2016年12月6日 日本のパネルメーカー生き残りの道〜地産地消時代にモノ輸出でなくエンジニアリングを

 

中国China Challenge Brexit、トランプ登場の共通点は、地産地消だ。90年代後半から、グローバルに水平分業が進み、最適地生産が進んだが、他方で、サプライチェーンの複雑化、各国通貨リスクも顕在化した。地産地消が進むと、各国で付加価値の取り込みと、雇用確保から、疑似垂直統合の動きも進む。ますます、日本からコストの安い新興国への、量産品の「モノ」の輸出は、セットだけでなく、デバイスでも難しくなるだろう。

 

中国スマホメーカーによる痛い布石

 

中国では、既にTVのセットは世界シャア1位、パネルも大型LCDで圧倒的なシェアとなりつつあるが、スマホでも、ファーウェイ、OppoVivoで、中国で50%以上、世界シェア20%以上いずれ1/3が近くなっており、今回のOLEDファンド創設や、パネルの内製化は当然だろう。また、こうした中国内でセットとパネルが一緒になれば、資金力、マーケ、量産力、さらに関税その他の政治力も含め、日本はおろか、中期ではサムスンも含め、海外のパネルメーカーが太刀打ちできるものではなかろう。

 

日本のパネルメーカーの生きる道

 

日本のパネルメーカーの生きる道は、スマホやTVでは、パネルのモノ売りではなく、装置も含めたエンジニアリング売りだろう。幸い、OLEDは装置にノウハウが移っておらず、技術も流動的な面もあり、パネルメーカーの存在価値がある。また、蒸着機は、「機」というより、「プラント」、制御システムであり、重電の世界(大みか、府中)である。

 

 

ファイナンスは、中国はじめグローバル、マーケティング、量産は、中国のパネルメーカーに任せ、その量産を支援することを主とすべきだ。すなわち、装置の購入の選定や立上げ、メンテサービス等である。

 

パネルメーカーでなくパネル技術エンジニアリング会社へ

 

 すなわち、JDIは、もはやパネルメーカーではなく、パネル技術エンジニアリング会社となるのである。インダストリー4.0では、技術者は不足している。ちょっと発想を変えれば、いくらでもやりようはあるだろう。

 

クリティカルポイントを抑えるためドメインには拘らない

 

現時点においては、アップル仕様のRGB蒸着OLEDの量産化の鍵は、トッキの蒸着+DNPマスクにおけるインバーテンションマスクの、インバー箔の貼り付けと張力制御であるが、このノウハウはサムスンが独占、ブラックボックス化している(ここは本来、メカトロ的モノづくりの分野であり、日本でなく、サムスンが強いのが興味深い)。ここは事業ドメイン的には、パネルというより装置あるいは材料のドメインである。しかし、ここが、クリティカルポイント、戦場でいえば「天王山」、「203高地」、であるが故に、ドメインでなくとも、ここを抑えていることが鍵であり、サムスンが垂直統合化している。サムスンに対抗するには、このポイントを奪取あるいは無意味にする必要がある。その有力な解は、縦型蒸着とFHM(非テンションマスク)の組合せであろう。