東芝の再建はメモリ社の一部売却で持ち分法適用がベスト 及び最新有報の注目点

 

日経新聞が11日朝刊で、東芝の再建シナリオに関して、三つのパターンがあり、東芝メモリ社の上場と本体の上場廃止の可能性を報じている。また10日夜の日経系のWBSでも、同様の話をしており、通常では、とても3月に間に合わないが、明言はしなかったが、例えばJASDAQ上場などもあるという示唆であり、これを役員が認めていると報じた。上場タイミングと本体の上場廃止の有無が違うが、半導体メモリ社などから提案として出ている可能性は高いだろう。メモリ社としては、本体の上場の有無はもはや関係もなく、自社の利益を優先する立場からは理解はできる。

 

東芝メモリ上場案が浮上か

 

本来は、東芝メモリ社が上場を目指すのは自然であるし、以前から指摘もしてきたし、賛同する。ただし、NECエレクトロニクスの例でも分社化発表から14ヶ月、分社化から9ヶ月かかっており、とても、来年の3月に間に合うとは思えない。

 

2017116 トレセンティとNECエレクトロニクス2017 1 16 続きを読む

 

また、最悪の場合は、緊急避難的「ノアの箱舟」的な措置も必要だとも指摘してしている。すなわち、「本体の債務超過回避は諦めて、メモリ社だけでも、緊急避難的に生かすことも考え始めるべきかもしれない。そうなれば、東芝のDNA、名は残る。本体の債務超過を無視すれば、WDで問題なく、雇用も維持され、四日市JVも安泰だ。メモリ社だけを考えれば、WDなら現状維持で安心だ」である。

 

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しかし、この7月時点と比べ、WH関連の親会社補償上限も確定、PWCとの問題も落着、無事、有報も出せて決算も正常に戻った上、昨日のブログで書いた通り、親会社補償支払いも6年分割という状況は全く異なるだろう。他方、有報ではフリーポートの偶発債務で、2017年度の支払いが750億円とある。

 

日経の3つのシナリオ

 

日経の指摘する、シナリオは、①メモリ売却、②メモリ上場しかし本体は廃止、③第三者割当増資、である。

 

このうち、①は、これまで通りであり、一瞬、INCJ/DBJ/ベイン/SKハイニクスが有力だったが、期限内に締結できず、今は無理であり、WD/KKR等、鴻海は、候補だと社長も言及した。これは、これまで議論してきた通りである。

 

急浮上の②は、先述したように、最後の最後に、ノアの箱舟的に、メモリを出して、その後で、東芝の中から、追加で出していき、最終的には、メモリ+デバイス、ITという形で、入れ替わっていく、という形はあるかもしれない。その場合は、スピード上場の代わりに、けじめをつめて見せしめ、かつ、マグロ解体したいファンド等に、本体のエレベーターや、ソリューション、テック、などを提供しようというものだろう。

 

しかし、この②には、反対する。もし、本体が上場廃止になれば、これまでの苦労が無駄になるだけでなく、多くの優秀な従業員がバラバラになる。RDCも解体されるだろう。事業を継続し、イノベーションを興すには最低限のカタマリ・単位が必要だからだ。

 

もちろん、過去の経営陣に自らケジメもいうだろうし、現経営陣は、これまでの経営陣にそういう姿勢もとらないといけないだろう。

 

そして、③は、公募増資は無理だが、第三者割当増資は、ある程度なら関心を持つファンドや事業会社はいるだろうし、①に関連して、鴻海などは、東芝全体を買いたいかもしれない。

 

持ち分法適用がBEST

 

これらのシナリオは、昨日の決算以前なら、それでも迷うところだが、今回、親会社補償が6年分割払いになった以上、すぐさま、大きいキャッシュアウトはないのだから、メモリを少しずつ、税効果も考慮しながら、売るのが可能になるし、それが自己資本増強にはBESTだ。つまり、持ち分法適用なら時価評価だから、売却は50%強、最大でも60%でいい。

 

下記の表で、メモリ社の価値を2兆円、現在の自己資本6000億円と単純化し、説明会でも回答があった税率50%と前提を置くと、売却比率により、キャッシュインと自己資本増強が異なる。

 

 持ち分法適用は、50%ではケースバイケースだが、60%売れば、問題ない。この場合は、キャッシュインは4200億円だが、自己資本は9800億円プラスとなる。100%売る場合は、キャッシュインは、7000億円と多いが、自己資本増強は7000億円だけである(説明会での回答)。当たりまえだが、売却した場合は、税金の分だけ、自己資本増強が減るが、持ち分法適用により、包括利益を増やす場合ならば、税金の分だけ、プラスになる。

 

 これであれば、資金の少ないWDや、INCJ等も、対応可能だし、東芝が40%なり35%なり保有することは、国としてもWDとしても安心だろう。東芝3540%、INCJ1015%、WD3540%、KKR1015%なら問題ないだろう。これであれば、独禁法的にも、可能性が高いのではないか。

 

とりあえず、これで、連続債務超過は回避し、2018年度は、市況をみて、残りを売るもよし、IPOもよし、選択の幅が増えるだろう。

 

役員会

 

 東芝の直近に提出されたばかりの有報によると、取締役は社内3、社外6である。議長は前田氏、指名委員長は小林氏である。今回のようなメモリ社売却先の決定は、取締役会決議であり、数からは、社外役員で決まる。

 

有報の注目点

 

それにしても、監査人の記述も含め、これほど痛々しい有報は見たことがない。