dの説明会は、総合電機のレベルは高い。これに対し、家電大手は、工場見学会はあっても、R&D説明会は、知る限り殆どない。ソニーやパナソニックは、AIやビッグデータ、ADAS、VRなど多彩なテーマが増え、本来、必要であろう。パナソニックのCEATECでの展示は本来、R&DのIRですべき内容だろう。
電子部品では、毎年ではないが、アルプスやサンケンなどが、「技術ショー」として催している。村田や日東電工は全社の説明会はあるが、経営よりであり、R&Dに絞ったわけではない。 Nidecは、一昨年の中央モーター基礎研究所など時々、新しい研究拠点のお披露目も含め、ほぼ毎年あるが、工場見学に近い面もある。
製造装置もTELが経営説明会あるいは工場見学会に関連して行っているが同様だ。ニコンも事業説明会の中で技術戦略にふれる。アルバックは以前、現地で技術説明会があり充実していたが近年はなく残念である。オムロンは、決算説明会と同時に色々なテーマで説明会をするが、前回は技術戦略であった。精密や化学では、エプソンやコニカミノルタが、事業説明会だが技術戦略説明会に近い内容のものを開催している。