日経新聞報道によると、シャープは2017年からサムスンに対しTV向けパネルの供給を中止する模様だ。http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM14H4T_U6A211C1000000/?dg=1。価格交渉が折り合わなかったとか、サムスンを敵視する鴻海テリーゴー氏が背景だという説もある。
サムスンはシャープのSDPで生産する大型パネルに依存し、自社の液晶ラインはOLEDへ転換する中で、よりシャープの重要性は増し、SDPの中国10G級工場を建設の報道も、その需要に応えるためではないか、という見方も多かったため、最初は、やや驚いたし、その意図が不明で、サムスンも困るがシャープもマイナスではとの見方も多かった。
見事な一手でサムスンのTVは詰んでしまう
しかし、冷静に考えると、SDPが仮に2017年に10G級の新工場作るとしても、供給は2018年以降であり、現在、大型液晶パネルが不足する中で、シャープ自身がTV目標を2018年に1000万台とし、ディスプレイ部門にTVセット部門を入れ、社内調達を増やすことを考慮すると、とても社外に回す余裕がない。サムスンにとっては、パネル調達に苦戦し、TV事業が厳しくなる。
TVは垂直統合・パネル内製が正解だった
今回の件は、TVが垂直統合・キーデバイス内製か、水平分業・キーデバイス外販か、という、問いかけに、一つの回答を提供したようだ。経営重心®では、TV事業は下図のように、水平分業と垂直統合の狭間にある。スマホ、PCは完全に右上、水平分業でEMSの領域だが、TVは、スマホやPCに近いものの、周波数の規制や地域性もあり、白物家電に近い部分もある。一見、どんどん、右上に行くようで、サムスンやLGは垂直統合でEMSを使わず、パネルも内製していた。それゆえ、PCやスマホと違って、EMS化が進まず、また、EMSも鴻海も含め、採算性も厳しかった。
まさに、かつてのシャープと同様に、サムスンは、自らのパネル内製という強みを自ら、捨ててしまった。そこに、トランプ旋風もあり、世界で保護貿易地産地消が進む矢先に、鴻海が詰めの一手をうった。
TVは、垂直統合・パネル内製化の戦略に軍配があがりそうだが、あるいは、これは時代の趨勢で、水平分業モデルは終わり、真正か疑似から別にして、新しい垂直統合モデルの時代かもしれない。また、これが、1台にせいぜい1、2枚を使うパネルに固有で、価格弾性により員数が増えるメモリやコンデンサ等はこれまで同様、水平分業モデルなのかは、興味のあるところだ。
むしろ、垂直統合か水平分業か、デバイス内製か外販か、という型に拘るよりも、キーデバイスをモジュールやセットにした場合と、量産・外部ネットワーク性を狙った場合と、どちらが付加価値を取れるか、反グローバル、地産地消が進む中で再検討すべきだろう。