2016年12月に、太陽誘電の玉村工場を訪問、新事業・新技術、玉村工場の概要、IoTの取組みの紹介、4号棟の主力製品の積層コンデンサ(MLCC)のラインの見学、など、同社の理解を深めることができた。本来は、12月に報告すべきところが、こちらの事情で年末となり、新年に延ばしたことをお詫びしたい。
新事業・新技術
新事業・新技術では、こちらの関心にあわせて、MRLD(Memory Based Reconfigurable、Logic Device)、積層圧電アクチュエーター、全固体電池の説明。今回あらためて、既存分野だけでなく、広範にR&Dを手掛けており、かつ知財にも注力していることが確認できた。
MRLD〜詳細は不明ながらポストFPGAとして有力
MRLDは、本決算の説明会資料で名前だけ出ていた技術であり、FPGAと競合する技術である。非常にユニークだし、ポテンシャルは大きいかもしれない。
本業の電子部品とは異なるLSIのアーキテクチャーの分野で、太陽誘電で、長年、こうした研究をしてきた人間がいたことは驚きであり、同社の懐の深さを伺える。センサーメーカー等と提携すれば、SOCとの相性がいい分、AIチップ等、急速に広がる可能性もあろう。その中で、太陽誘電が、どうこれを事業化するか、次の一手に注目。
積層圧電アクチュエーター
MLCCの積層技術を応用したものであり、CEATECでも、ハプティックとして、出ていて注目を浴びていた。
全固体電池
全固体電池は、燃えないという安全性に加え、極性がなく、積層化が可能というメリットが大きい。電池討論会で発表された内容を踏まえ、実際の開発責任者によるプレゼン。MLCCの応用であり、エネルギーデバイスも手掛ける同社としては素直な展開。
大気中で安定な、NASICON型を選び、積層型により高容量密度を狙え、MLCCプロセスにマッチする超小型に絞り、EVなど大容量は取りあえず追わないようだ。
玉村工場と太陽誘電の生産体制
玉村工場は、現在、MLCCの主力かつマザー工場であるが、積層技術を応用、積層インダクタも製造している。人員は1000名、MLCCが90%、積層インダクタが10%。設立は、1977年、アキシャルリード形磁器コンデンサの製造を開始、1985年には、現在の主力のMLCC、1991年は積層インダクタの製造を開始。2007年には4号棟で生産開始。
コンデンサの生産体制は、玉村工場をマザー工場として、新潟、韓国、中国、マレーシアに量産工場。
誘電HPより
太陽誘電全体の生産体制
太陽誘電の製品はMLCCだけでなく、フェライト(積層、巻線、SMD)、通信デバイス(FBAR、SAW)、モジュール(無線、部品内蔵配線板)、エネルギーデバイス(キャパシタ)など多岐に広がっているが、概ね、それぞれに対応したマザー工場があり、内外に一つの工場が一つのカテゴリーの製品を生産している。
製品展開
大容量化の方向性は二つあり、①同容量小型化と、②同サイズ大容量化、であるが、どちらにも対応する製品を出している。
IoT活用
太陽誘電は、経営方針の中で、スマート商品を支える体制として、スマートプロダクト、スマートプロセス、ISO等のシステムがあり、ムダムラムリの無いモノ作りを目指しているが、その中で、IoTの導入が注目される。
見学
玉村工場4号棟(写真)を見学。大量生産ラインではなく、マザー工場なので、生産フローが入り組んでいる。
工場見学感想
一般的で他社と共通のところと、独自性が高そうなところがあり、特に後者に関しては、装置も含め、独特のノウハウが詰まっているように感じた。また、IoT活用も議論の中で進んでいることは確認できたが、どういうビッグデーターが有効かは、関心があるところであり、機差や個人差を超えて、どのように、スマートな管理をするのかが見ものだ。