ここのところOLED動向の中で、蒸着機とマスクについて記した。
http://www.circle-cross.com/2016/11/14/2016年11月14日-ブイ-テクノロジー-vテク-の上期決算説明会-縦型蒸着機を発表/
http://www.circle-cross.com/2016/11/11/2016年11月11日-シャープが有機el投資の見直し/
http://www.circle-cross.com/2016/11/11/2016年11月11日-アルバックの1q決算テレコン-oledの蒸着ではトッキ以上/
http://www.circle-cross.com/2016/08/14/2016年8月13日-アルバックの本決算説明会-2015年度-16年6月期/
http://www.circle-cross.com/2016/07/31/2016年7月30日-キヤノンの上期決算-7月26日実施-とトッキ/
http://www.circle-cross.com/2016/07/18/2016年7月16日-キヤノン傘下でのトッキとアネルバのシナジー効果/
http://www.circle-cross.com/2016/07/15/2016年7月15日-キヤノントッキの有機蒸着プラントはどこまで続くか-アルバックの急追か/
あらためて、現時点での蒸着機とマスクの技術の評価を試みる。更に、LCD産業離陸の頃を思い起こし、当時と比べ、OLEDが巨大産業となるための条件について論考したい。
蒸着機とマスクの組み合わせ、パネルメーカーの技術力・戦略とは密接に関係する。下図で、横軸は蒸着機及びマスクの実用化レベルである。縦軸は、装置のメンテフリー性・普及性とパネルメーカーの技術力である。装置のメンテフリー性が高ければ、パネルメーカーの技術力が低くても立上げは容易である。
装置が図で上にあれば、装置を買えば工場は稼働しやすい。下にあれば、パネルメーカーの技術力や、装置メーカーのサポート力に依存する。
技術の選択が、産業構造の中で付加価値の取り合いを左右する
トッキ+DNPのFMMは、量産ラインに導入されつつあるが、マスクの取り扱いは、張力の調整はサムスンに依存している。また、蒸着機の温度管理や突沸管理、コンタミ等のクリーニングやメンテはトッキの技術力に依存、蒸着源もサムスンが重要な鍵を握っている。
これに対し、Vテクの縦型蒸着機+FHMは、そのコンセプトは素晴らしいが、詳細な検証や試作ライン導入はこれからである。
ハイテク産業離陸の条件
これまで、LCDが巨大産業となり、PDPがそうならなかった背景は、参入企業の多さ、人、カネのリソース投入の多寡が大きいが、材料、装置、パネル、セットという産業に属する各レイヤーの付加価値の分配の在り方にあったと考えている。
OLEDは転換点にある。このまま、サムスンが技術を囲い込めば、プレイヤーは増えず、設備投資のインセンティブは小さく、オープンイノベーションが起きにくい。結果、LCDが巻き返しを図り、OLEDの普及を阻害する可能性があろう。
ここは、プレ競争段階ででもあり、広く、業界全体で、蒸着とマスクの技術や課題を解決する段階であり、オープンイノベーション促進、アライアンスで、かつての日本のLCDのように、利益より成長を優先、技術移転には大らかであるべきだろう。競争段階になり、利益を重視、囲い込みに移るのは、もう少し先であろう。ここは、アップルのリーダーシップを期待したい。