各種報道や、広報IR発表によれば、東芝は、一転、WD陣営から、ベイン中心の日米韓陣営をメインに売却を検討しているようだ。ただ、日本語発表資料によると(後述するように、英文では全く内容が異なる)、引き続き、WD陣営や鴻海とも協議中のようだ。リーク(ベイン連合を支持する社内からのものらしい)や伝聞情報(メインバンクへの説明会参加者の印象)を元にした報道が多く、交渉なので当然だが、実態は不明だ。
関連する企業も、複数錯綜しているが、これは、INCJなど政府系は、鴻海以外であれば、どちらでもよく経産省等の判断の影響が大きいだろう。アップルなどユーザー系も、WDのライバルであるシーゲートを除けば、あくまで現在タイトなNANDの調達を有利にするためであり、実態は、中立だろう。
また、鍵となるWD訴訟、独禁法審査、日米視点での技術流出を比較すると、甲乙つけ難く、WDとの関係や契約が重要だけに、経産省がWD・KKR連合を支持したのは妥当なのだが、社内の一部に強烈な反対がある上、最終条件で折り合いが微妙らしい。これも、双方の主張も含め、諸説あり難しい。金額については、NANDも含め、業績好調である上、海外保有資産売却や、WH親会社補償の税効果などから、重要度は下がり、全株売却よりも、持ち分対象になる程度であれば、十分との見方もある。
それゆえ、政府系とユーザー系だけでも債務超過は可能であり、独禁法審査もなくなるため、際どいが、その可能性もあろう。この9月21日にも、最終決定との報道も多いが、なお、流動的だ。
SKハイニクス・ベイン連合選択の結末の行方
現在、報道その他で有利とされているSKハイニクス・ベイン連合を選択した場合どうなるだうか。第一に、WDは差し止め請求(最悪は四日市のJVを簿価で取得)など一層、混迷する。第二に、独禁法審査だが、SKハイニクスが入れば、もはや時間切れだろう。第三に、スキームが二転三転しているため、なお、合意までに時間がかかる。第四に、WD陣営売却を認めた経産省の面子もあり、INCJ等の出方が難しい。これらを総合すれば、とても、年度内に決着し、債務超過回避となるとは思えない。
そうなると、上場廃止の責任をとり、綱川陣営は退陣であり、メモリ売却も見直しとなる可能性もあろう。そして、実は、この結末への方向性は、東芝社内での、アンチWD派は、十分に分かっている筈であり、むしろ、それが目的ではないか。
これは、日本語の広報リリースと異なる英文リリースを見れば、それが伺える。日本語版ではない成毛氏のコメントがあり、WDに対する厳しい見方や、そもそも、メモリ外出しにも、慎重姿勢に読めるからだ。日本版と海外版で全く違い、日本版では、比較的あっさりだが、海外では踏み込んでいる。国内と海外で、どうして、こういう差が出ているのだろうか。
英語 http://www.toshiba.co.jp/about/ir/en/news/20170913_1.pdf
日本語 http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20170913_1.pdf
真の狙いは上場廃止?
もしかしたら、pwcとの関係悪化も、上場廃止が狙いだったかもしれない。外部からは、信じられない、この1年の混迷も、そういう仮説を置くと、綺麗に説明できる。
シナリオは
ただ、そこで、彼らが見落としているのは、下記だろう。
最後の綱川社長の奮起と英断をなお、期待したい。