イノベーションとイスラエル

 

ここ数か月で、何故か、イスラエルと御縁が増えている。理科大大学院でも、来年度は、アントレプレナーシップやイノベーションについて教えるので、日本のイノベーション体制をどうすれば、いいのか研究しているが、そこでは、イスラエルとのコラボレーションが鍵になるだろう。イノベーションの成功確率を上げるには、新事業創出や起業×新結合(他の新技術、他のアプリケーション、ビジネスモデルとの組合)なのだが、日本では起業化率が世界でほぼ最階位だ。

 

 そこで、日本だけでは難しいから、海外を利用しようとなると、思いつくのはシリコンバレーだが、10年、20年前ならともかく、今や、シリコンバレーが世界的にも存在感が落ちている日本企業を相手にするとは思えないし、既に研究者も土地も、高騰している。

 そこでイスラエルだ。起業活動指数では米と並んで世界トップであり、ベンチャーキャピタル投資(GDP)は米を抜いて、トップ、これらは日本と真逆である。また、研究開発の効率もそこそこである。縦軸の海外から受ける特許使用料をとり、横軸に研究投資に対する特許使用料収入を取ると、オランダに次ぐポジションだ。

 

 起業家活動は真逆であり、国民性も異なるが、共通点もある。全体のイノベーション・ランキングでは、3位と4位、一人当たりGDP26位と25位で並んでいる。イノベーション・ランキングでは、日本の新技術や新製品開発能力が評価されているのだろうが、その中身は全く異なるわけであり、補完的だ。つまり、リスクをとったり、起業したり、新事業にし、プロトタイプを作り、検証するというといったイノベーション・プロセスモデルは参考になるだろう。

 さらに補完的なのは、技術の中身であり、日本が得意なのは、デバイス、材料、加工生産といったモノ作り系だが、イスラエルは、ソフトやセキュリティ、フィンテックなどである。もっとも、水や農業、ヘルスケアでもユニークだ。

 日本との比較において、最も面白いのは、その教育やキャリアパスだろう。企業のイノベーション・モデルだけでなく、個人の生き方、キャリア設計、教育のあり方においても、イスラエルに学ぶことは多いだろう。