西室さんが10月14日に逝かれた。報道されたのは18日だが、まさに14日は、特性注意銘柄解除が12日になされた直後であり、それを見届けられたことになる。まだまだ、ご心配だろうが、メモリ社も一段落であり、少しは安心されたであろう。
特別注意銘柄解除と一定の評価ができる内部管理体制の改善報告書
特設注意銘柄解除については、NRI同期の畏友である大崎氏がコメントしているが、冷静で中立、バランスある的確なものだ。一部に選挙を意識した政治絡みの判断などとの見方もあるが、それは穿った見方だろう。この2年、綱川社長、平田CFO以下、IRも良く頑張ったと思う。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22351370X11C17A0DTA000/
また、10月20日には、38頁からなる内部管理体制の改善報告書が提出されているが、特に社外役員体制やリスク管理のあり方などについて踏み込んだ記述がなされている。何度も指摘し監督と執行の不分離についても指摘がいる。監査委員、指名委員、報酬委員それぞれに関して、社長からの独立性や、また、社外役員の専門性や多様性、員数なども言及があり、今後、他社の参考になる部分が多く、ガバナンスのあり方について影響を及ぼすだろう。問題発生当時の社外役員について、具体的に責任を言及すれば、画期的だったろう。
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20171020_1.pdf
業績修正は先に税金を織り込む、人事発表でも注目点
10月23日に、業績下方修正と、執行役員人事について、発表があった。業績下方修正は、メモリ社の売却が確定したことから、税額影響3400億円を織り込み、NPのみ2300→赤字1100億円となっている。ただ、実際に税金分がどのように発生し、キャッシュアウトするか、あるいは、WH向け親会社補償損金の税効果なども含めどう相殺されるかは未確定な部分もある。これで、B/Sのマイナスは、赤字4100→7500億円になるが、いずれにしても、メモリ社売却完了時には、債務超過が免れる。なお、ファンダメンタルズは好調であり、上期に、売上やOP中心に上方修正される可能性が高そうだ。http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20171023_1.pdf
人事については、牛尾代表執行役専務が退任、その他、専務3、上席常務3、常務2が退任、子会社トップになる模様。
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20171023_2.pdf
ここまでは、難問山積で、なかなか前に進まなかったが、この2週間は、急速に新しい形になりつつある。24日の臨時株主総会が無事終われば、さらに加速化しようが、WDとの交渉が本格化するだろう。そこで、メモリ社の人事や、B/S配分などに注目したい。
西室さんの功績
逝去された西室さんとは、90年代半ばからのお付き合いであり、面談やセミナー、社内報での対談など思い出が多い。私の知る限りでは、理想主義的だが、穏やかで周囲に気を遣う愛情溢れる方であり、一部に会ったことも無い輩が陰の法王のような言い方をしているが、郵政トップ時代の東芝経営について自身が関与しているかのような「失言」も、東芝に対する熱い思いが迸りでたものであり、本当の黒幕ならそういう失言はしなかっただろう。
早期の委員会設置会社移行のガバナンス体制導入も、形だけ整えるというのではなく、米に見倣い、理想を求めたものであったが、肝心の学者出身の社外役員の自覚が薄かったのではないか。
また、2000年当時のIR資料からは原発強化では全くなく、むしろ回避であり、ネットの時代に、デバイスやモバイル、ネット事業により成長を模索していたことは明らかだ。当時の記憶をたどると、おそらくWH買収にも慎重であった印象がある。
ただ、惜しむらくは、当時でいえば、現場の執行トップの西田・佐々木、両社長などの暴走を止める体制ではなかったことだろう。
東芝が最も輝いていた80年代後半から2005年までは、私のセルサイドアナリスト時代と重なるが、私がセルサイドを辞めた2005年が転換点であった。そのいい夢を見させていただいたトップの一人が西室さんであり、目が覚めた今、西室さんはない。この実は日本企業に普遍的な、社外役員のガバナンス体制やリスクの取り方の課題など、問題を、再検証し、後世に伝えるのは、西室時代をセルサイドアナリストとして生きた者の責務であり、それが、西室さんの供養にもなろう。