第57回の電池討論会では、セッションCの「リチウムイオン電池 大型・安全・評価」および、セッションGの「全固体電池」を聴講した。前者は、広いホールだが、ほぼ満員、後ろは立ち見。後者は狭い部屋だが、満員立ち見であった。大学関係も多かったが、やはり、企業の方が現実的で、注目度も高い。
NECと日立がEV向け頑張るが
NECの発表は、NECエナジーデバイス単独から、NEC本体、NEDOの支援の中でNECグループと産総研、田中化学、積水化学と共同のものまである。
日立の発表は、日立研と日立オートモーティブである。
電機業界では、パナソニックが元気だが発表は殆どなく主役は村田などデバイスメーカーへ
ソニーは、リチウムイオン電池のパイオニアであり、シャアも高かったが、村田に売却となった。現在は、大手電機では、東芝の他、パナソニックが、テスラ向けに存在感がある程度だ。パナソニックを除いては、主役は、むしろ、村田、TDKに移り、R&Dでは太陽誘電がある。
250Wh/Kg級大容量ラミネート型リチウムイオン二次電池の開発(NECエナジーデバイス)
NECエナジーデバイスの佐々木氏による発表。完成度が高いプレゼンの印象。
鉄含有Li2MnO3正極を用いた300Wh/kg級リチウムイオン電池の開発(NECエナジーデバイス他)
NEDO支援の「リチウムイオン電池応用・実用化先端技術開発事業」の成果で、NECと産総研、田中化学、積水化学の共同研究、発表は河野氏。
Fe及びNi置換Li2MnO3正極を用いた高容量リチウムイオン電池の充放電反応解析(NEC、他)
これも、NEDO支援の「リチウムイオン電池応用・実用化先端技術開発事業」の成果、NEC、産総研、田中化学、積水化学の共同研究。田中化学が正極、積水化学が負極と電解液、NECがセル化や全体まとめ。
EV向け200Wh/kg級角型リチウムイオン電池とパックの基盤技術開発-3(日立AMS、日立)
NEDOの「リチウムイオン電池応用・実用化先端技術開発事業」の一環で、日立が要素技術開発、日立AMS(オートモーティブシステムズ)が角型電池とパック化技術開発を担当。発表は、柳原氏。
EV向け300Wh/kg級高エネルギー密度型リチウムイオン電池の要素技術開発-3(日立、日立AMS)
同上の続き、発表は木村氏。先の発表は200Wh/kg、容量39Ahだったが、こちらは335Wh/kg、30Ah、1600W/kgを達成。
EV向け300Wh/kg級高エネルギー密度型リチウムイオン電池の要素技術開発-4(日立、日立AMS)
同上の続報。発表は關氏。SEI皮膜の悪影響で、厚い皮膜だと粗になり、新規界面がつきやすく、これが劣化原因となるようだ。
NASICON型構造を有するLiZr2(PO4)3系固体電解質の合成と電気化学特性(村田)
吉岡氏による発表。超満員で立ち見。ソニー買収の話題性もあるが、村田独自で長年研究している。
一括焼成して得られる全固体電池の充放電特性の改善(太陽誘電)
伊藤氏による発表。太陽誘電が全固体電池に取り組んでいることは、CEATECの展示で知ったが、なかなかレベルが高い印象。
リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを用いた全固体電池の作成(産総研、オハラ)
オハラは知っていたが、かなり以前から全固体電池に取組み、研究実績のあることは知らなかったが、8月24日の「酸化物系材料を用いた全固体リチウムイオン電池において積層シートの一括焼結製法を用いて-30℃という低温下でも駆動する電池の試作・実証に成功」で認識した。
今回の発表は、産総研との共同研究で発表は産総研の奥村氏。オハラは加藤氏。
超イオン導電体を用いた全固体電池の電気化学特性(トヨタ、東工大、高エネ研)
3月に発表、大きく話題になった研究チーム。超満員で立ち見。発表は、トヨタの加藤氏。超イオン伝導体「Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3」(リチウム・シリコン・リン・硫黄・塩素)と「Li9.6P3S12」の組合で全固体電池を試作、その全固体化が電気化学特性にどういう影響を及ぼすかを、同一の電極材料・構造のリチウムイオン電池と比較した興味深い研究。
トヨタで、この成果をどれ位、重視しているか不明だが、これを強化すれば、多いに日産に遅れているEVでの挽回も可能だろう。FCVはやめ、こちらにフォーカスできるかどうかが鍵だろう。
また、現状は、EVを想定した開発だろうが、スマホでも、大きな可能性を秘めている。村田や太陽誘電などデバイスメーカー等と協業、N7発火で問題となっているだけに、今後は、スマホに特化した開発も期待されよう。